順列は「選んで並べる」。組合せは「選ぶだけ」。
この違いを原理から理解すれば、$_nC_r$ の公式は暗記不要になります。
前の節で学んだ順列は、「異なる $n$ 個のものから $r$ 個を選んで並べる」場合の数でした。 では、「選ぶだけ」で順序を考えない場合の数はどうなるでしょうか。
たとえば、$\{1, 2, 3, 4\}$ の4個の数字から3個を選ぶ場合を考えましょう。 順列なら $\{1, 2, 3\}$、$\{1, 3, 2\}$、$\{2, 1, 3\}$、$\{2, 3, 1\}$、$\{3, 1, 2\}$、$\{3, 2, 1\}$ はすべて異なるものとして数えます。 しかし、組合せでは「どの3個を選んだか」だけが問題なので、これらはすべて同じ1通りです。
一般に、異なる $n$ 個のものから $r$ 個を取り出して、順序を問題にしないで1組としたものを $n$ 個から $r$ 個取る組合せといい、その総数を $_nC_r$ で表します。 $C$ は combination(組合せ)の頭文字です。
組合せの公式は、次の考え方から導けます。
「$n$ 個から $r$ 個を選んで並べる」操作は、2つのステップに分解できます。
Step 1:$n$ 個から $r$ 個を選ぶ($_nC_r$ 通り)
Step 2:選んだ $r$ 個を並べる($r!$ 通り)
積の法則より $_nP_r = {}_nC_r \times r!$ が成り立ちます。 よって $_nC_r = \dfrac{{}_nP_r}{r!}$ です。
「$r!$ で割る」のは、同じ組合せから生まれる $r!$ 通りの順列をまとめて1通りに数えるためです。 この原理さえ理解していれば、公式を忘れても自分で導けます。
異なる $n$ 個のものから $r$ 個取る組合せの総数は
$$_nC_r = \frac{{}_nP_r}{r!} = \frac{n(n-1)(n-2)\cdots(n-r+1)}{r!} = \frac{n!}{r!(n-r)!}$$
特に、$_nC_0 = 1$ と定める。
$\{1, 2, 3, 4\}$ の4個から3個を取る組合せの総数を求めましょう。
$_4C_3 = \dfrac{4 \cdot 3 \cdot 2}{3!} = \dfrac{24}{6} = 4$
実際に列挙すると $\{1, 2, 3\}$、$\{1, 2, 4\}$、$\{1, 3, 4\}$、$\{2, 3, 4\}$ の4通りで、一致します。
順列の公式 $_nP_r = \dfrac{n!}{(n-r)!}$ を使って変形します。
$$_nC_r = \frac{{}_nP_r}{r!} = \frac{1}{r!} \cdot \frac{n!}{(n-r)!} = \frac{n!}{r!(n-r)!}$$
この式は、$n!$ を3つの部分に分解していると見ることもできます。 $n!$(全体の並べ方)から、「選んだ $r$ 個の並べ方 $r!$」と「選ばなかった $(n-r)$ 個の並べ方 $(n-r)!$」を割っているのです。
✕ 誤:$_7C_3 = \dfrac{7 \times 6}{3 \times 2 \times 1} = 7$
○ 正:$_7C_3 = \dfrac{7 \times 6 \times 5}{3 \times 2 \times 1} = 35$
$_nC_r$ の中央の式 $\dfrac{n(n-1)\cdots(n-r+1)}{r!}$ では、分子の因数の個数は $r$ 個です。 $_7C_3$ なら分子は $7, 6, 5$ の3個の積。分母の $3! = 3 \times 2 \times 1$ と個数が一致するはずです。 個数が一致しないときは、計算を間違えています。
✕ 誤:「0個選ぶ方法は0通り」→ $_nC_0 = 0$
○ 正:「何も選ばない」という方法が1通り存在する → $_nC_0 = 1$
公式に当てはめると $_nC_0 = \dfrac{n!}{0! \cdot n!} = 1$(ここで $0! = 1$)。 「何も選ばない」は「やらない」ではなく、「全部残すという1つの選択」と考えてください。
$_nC_r$ は組合せの総数を表す記号ですが、数学II以降で学ぶ二項定理 $(a + b)^n = \sum_{r=0}^{n} {}_nC_r \, a^{n-r} b^r$ の展開式の係数としても現れます。このため $_nC_r$ は二項係数とも呼ばれます。
大学数学では $\dbinom{n}{r}$(「$n$ choose $r$」と読む)という記法がよく使われます。 これは組合せが数学のあらゆる分野に登場する基本概念であることの表れです。
組合せには、計算を大幅に楽にしてくれる重要な性質があります。
$n$ 個のものから $r$ 個を選ぶことは、裏を返せば $(n-r)$ 個を「選ばない(残す)」ことです。
