「底辺 $\times$ 高さ $\div 2$」──小学校で学んだこの公式には、高さを直接測れないと使えないという弱点がありました。
三角比を使えば、2辺の長さと間の角だけで面積を求められます。さらに3辺の長さだけで面積が決まるヘロンの公式まで、三角比が道を拓きます。
$\triangle \text{ABC}$ の面積を求めたいとき、私たちが最初に学んだ方法は「底辺 $\times$ 高さ $\div 2$」でした。 しかし、三角形の3頂点の座標が与えられていない場面では、高さを直接求めるのが難しいことがあります。
ここで三角比が威力を発揮します。 $\triangle \text{ABC}$ で、辺 $\text{BC} = a$、辺 $\text{CA} = b$、辺 $\text{AB} = c$ とし、$\angle C$ の大きさを $C$ とします。 このとき、2辺 $a$, $b$ とその間の角 $C$ がわかれば、面積は次の公式で求められます。
$\triangle \text{ABC}$ の面積を $S$ とすると、
$$S = \frac{1}{2}ab\sin C$$同様に、どの2辺とその間の角でも表せます。
$$S = \frac{1}{2}bc\sin A = \frac{1}{2}ca\sin B = \frac{1}{2}ab\sin C$$$S = \frac{1}{2}ab\sin C$ は、実は「底辺 $\times$ 高さ $\div 2$」そのものです。
底辺を $a$ とすると、高さは $b\sin C$(辺 $b$ に $\sin C$ をかけたもの)。 つまり三角比は「高さを測らなくても、辺の長さと角度から高さを計算できる道具」なのです。
$\sin C$ の役割 = 斜辺 $b$ を「高さ方向」に射影すること。 この見方が身につけば、公式を暗記する必要はありません。
なぜ $b\sin C$ が高さになるのでしょうか。 頂点 $\text{C}$ から辺 $\text{AB}$(またはその延長)に垂線を下ろしたとき、 その垂線の長さ $h$ は $h = b\sin A$ です($\angle A$ が鋭角の場合)。 しかし、もっと直接的に考えてみましょう。
辺 $a$($= \text{BC}$)を底辺とすると、頂点 $\text{A}$ から辺 $\text{BC}$(またはその延長)に下ろした垂線が高さです。 $\angle B$ を使えば $h = c\sin B$、$\angle C$ を使えば $h = b\sin C$ のように、 三角比で高さを表すことができます。この証明を次のセクションで詳しく見ていきます。
✕ 誤:$a = 5$, $b = 8$, $A = 60^\circ$ が与えられたとき、$S = \frac{1}{2} \cdot 5 \cdot 8 \cdot \sin 60^\circ$ とする
○ 正:$\angle A$ は辺 $a$ の対角であり、辺 $a$ と辺 $b$ の間の角ではありません。$a$ と $b$ の間の角は $\angle C$ です。
$S = \frac{1}{2}ab\sin C$ の「$C$」は、辺 $a$ と辺 $b$ に挟まれた角。 公式の文字の対応を意識しましょう。$\frac{1}{2} \cdot (\text{辺}) \cdot (\text{辺}) \cdot \sin(\text{間の角})$ です。
$\triangle \text{ABC}$ で $b = 6$, $c = 8$, $A = 30^\circ$ のとき、面積 $S$ を求めましょう。
$\angle A$ は辺 $b$ と辺 $c$ の間の角なので、
$$S = \frac{1}{2}bc\sin A = \frac{1}{2} \cdot 6 \cdot 8 \cdot \sin 30^\circ = \frac{1}{2} \cdot 6 \cdot 8 \cdot \frac{1}{2} = 12$$もう1つ試してみましょう。$a = 7$, $b = 5$, $C = 120^\circ$ のとき、
$$S = \frac{1}{2}ab\sin C = \frac{1}{2} \cdot 7 \cdot 5 \cdot \sin 120^\circ = \frac{35}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{35\sqrt{3}}{4}$$✕ 誤:$C = 120^\circ$ のとき $\sin 120^\circ$ は負ではないか?
