第4章 図形と計量

余弦定理
─ ピタゴラスの定理を「任意の三角形」に拡張する

直角三角形では $a^2 = b^2 + c^2$ という美しい関係が成り立ちます。
では、直角でない三角形ではどうなるのか? その答えが余弦定理です。
この定理を使えば、三角形のあらゆる辺と角の関係を解き明かすことができます。

1余弦定理とは ─ ピタゴラスの定理の一般化

中学で学んだピタゴラスの定理(三平方の定理)を思い出してください。 直角三角形 ABC で $\angle C = 90^\circ$ のとき、

$$c^2 = a^2 + b^2$$

が成り立ちます。ここで $c$ は斜辺(直角の対辺)の長さです。

では、$\angle C$ が直角でなかったらどうなるでしょうか。 $\angle C = 60^\circ$ の場合や $\angle C = 120^\circ$ の場合、$c^2 = a^2 + b^2$ は成り立ちません。 直感的に考えると、$\angle C$ が鋭角なら $c$ は短くなり、鈍角なら $c$ は長くなります。 つまり、$c^2$ は $a^2 + b^2$ からどれだけ「ずれる」かが、角度 $C$ によって決まるのです。

その「ずれ」を正確に表したのが余弦定理です。

📐 余弦定理

$\triangle \text{ABC}$ において、頂点 A, B, C の対辺の長さをそれぞれ $a, b, c$ とすると

$$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc \cos A$$ $$b^2 = c^2 + a^2 - 2ca \cos B$$ $$c^2 = a^2 + b^2 - 2ab \cos C$$
※ 3つの式はすべて同じ構造です。「求めたい辺の2乗 = 他の2辺の2乗の和 − 2 × 他の2辺の積 × 挟角のcos」。
💡 ここが本質:余弦定理はピタゴラスの定理の一般化

余弦定理の式 $c^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C$ で $\angle C = 90^\circ$ とおくと、$\cos 90^\circ = 0$ なので

$$c^2 = a^2 + b^2 - 2ab \cdot 0 = a^2 + b^2$$

これはまさにピタゴラスの定理そのものです。 つまり、余弦定理はピタゴラスの定理を「直角」という制限を外して一般化したものです。

$-2ab\cos C$ の項は「直角からのずれ」を補正する役割を果たしています。 $\angle C$ が鋭角なら $\cos C > 0$ なので $c^2 < a^2 + b^2$(第3辺が短くなる)、 $\angle C$ が鈍角なら $\cos C < 0$ なので $c^2 > a^2 + b^2$(第3辺が長くなる)。

余弦定理の「補正項」を直感的に理解する

$c^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C$ の右辺にある $-2ab\cos C$ の意味をもう少し考えてみましょう。

  • $\angle C = 90^\circ$ のとき:$\cos C = 0$ → 補正なし。ピタゴラスの定理そのまま
  • $\angle C$ が鋭角のとき:$\cos C > 0$ → $-2ab\cos C < 0$ → $c^2$ は $a^2 + b^2$ より小さくなる
  • $\angle C$ が鈍角のとき:$\cos C < 0$ → $-2ab\cos C > 0$ → $c^2$ は $a^2 + b^2$ より大きくなる

角が鋭角のとき2辺が「内側に寄る」ので対辺は短くなり、 鈍角のとき2辺が「外側に開く」ので対辺は長くなる。 $\cos C$ の正負がこの直感をそのまま数式に反映しています。

⚠️ 落とし穴:余弦定理の「どの辺がどの角に対応するか」を混同する

✕ 誤:$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos C$(辺 $a$ の2乗に $\cos C$ を使う)

○ 正:$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$(辺 $a$ の2乗には $\cos A$ を使う)

ルール:左辺の辺と、$\cos$ の中の角は「対辺と対角」の関係です。 辺 $a$ の対角は $A$、辺 $b$ の対角は $B$、辺 $c$ の対角は $C$。 「求めたい辺の対角の $\cos$」を使うと覚えましょう。

🔬 深掘り:余弦定理とベクトルの内積

数学Bで学ぶベクトルの内積を使うと、余弦定理は驚くほどシンプルに導けます。 $\vec{a} = \overrightarrow{\text{CA}}$、$\vec{b} = \overrightarrow{\text{CB}}$ とおくと、 $\overrightarrow{\text{AB}} = \vec{b} - \vec{a}$ であり

$$c^2 = |\vec{b} - \vec{a}|^2 = |\vec{a}|^2 - 2\vec{a}\cdot\vec{b} + |\vec{b}|^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C$$

ここで $\vec{a}\cdot\vec{b} = ab\cos C$(内積の定義)を使いました。 余弦定理は「ベクトルの大きさの2乗を展開したもの」にすぎないのです。 大学の線形代数では、この考え方がさらに一般化されて「内積空間」の理論になります。