たとえば5人から3人を選ぶとき、「3人を選ぶ方法」と「2人を残す方法」は完全に同じです。 AさんとBさんを残すことは、CさんDさんEさんを選ぶことと対応します。
したがって $_nC_r = {}_nC_{n-r}$ が成り立ちます。
$$_nC_r = {}_nC_{n-r} \quad (0 \leq r \leq n)$$
方法1(式による証明):
$$_nC_{n-r} = \frac{n!}{(n-r)!\{n-(n-r)\}!} = \frac{n!}{(n-r)! \cdot r!} = {}_nC_r$$
方法2(意味による証明):
$n$ 個のものから $r$ 個を選ぶ各組合せに対して、選ばれなかった $(n-r)$ 個の組合せが1つだけ対応します。 この対応は1対1なので、$_nC_r = {}_nC_{n-r}$ です。
もう1つの重要な性質を紹介します。 $n$ 個のものから $r$ 個を選ぶ方法は、ある特定の1個に注目して、次の2つに分けられます。
(A) と (B) は同時に起こらないので、和の法則より
$$_nC_r = {}_{n-1}C_{r-1} + {}_{n-1}C_r$$が成り立ちます。 これはパスカルの関係式と呼ばれ、後に学ぶパスカルの三角形や二項定理の基礎になります。
✕ 非効率:$_{10}C_7 = \dfrac{10 \times 9 \times 8 \times 7 \times 6 \times 5 \times 4}{7!}$(分子7個、分母7個の計算)
○ 効率的:$_{10}C_7 = {}_{10}C_3 = \dfrac{10 \times 9 \times 8}{3!} = 120$(分子3個、分母3個の計算)
$r > \dfrac{n}{2}$ のときは、$_nC_{n-r}$ に変換するだけで計算量が大幅に減ります。 常に「$r$ と $n-r$ のどちらが小さいか」を確認してから計算を始めましょう。
$_nC_r$ の値を $n = 0, 1, 2, \ldots$ の順に並べると、パスカルの三角形ができます。
$n = 0$:$\quad 1$
$n = 1$:$\quad 1 \quad 1$
$n = 2$:$\quad 1 \quad 2 \quad 1$
$n = 3$:$\quad 1 \quad 3 \quad 3 \quad 1$
$n = 4$:$\quad 1 \quad 4 \quad 6 \quad 4 \quad 1$
各行の左右の端は1で、それ以外の数は「左上の数 + 右上の数」です。 これはまさにパスカルの関係式 $_nC_r = {}_{n-1}C_{r-1} + {}_{n-1}C_r$ を表しています。 この三角形の各行は、$(a+b)^n$ の展開式の係数でもあります(二項定理)。
場合の数の問題を解くとき、最初に判断すべきことがあります。 「この問題は順列か? 組合せか?」──この判断を間違えると、答えが根本的にずれます。
順列 $_nP_r$:選んだものの順序まで考える(並べ方が違えば別物)
組合せ $_nC_r$:選んだものの順序は考えない(どれとどれを選ぶかだけ)
キーワードで判断するなら:
・「並べる」「列にする」「委員長・副委員長を決める」→ 順列
・「選ぶ」「取り出す」「グループを作る」「委員を決める」→ 組合せ
迷ったら「AさんとBさんを入れ替えたら、結果が変わるか?」と自問してみてください。 変わるなら順列、変わらないなら組合せです。
| 問題文 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 5人から委員3人を選ぶ | 組合せ | 誰を選ぶかだけが問題。3人の間に区別なし |
| 5人から委員長・副委員長・書記を選ぶ | 順列 | 役職が異なるので、誰がどの役かで結果が変わる |
| 10個の玉から3個取り出す | 組合せ | 取り出す順序は問題にしない |
| 10人から3人選んで1列に並べる | 順列 | 「選んで並べる」は順列の定義そのもの |
$_nP_r = {}_nC_r \times r!$ という関係式は、「選んで並べる」操作を分解したものです。 この分解は、組合せを使って順列の問題を解くときに強力です。
たとえば「A組8人から2人、B組6人から2人、C組5人から1人を選んで、5人を1列に並べる」問題を考えましょう。
Step 1(選ぶ):$_8C_2 \times {}_6C_2 \times {}_5C_1$ 通り
Step 2(並べる):選んだ5人を $5!$ 通りに並べる
答え:$_8C_2 \times {}_6C_2 \times {}_5C_1 \times 5! = 28 \times 15 \times 5 \times 120 = 252000$ 通り
「10人から3人の委員を選ぶ方法」を求める問題で
✕ 誤:$_{10}P_3 = 10 \times 9 \times 8 = 720$ 通り