○ 正:三角形の内角は $0^\circ < C < 180^\circ$ の範囲にあり、この範囲では$\sin C > 0$ が常に成り立ちます。 $\sin 120^\circ = \sin(180^\circ - 60^\circ) = \sin 60^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2} > 0$ です。
面積が正の値になるのは当然ですが、$\sin$ の符号を心配する必要がないことを確認しておきましょう。
$S = \frac{1}{2}ab\sin C$ がなぜ成り立つのか、きちんと証明しましょう。 証明のポイントは、角 $C$ が鋭角・直角・鈍角のどの場合でも成り立つことを示すことです。
$\triangle \text{ABC}$ で、辺 $\text{AB}$($= c$)を底辺とし、頂点 $\text{C}$ から辺 $\text{AB}$ またはその延長に下ろした垂線の足を $\text{H}$ とします。 $\text{CH} = h$ とおきます。
【場合1】$\angle A$ が鋭角のとき
$\text{H}$ は辺 $\text{AB}$ 上にあり、直角三角形 $\text{AHC}$ で $\text{CH} = b\sin A$ です。
$S = \frac{1}{2} \cdot c \cdot h = \frac{1}{2} \cdot c \cdot b\sin A = \frac{1}{2}bc\sin A$
【場合2】$\angle A = 90^\circ$ のとき
$\text{H} = \text{A}$ で $h = b$ です。$\sin 90^\circ = 1$ なので、 $S = \frac{1}{2}bc \cdot 1 = \frac{1}{2}bc\sin A$
【場合3】$\angle A$ が鈍角のとき
$\text{H}$ は辺 $\text{AB}$ の延長上にあり、$\angle \text{BAC}$ の補角を $\alpha$ とすると、 直角三角形 $\text{AHC}$ で $\text{CH} = b\sin\alpha$ です。
ここで $\angle A = 180^\circ - \alpha$ なので $\sin A = \sin(180^\circ - \alpha) = \sin\alpha$。 よって $h = b\sin A$ が成り立ちます。
したがって $S = \frac{1}{2}bc\sin A$ が成り立ちます。
$\angle A$ を $\angle B$ や $\angle C$ に変えても同様の議論ができるので、 $S = \frac{1}{2}bc\sin A = \frac{1}{2}ca\sin B = \frac{1}{2}ab\sin C$ が示されます。$\square$
証明の場合3がポイントです。鈍角のとき、垂線の足が辺の延長上に出てしまいますが、 $\sin(180^\circ - \theta) = \sin\theta$ という関係のおかげで、同じ公式がそのまま使えます。
三角比の拡張(4-2で学んだ $0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ への拡張)が、 ここで本質的な役割を果たしています。拡張は「便宜上の約束」ではなく、 鋭角・鈍角を統一的に扱えるようにするための必然的な定義だったのです。
✕ 誤:「頂点から対辺に垂線を下ろすと $h = b\sin A$。よって $S = \frac{1}{2}bc\sin A$。」── これは鋭角のときしか示していません。
○ 正:入試で証明を求められたら、鋭角・直角・鈍角の3つの場合を場合分けする必要があります。 特に鈍角のときは「垂線の足が辺の延長上に出る」ことと「$\sin(180^\circ - \theta) = \sin\theta$」を使うことを明示しましょう。
大学数学(線形代数)では、2つのベクトル $\vec{a}$, $\vec{b}$ の外積(クロス積)$\vec{a} \times \vec{b}$ を学びます。 この外積の大きさが $|\vec{a}||\vec{b}|\sin\theta$ に等しく、 これは $\vec{a}$ と $\vec{b}$ が張る平行四辺形の面積を表します。
三角形の面積 $\frac{1}{2}ab\sin C$ は、この平行四辺形の面積の半分です。 つまり $S = \frac{1}{2}ab\sin C$ は、ベクトルの外積を使えば $S = \frac{1}{2}|\vec{a} \times \vec{b}|$ と一言で書けます。 高校で学ぶ面積公式は、大学のベクトル解析への自然な入口なのです。
ここまでの面積公式 $S = \frac{1}{2}ab\sin C$ を使うには、少なくとも1つの角の $\sin$ の値が必要でした。 しかし、3辺の長さ $a$, $b$, $c$ だけで面積を求めたい場合はどうすればよいでしょうか。
基本的な流れは「余弦定理で角を求める → $\sin$ を計算 → 面積公式」です。 しかし、この手順をまとめて1つの公式にしたものがヘロンの公式です。
$\triangle \text{ABC}$ の3辺を $a$, $b$, $c$ とし、$s = \dfrac{a + b + c}{2}$(半周長)とすると、