2余弦定理の証明 ─ 座標を使った導出

余弦定理は「なぜ成り立つのか」を理解することが大切です。 ここでは、座標を使ったもっとも自然な証明を紹介します。

💡 ここが本質:座標を使えば「距離の公式」と「三角比の定義」だけで導ける

余弦定理の証明の本質は、三角形を座標平面に配置し、 2点間の距離の公式三角比の定義を代入することです。

これは「図形の性質を座標で調べる」という解析幾何学の基本手法であり、 高校数学で繰り返し使う重要な考え方です。

▷ 余弦定理の証明($a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$ を示す)

Step 1:座標の設定

$\triangle \text{ABC}$ の頂点 A を原点に置き、辺 AB を $x$ 軸の正の方向に沿わせます。

$$\text{A} = (0, 0), \quad \text{B} = (c, 0)$$

Step 2:頂点 C の座標を三角比で表す

$\text{AC} = b$、$\angle \text{A}$ の大きさが $A$ なので、三角比の定義から

$$\text{C} = (b\cos A, \; b\sin A)$$

Step 3:2点間の距離の公式を適用

辺 BC の長さが $a$ なので、$\text{BC}^2 = a^2$ です。2点間の距離の公式より

$$a^2 = (b\cos A - c)^2 + (b\sin A - 0)^2$$

Step 4:展開して整理

$$a^2 = b^2\cos^2 A - 2bc\cos A + c^2 + b^2\sin^2 A$$

$$= b^2(\cos^2 A + \sin^2 A) + c^2 - 2bc\cos A$$

ここで $\cos^2 A + \sin^2 A = 1$ を使うと

$$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$$

これで余弦定理が証明されました。$\square$

この証明のポイントは、$\angle A$ が鋭角でも鈍角でもまったく同じ式変形で成り立つことです。 座標を使った証明では、$\cos A$ や $\sin A$ が自動的に正しい符号をもつため、 場合分けが不要になります。

▷ 別証:垂線を下ろす方法(鋭角の場合)

頂点 C から辺 AB(またはその延長)に垂線 CH を下ろします。

$\angle A$ が鋭角の場合:H は辺 AB 上にあり、 $\text{AH} = b\cos A$、$\text{CH} = b\sin A$ です。

$\text{BH} = c - b\cos A$ なので、直角三角形 BHC でピタゴラスの定理を使うと

$$a^2 = \text{BH}^2 + \text{CH}^2 = (c - b\cos A)^2 + (b\sin A)^2$$

これを展開すると、座標を使った証明と同じ式になります。

※ $\angle A$ が鈍角の場合は H が辺 AB の延長上に来ますが、 $\cos A < 0$ を正しく代入すれば同じ結論が得られます。

⚠️ 落とし穴:$\sin^2 A + \cos^2 A = 1$ を使い忘れる

証明の途中で $b^2\cos^2 A + b^2\sin^2 A$ が出てきたとき、 これを $b^2(\cos^2 A + \sin^2 A) = b^2 \cdot 1 = b^2$ とまとめるステップが不可欠です。

✕ 誤:$b^2\cos^2 A + b^2\sin^2 A$ をそのまま残して式が複雑になる

○ 正:$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ を使って $b^2$ にまとめる

この恒等式は三角比のあらゆる計算で登場する「最重要公式」です。 三角比の式が複雑になったら、まず $\sin^2 + \cos^2 = 1$ で簡単にできないか考える習慣をつけましょう。

🔬 深掘り:余弦定理は入試で「証明させる」ことがある

余弦定理の証明は、京都教育大学(2007年)、福島大学(2009年)、上智大学(2012年)、 愛媛大学(2015年)、筑波大学(2019年推薦)など、複数の大学入試で出題実績があります。

座標を設定して距離の公式を使う方法と、垂線を下ろしてピタゴラスの定理を使う方法の 両方を書けるようにしておくと安心です。どちらの場合も、キーとなるのは $\sin^2 A + \cos^2 A = 1$ を使って整理するステップです。

3余弦定理の活用① ─ 2辺と挟角から第3辺

余弦定理のもっとも基本的な使い方は、2辺とその間の角(挟角)がわかっているとき、 残りの第3辺の長さを求めることです。

これは正弦定理ではできないことです。正弦定理 $\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{b}{\sin B} = \dfrac{c}{\sin C}$ は 「辺と対角のペア」を結びつける定理なので、2辺と挟角の情報からは直接使えません。 2辺と挟角が与えられたら、まず余弦定理で第3辺を求めるのが定石です。

💡 ここが本質:「2辺と挟角」→ 余弦定理、「辺と対角のペア」→ 正弦定理

正弦定理と余弦定理の使い分けは、与えられた情報の形で決まります。

余弦定理を使う場面:

・2辺とその間の角がわかっている → 第3辺を求める

・3辺がわかっている → 角度を求める(Section 4)

正弦定理を使う場面:

・1辺とその対角、さらにもう1つの角がわかっている → 残りの辺を求める

・外接円の半径を求める

具体例で確認する

$\triangle \text{ABC}$ で $b = 5$、$c = 3\sqrt{3}$、$A = 30^\circ$ のとき、辺 $a$ の長さを求めてみましょう。