○ 正:$_{10}C_3 = \dfrac{10 \times 9 \times 8}{3!} = 120$ 通り
順列は「選んで並べた」結果なので、委員の「選び方」の $3! = 6$ 倍になっています。 同じ3人のメンバーでも、並べ方が違えば別の順列として数えてしまうのが間違いの原因です。
複数のグループから選んで何かする問題は、必ず次の手順で解きます。
1. 各グループから必要な人数を選ぶ(組合せ)
2. 必要なら、選んだ人を並べる(順列)
3. 積の法則で掛け合わせる
いきなり1つの式で求めようとせず、ステップに分解するのがコツです。
組合せの基本公式を理解したら、次は「条件が付いた選び方」の問題に取り組みましょう。 条件付きの組合せ問題には、いくつかの典型的なパターンがあります。
男子7人、女子5人の計12人から、男子3人・女子2人の計5人を選ぶ方法は何通りあるか。
男子7人から3人を選ぶ方法は $_7C_3$ 通り、女子5人から2人を選ぶ方法は $_5C_2$ 通りです。 それぞれの選び方は独立なので、積の法則より
$$_7C_3 \times {}_5C_2 = \frac{7 \times 6 \times 5}{3!} \times \frac{5 \times 4}{2!} = 35 \times 10 = 350 \text{(通り)}$$12人から5人を選ぶとき、特定の3人A, B, Cを必ず含む選び方は何通りか。
A, B, C は確定しているので、残り9人から2人を選べばよい。
$$_9C_2 = \frac{9 \times 8}{2!} = 36 \text{(通り)}$$「特定の人を含む」条件は、「その人を先に確保してから、残りを選ぶ」と考えるのがポイントです。 逆に「特定の人を含まない」条件なら、その人を除いた集団から選びます。
12人(男子7人・女子5人)から5人を選ぶとき、女子が少なくとも1人含まれる選び方は何通りか。
「少なくとも1人」を直接数えるのは大変です(女子1人、2人、3人、4人、5人の場合をすべて計算する必要がある)。 代わりに余事象を使います。
$$(\text{少なくとも女子1人}) = (\text{全体}) - (\text{女子0人、つまり全員男子})$$ $$_{12}C_5 - {}_7C_5 = 792 - 21 = 771 \text{(通り)}$$✕ 非効率で間違いやすい:女子1人、女子2人、女子3人、……と場合分けして足し合わせる
○ 正:(全体)−(条件を満たさない場合)で求める
「少なくとも」という語が出たら、まず余事象を疑いましょう。 余事象のほうが場合の数が少なく、計算が格段に楽になることが多いです。
円周上に異なる $n$ 個の点があるとき、2点を結ぶ線分の本数は $_nC_2$ 本です。 これは「$n$ 個の点から2個を選ぶ組合せ」そのものです。
同様に、同一直線上にない $n$ 個の点から3点を選ぶと三角形が1つ決まるので、 三角形の個数は $_nC_3$ 個です。 ただし、3点以上が同一直線上にある場合は、その分を引く必要があります。
$n$ 個の要素を持つ集合の部分集合の個数は $2^n$ 個です。 これは二項定理で $a = b = 1$ とすると $2^n = \sum_{r=0}^{n} {}_nC_r = {}_nC_0 + {}_nC_1 + {}_nC_2 + \cdots + {}_nC_n$ から導けます。
つまり、$_nC_r$ は「$n$ 個の要素から $r$ 個を選んで作る部分集合の数」と読むこともできます。 $r = 0, 1, 2, \ldots, n$ のすべてを合計すれば、部分集合の総数 $2^n$ になるわけです。 組合せは集合論、確率論、情報科学など多くの分野の基礎になっています。
ここまで、組合せの定義・公式・性質・使い方を学んできました。 最後に全体像を整理し、他の単元とのつながりを確認しましょう。
| パターン | 問題の特徴 | 解法のポイント |
|---|---|---|
| A:基本計算 | $_nC_r$ の値を求める | $r$ と $n-r$ の小さい方を使って計算 |
| B:グループ選択 | 複数グループから指定人数を選ぶ | 各グループの $_nC_r$ を積の法則で掛ける |
| C:特定条件 | 特定の要素を含む / 含まない | 条件の要素を先に確保 / 除外してから残りを選ぶ |
| D:少なくとも | 「少なくとも〜」の条件 | 余事象で計算 |
| E:図形の数 | 線分・三角形の個数 | $_nC_2$(線分)、$_nC_3$(三角形)から同一直線上の分を引く |
| F:選んで並べる | 組合せ → 順列の2段階 | まず選ぶ($C$)→ 並べる($P$ or $!$)→ 積の法則 |
Q1. $_8C_3$ の値を求めてください。
Q2. $_nC_r$ の公式で「$r!$ で割る」のはなぜですか?