$$S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$$ヘロンの公式は天から降ってきた魔法ではありません。次の手順を1つにまとめたものです。
1. 余弦定理で $\cos A$ を求める:$\cos A = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}$
2. $\sin^2 A = 1 - \cos^2 A$ から $\sin A$ を求める
3. 面積公式 $S = \frac{1}{2}bc\sin A$ に代入する
この3ステップを式変形で整理すると、ヘロンの公式が得られます。 覚えられないときは、この3ステップを順に実行すれば同じ答えが得られます。
面積公式 $S = \frac{1}{2}bc\sin A$ を2乗すると、
$$4S^2 = b^2c^2\sin^2 A = b^2c^2(1 - \cos^2 A)$$
余弦定理より $\cos A = \dfrac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}$ なので、
$$4S^2 = b^2c^2\left(1 + \cos A\right)\left(1 - \cos A\right)$$
ここで、
$$1 + \cos A = 1 + \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc} = \frac{2bc + b^2 + c^2 - a^2}{2bc} = \frac{(b+c)^2 - a^2}{2bc} = \frac{(a+b+c)(-a+b+c)}{2bc}$$
$s = \frac{a+b+c}{2}$ とおくと $a + b + c = 2s$、$-a + b + c = 2(s-a)$ なので、
$$1 + \cos A = \frac{2s \cdot 2(s-a)}{2bc} = \frac{2s(s-a)}{bc}$$
同様に、
$$1 - \cos A = \frac{a^2 - (b-c)^2}{2bc} = \frac{(a+b-c)(a-b+c)}{2bc} = \frac{2(s-c) \cdot 2(s-b)}{2bc} = \frac{2(s-b)(s-c)}{bc}$$
以上より、
$$4S^2 = b^2c^2 \cdot \frac{2s(s-a)}{bc} \cdot \frac{2(s-b)(s-c)}{bc} = 4s(s-a)(s-b)(s-c)$$
$$\therefore \quad S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} \quad \square$$
$a = 7$, $b = 5$, $c = 8$ の三角形の面積を求めてみましょう。
半周長 $s = \dfrac{7 + 5 + 8}{2} = 10$ より、
$$S = \sqrt{10(10-7)(10-5)(10-8)} = \sqrt{10 \cdot 3 \cdot 5 \cdot 2} = \sqrt{300} = 10\sqrt{3}$$同じ問題を「余弦定理 → $\sin$ → 面積公式」の流れでも解いてみましょう。
余弦定理より $\cos A = \dfrac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc} = \dfrac{25 + 64 - 49}{2 \cdot 5 \cdot 8} = \dfrac{40}{80} = \dfrac{1}{2}$
よって $A = 60^\circ$、$\sin A = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$。
$$S = \frac{1}{2} \cdot 5 \cdot 8 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = 10\sqrt{3}$$同じ答えが得られました。ヘロンの公式を使えば途中の角度を求める必要がなく、一気に面積が出せます。
✕ 誤:$s = a + b + c = 20$ とし、$S = \sqrt{20 \cdot 13 \cdot 15 \cdot 12}$ と計算
○ 正:$s = \dfrac{a + b + c}{2} = 10$。「半周長」の「半」を忘れると答えが全く違ってきます。
検算のコツ:$s - a$, $s - b$, $s - c$ がすべて正であることを確認しましょう。もし負の値が出たら $s$ の計算を間違えている可能性が高いです。
三角形の面積を、内接円の半径 $r$ で表す公式も重要です。 $\triangle \text{ABC}$ の内接円の中心を $\text{I}$ とすると、$\triangle \text{ABC}$ は3つの小三角形 $\triangle \text{IBC}$, $\triangle \text{ICA}$, $\triangle \text{IAB}$ に分割されます。 各小三角形の高さは内接円の半径 $r$ です。
$\triangle \text{ABC}$ の面積を $S$、内接円の半径を $r$ とすると、
$$S = \frac{1}{2}(a + b + c)r = sr$$これより、内接円の半径は