Q3. $_{12}C_{10}$ をもっとも簡単に計算する方法を説明し、値を求めてください。
Q4. 10人から4人の委員を選ぶ方法と、10人から委員長・副委員長・書記・会計を選ぶ方法では、どちらが多いですか? 理由も答えてください。
Q5. 男子6人・女子4人の10人から4人を選ぶとき、女子が少なくとも1人含まれる選び方は何通りですか?
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
男子8人、女子5人の計13人から6人を選ぶとき、次の場合の数を求めよ。
(1) 6人の選び方の総数
(2) 男子3人、女子3人となる選び方
(3) 特定の男子2人A, Bを含む選び方
(1) $1716$ 通り (2) $560$ 通り (3) $330$ 通り
(1) 13人から6人を選ぶ組合せ。
${}_{13}C_6 = {}_{13}C_7 = \dfrac{13 \times 12 \times 11 \times 10 \times 9 \times 8}{6!} = 1716$ 通り
※ ${}_{13}C_6$ と ${}_{13}C_7$ は同じ値。ここでは $r = 6$ で直接計算しても構いません。
(2) 男子8人から3人、女子5人から3人を選ぶ。
$_8C_3 \times {}_5C_3 = 56 \times 10 = 560$ 通り
(3) A, Bの2人は確定済み。残り $13 - 2 = 11$ 人から4人を選ぶ。
${}_{11}C_4 = \dfrac{11 \times 10 \times 9 \times 8}{4!} = \dfrac{7920}{24} = 330$ 通り
円周上に異なる8個の点がある。これらの点を結んでできる線分は全部で何本あるか。また、これらの点から3点を選んでできる三角形は全部で何個あるか。
線分:$28$ 本、三角形:$56$ 個
方針:2点を結ぶ線分の本数は、8個の点から2個を選ぶ組合せ。3点を選ぶと三角形が1つ決まる。
線分:$_8C_2 = \dfrac{8 \times 7}{2!} = 28$ 本
三角形:$_8C_3 = \dfrac{8 \times 7 \times 6}{3!} = 56$ 個
※ 円周上の点なので、3点以上が同一直線上にあることはない。したがって引く分はありません。
Aチーム6人、Bチーム7人の計13人から6人を選ぶとき、Aチームから少なくとも2人を選ぶ方法は何通りあるか。
$1583$ 通り
方針:「少なくとも2人」を直接数えるのは大変(2人, 3人, 4人, 5人, 6人の5パターン)。余事象「Aチームが0人または1人」を引く。
全体:${}_{13}C_6 = 1716$ 通り
Aチーム0人(Bチーム6人):$_7C_6 = 7$ 通り
Aチーム1人(Bチーム5人):$_6C_1 \times {}_7C_5 = 6 \times 21 = 126$ 通り
※ $_7C_5 = {}_7C_2 = 21$
よって、少なくともAチーム2人:$1716 - (7 + 126) = 1716 - 133 = 1583$ 通り
※ 検算:直接計算すると A2人B4人($15 \times 35=525$) + A3人B3人($20 \times 35=700$) + A4人B2人($15 \times 21=315$) + A5人B1人($6 \times 7=42$) + A6人B0人($1 \times 1=1$) $= 525+700+315+42+1 = 1583$ 通り。一致します。
A組に8人、B組に6人、C組に5人の生徒がいる。
(1) A組から2人、B組から2人、C組から1人を選んで、この5人を1列に並べる方法は何通りあるか。
(2) (1)のうち、同じ組の人が隣り合うものは何通りあるか。
(1) $252000$ 通り (2) $50400$ 通り
方針:「選ぶ → 並べる」の2ステップで考える。
(1)
Step 1(選ぶ):$_8C_2 \times {}_6C_2 \times {}_5C_1 = 28 \times 15 \times 5 = 2100$ 通り
Step 2(並べる):選んだ5人を1列に並べる → $5! = 120$ 通り
積の法則より $2100 \times 120 = 252000$ 通り
(2)
Step 1(選ぶ):(1) と同じで $2100$ 通り
Step 2(並べる):A組2人、B組2人をそれぞれ1つのかたまりと見なす。 かたまり2つとC組1人の計3つを並べる → $3! = 6$ 通り
A組の2人の内部の並び → $2! = 2$ 通り
B組の2人の内部の並び → $2! = 2$ 通り
よって並べ方は $3! \times 2! \times 2! = 6 \times 2 \times 2 = 24$ 通り
したがって $2100 \times 24 = 50400$ 通り
※ 補足:「同じ組の人が隣り合う」とは、A組の2人が隣り合い、かつB組の2人も隣り合うという条件です。