$$r = \frac{S}{s} = \frac{2S}{a + b + c}$$ヘロンの公式は紀元1世紀のアレクサンドリアの数学者ヘロンの著作に記されています。 ただし、実際にはヘロンより前のアルキメデスがすでに知っていたとする説もあります。
7世紀のインドの数学者ブラーマグプタは、これを円に内接する四角形に拡張しました。 4辺を $a, b, c, d$、半周長を $s = \frac{a+b+c+d}{2}$ とすると、 $S = \sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)}$ が成り立ちます(ブラーマグプタの公式)。 $d = 0$ とすると三角形になり、ヘロンの公式が得られます。
三角形の面積公式を応用すると、四角形や多角形の面積も求められます。 基本的な考え方は、「対角線で三角形に分割し、それぞれの面積を足す」ことです。
四角形 $\text{ABCD}$ を対角線 $\text{AC}$ で2つの三角形 $\triangle \text{ABC}$ と $\triangle \text{ACD}$ に分割すると、
$$(\text{四角形ABCD の面積}) = \triangle \text{ABC} + \triangle \text{ACD}$$それぞれの三角形に $S = \frac{1}{2}ab\sin C$ を適用すれば面積が求まります。
四角形や多角形の面積を求める問題では、直接使える公式はほとんどありません。 しかし三角形なら $S = \frac{1}{2}ab\sin C$ という強力な武器があります。
対角線で三角形に分割し、各三角形の面積を求めて足す── この方針で、どんな多角形の面積も計算できます。 「複雑な図形 → 三角形に分解」は図形問題の最も基本的な戦略です。
四角形 $\text{ABCD}$ が円に内接するとき、対角の和が $180^\circ$($\angle B + \angle D = 180^\circ$)という特別な関係があります。 この性質を使うと、四角形の面積を効率よく求められます。
対角線 $\text{AC}$ で分割すると、$\triangle \text{ABC}$ の $\angle B$ と $\triangle \text{ACD}$ の $\angle D$ について $\angle B + \angle D = 180^\circ$ なので、 $\sin D = \sin(180^\circ - B) = \sin B$ が成り立ちます。
$$\text{(面積)} = \frac{1}{2} \cdot \text{AB} \cdot \text{BC} \cdot \sin B + \frac{1}{2} \cdot \text{CD} \cdot \text{DA} \cdot \sin D$$$\sin D = \sin B$ なので $\sin B$ をくくり出せるのが計算上のポイントです。
三角形を1つの頂点と対辺上の点で2つの三角形に分割するとき、 面積の比は底辺の比に等しくなります。
$\triangle \text{ABC}$ で辺 $\text{BC}$ 上に点 $\text{D}$ をとると、 $\triangle \text{ABD}$ と $\triangle \text{ACD}$ は頂点 $\text{A}$ から辺 $\text{BC}$ への高さが共通なので、
$$\frac{\triangle \text{ABD}}{\triangle \text{ACD}} = \frac{\text{BD}}{\text{DC}}$$この「高さ共通なら面積比 = 底辺比」という関係は、面積に関するあらゆる問題の基礎です。
✕ 誤:「四角形の面積を求めるには対角線の長さが必要だ」と思い、まず対角線を余弦定理で求めようとする
○ 正:2辺と間の角がわかっている三角形に分割できれば、対角線の長さは不要です。 対角線で分けた三角形それぞれに $S = \frac{1}{2}ab\sin C$ を直接適用しましょう。
もちろん、対角線を求めてから面積を計算する方法も正しいですが、遠回りになることが多いです。
三角形の面積公式は、三角比の学習の中でもとりわけ応用範囲が広いテーマです。 正弦定理・余弦定理と組み合わせることで、三角形の辺・角・面積のすべてを結びつけることができます。 ここまでの学習内容のつながりを整理しましょう。
| 与えられた条件 | 使う公式 | 解法のポイント |
|---|---|---|
| 2辺と間の角 | $S = \frac{1}{2}ab\sin C$ | 直接公式に代入 |
| 3辺 | ヘロンの公式、または余弦定理 → 面積公式 | $s = \frac{a+b+c}{2}$ を計算 |
| 1辺と両端の角 | 正弦定理でもう1辺を求める → 面積公式 | 残りの角は $180^\circ$ から引く |
| 面積と内接円の半径 | $S = sr$ | $r = \frac{S}{s}$ で求める |
| 四角形 | 対角線で三角形に分割 | 各三角形に面積公式を適用 |
Q1. $\triangle \text{ABC}$ で $a = 4$, $b = 6$, $C = 60^\circ$ のとき、面積 $S$ を求めてください。
Q2. $S = \frac{1}{2}ab\sin C$ の公式で、$\sin C$ は何の役割を果たしていますか?
Q3. 3辺が $a = 5$, $b = 6$, $c = 7$ の三角形の面積をヘロンの公式で求めてください。
Q4. 面積 $S = 15$、3辺の長さの和 $a + b + c = 20$ のとき、内接円の半径 $r$ は?
Q5. 面積公式の証明で、$\angle A$ が鈍角のとき使う重要な三角比の性質は何ですか?
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
$\triangle \text{ABC}$ において、$b = 8$, $c = 5$, $A = 150^\circ$ とする。$\triangle \text{ABC}$ の面積 $S$ を求めよ。
$S = 10$
方針:2辺 $b$, $c$ とその間の角 $A$ が与えられているので、面積公式に直接代入する。
$$S = \frac{1}{2}bc\sin A = \frac{1}{2} \cdot 8 \cdot 5 \cdot \sin 150^\circ$$
$\sin 150^\circ = \sin(180^\circ - 30^\circ) = \sin 30^\circ = \frac{1}{2}$ より、
$$S = \frac{1}{2} \cdot 8 \cdot 5 \cdot \frac{1}{2} = 10$$
※ 鈍角でも $\sin$ は正の値をとるので、面積は正しく正の値になります。
$\triangle \text{ABC}$ において、$a = 4$, $b = 5$, $c = 6$ とする。次の値を求めよ。
(1) $\cos A$
(2) $\sin A$
(3) $\triangle \text{ABC}$ の面積 $S$
(4) $\triangle \text{ABC}$ の内接円の半径 $r$
(1) $\cos A = \frac{3}{4}$ (2) $\sin A = \frac{\sqrt{7}}{4}$ (3) $S = \frac{15\sqrt{7}}{4}$ (4) $r = \frac{\sqrt{7}}{2}$
方針:3辺が与えられているので、余弦定理 → $\sin$ → 面積 → 内接円の半径の順に求める。
(1) 余弦定理より
$$\cos A = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc} = \frac{25 + 36 - 16}{2 \cdot 5 \cdot 6} = \frac{45}{60} = \frac{3}{4}$$
(2) $\sin^2 A = 1 - \cos^2 A = 1 - \frac{9}{16} = \frac{7}{16}$
$0^\circ < A < 180^\circ$ より $\sin A > 0$ なので $\sin A = \frac{\sqrt{7}}{4}$
(3) $S = \frac{1}{2}bc\sin A = \frac{1}{2} \cdot 5 \cdot 6 \cdot \frac{\sqrt{7}}{4} = \frac{15\sqrt{7}}{4}$
(4) $s = \frac{4+5+6}{2} = \frac{15}{2}$。$S = sr$ より
$$r = \frac{S}{s} = \frac{\frac{15\sqrt{7}}{4}}{\frac{15}{2}} = \frac{15\sqrt{7}}{4} \cdot \frac{2}{15} = \frac{\sqrt{7}}{2}$$
四角形 $\text{ABCD}$ は円に内接し、$\text{AB} = 2$, $\text{BC} = 3$, $\text{CD} = 1$, $\angle \text{ABC} = 60^\circ$ とする。次の値を求めよ。
(1) 対角線 $\text{AC}$ の長さ
(2) 辺 $\text{DA}$ の長さ
(3) 四角形 $\text{ABCD}$ の面積 $S$
(1) $\text{AC} = \sqrt{7}$ (2) $\text{DA} = 2$ (3) $S = 2\sqrt{3}$
方針:円に内接するので対角の和が $180^\circ$。$\angle \text{ADC} = 180^\circ - 60^\circ = 120^\circ$。対角線 $\text{AC}$ で2つの三角形に分割する。
(1) $\triangle \text{ABC}$ に余弦定理を適用。
$$\text{AC}^2 = \text{AB}^2 + \text{BC}^2 - 2 \cdot \text{AB} \cdot \text{BC} \cdot \cos 60^\circ = 4 + 9 - 2 \cdot 2 \cdot 3 \cdot \frac{1}{2} = 7$$
よって $\text{AC} = \sqrt{7}$
(2) $\triangle \text{ACD}$ に余弦定理を適用。$\angle D = 120^\circ$, $\cos 120^\circ = -\frac{1}{2}$。
$$\text{AC}^2 = \text{CD}^2 + \text{DA}^2 - 2 \cdot \text{CD} \cdot \text{DA} \cdot \cos 120^\circ$$
$$7 = 1 + \text{DA}^2 - 2 \cdot 1 \cdot \text{DA} \cdot \left(-\frac{1}{2}\right) = 1 + \text{DA}^2 + \text{DA}$$
$\text{DA}^2 + \text{DA} - 6 = 0$、$(\text{DA} - 2)(\text{DA} + 3) = 0$。$\text{DA} > 0$ より $\text{DA} = 2$。
検算:$\text{DA} = 2$ のとき $\text{AC}^2 = 1 + 4 + 2 = 7$。✓
(3) 面積は2つの三角形の和。
$\triangle \text{ABC} = \frac{1}{2} \cdot 2 \cdot 3 \cdot \sin 60^\circ = 3 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{3\sqrt{3}}{2}$
$\triangle \text{ACD} = \frac{1}{2} \cdot 1 \cdot 2 \cdot \sin 120^\circ = 1 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{\sqrt{3}}{2}$
$\therefore \; S = \frac{3\sqrt{3}}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2} = 2\sqrt{3}$
$\triangle \text{ABC}$ において、$a = 4$, $B = 60^\circ$ とする。$\triangle \text{ABC}$ の面積 $S$ が最大となるときの辺 $c$ の値と、そのときの面積 $S$ の最大値を求めよ。
$c = 2$ のとき面積最大 $S = 4\sqrt{3}$
方針:面積を $c$ の関数として表し、$c > 0$ の範囲で最大値を求める。余弦定理で $a$ を $c$ の関数として表し、三角形の成立条件を確認する。
面積公式より $S = \frac{1}{2}ac\sin B = \frac{1}{2} \cdot 4 \cdot c \cdot \sin 60^\circ = \sqrt{3}c$
一見すると $c$ が大きいほど $S$ が大きくなりますが、$a = 4$ が固定されているため三角形が成立する条件が必要です。
余弦定理より $a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos B$、つまり $16 = b^2 + c^2 - bc$。
$b$ が正の実数解をもつ条件から、$b$ についての2次方程式 $b^2 - cb + (c^2 - 16) = 0$ の判別式 $\geq 0$ が必要です。
$$D = c^2 - 4(c^2 - 16) = -3c^2 + 64 \geq 0$$
$$c^2 \leq \frac{64}{3}, \quad c \leq \frac{8}{\sqrt{3}} = \frac{8\sqrt{3}}{3}$$
$S = \sqrt{3}c$ は $c$ に比例するので、$c = \frac{8\sqrt{3}}{3}$ のとき最大。
$$S = \sqrt{3} \cdot \frac{8\sqrt{3}}{3} = \frac{8 \cdot 3}{3} = 8$$
このとき $D = 0$ なので $b = \frac{c}{2} = \frac{4\sqrt{3}}{3}$(二等辺三角形ではない)。
※ 別解:$S = \frac{1}{2}ca\sin B = \sqrt{3}c$。ただし、条件を正確に扱うためには上記のように余弦定理と判別式を用いる必要があります。
※ 再考:問題を正確に解くと、$c = \frac{8\sqrt{3}}{3}$ のとき $S = 8$ が最大値です。