▷ 解法のステップ

Step 1:余弦定理に代入。

$$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A = 5^2 + (3\sqrt{3})^2 - 2 \cdot 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \cos 30^\circ$$

Step 2:各項を計算。

$5^2 = 25$、$(3\sqrt{3})^2 = 27$、$\cos 30^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ なので

$$a^2 = 25 + 27 - 2 \cdot 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = 52 - 30\sqrt{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}$$

$$= 52 - 45 = 7$$

Step 3:$a > 0$ より $a = \sqrt{7}$。

⚠️ 落とし穴:$\cos$ の値の計算ミス(特に $\sqrt{3}$ が絡むとき)

上の計算で $2 \cdot 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ を計算する際、$\sqrt{3} \cdot \sqrt{3} = 3$ を見落とすことがあります。

✕ 誤:$2 \cdot 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2} = 15\sqrt{3}$($\sqrt{3}$ をまとめ忘れ)

○ 正:$2 \cdot 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2} = 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \sqrt{3} = 5 \cdot 3 \cdot 3 = 45$

先に $\sqrt{3} \times \sqrt{3} = 3$ を処理してから残りをかけると計算ミスを防げます。

挟角が鈍角の場合

$\triangle \text{ABC}$ で $b = 3$、$c = \sqrt{2}$、$A = 135^\circ$ のとき、辺 $a$ を求めましょう。

$\cos 135^\circ = -\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ なので

$$a^2 = 9 + 2 - 2 \cdot 3 \cdot \sqrt{2} \cdot \left(-\frac{\sqrt{2}}{2}\right) = 11 + 6 = 17$$

よって $a = \sqrt{17}$。 $\cos$ が負なので $-2bc\cos A$ が正の値になり、$a^2$ が $b^2 + c^2$ より大きくなることを確認してください。 鈍角のとき対辺が長くなるのは、Section 1 で述べた直感と一致しています。

📐 余弦定理の活用パターン①:2辺と挟角 → 第3辺

与えられた情報:$b$, $c$, $\angle A$

求める量:辺 $a$

使う公式:$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$

手順:代入 → 計算 → $a > 0$ より正の平方根をとる

※ 挟角でない角が与えられている場合(例:$b$, $c$, $\angle B$)は、余弦定理で直接求めることは難しいため、正弦定理の利用を検討します。

4余弦定理の活用② ─ 3辺から角度を求める

余弦定理のもう1つの重要な使い方は、3辺の長さがすべてわかっているとき、 角度を求めることです。

余弦定理 $a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$ を $\cos A$ について解くと、

$$\cos A = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}$$

この式の右辺は $a$, $b$, $c$ だけで表されているので、3辺の長さがわかれば $\cos A$ が求まり、 そこから角度 $A$ が決まります。

💡 ここが本質:3辺が決まれば三角形は一意に決まる(合同条件)

中学で学んだ三角形の合同条件の1つに「3組の辺がそれぞれ等しい」があります。 これは「3辺の長さが決まれば、三角形の形は1通りに定まる」ということです。

形が1通りなら、当然すべての角度も1通りに決まるはずです。 余弦定理はそれを具体的に計算する手段を与えてくれるのです。 合同条件が「三角形は決まる」ことを保証し、余弦定理が「実際に求める方法」を提供する。 この2つはセットで理解してください。

具体例で確認する

$\triangle \text{ABC}$ で $a = 7$、$b = 5$、$c = 3$ のとき、$\angle A$ を求めてみましょう。

▷ 解法のステップ

Step 1:余弦定理を $\cos A$ について解いた式に代入。

$$\cos A = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc} = \frac{25 + 9 - 49}{2 \cdot 5 \cdot 3} = \frac{-15}{30} = -\frac{1}{2}$$

Step 2:$\cos A = -\dfrac{1}{2}$ を満たす $A$ を求める。

$0^\circ < A < 180^\circ$ の範囲で $\cos A = -\dfrac{1}{2}$ となるのは $A = 120^\circ$。

結論:$\angle A = 120^\circ$

$\cos A < 0$ が出たので、$\angle A$ は鈍角です。 これは $a = 7$ が最大辺であることと整合します。 三角形で最も長い辺の対角が最大角であり、それが鈍角であることを $\cos$ の符号が教えてくれます。

三角形の形状を判定する

3辺から $\cos A$ を求めることで、三角形が鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のどれかを判定できます。

$\cos A$ の符号$\angle A$ の種類$b^2 + c^2$ と $a^2$ の大小
$\cos A > 0$鋭角$b^2 + c^2 > a^2$
$\cos A = 0$直角$b^2 + c^2 = a^2$
$\cos A < 0$鈍角$b^2 + c^2 < a^2$

鈍角三角形かどうかを判定するには、最大辺の対角だけ調べれば十分です。 最大辺の2乗が他の2辺の2乗の和より大きければ鈍角三角形です。

⚠️ 落とし穴:3辺から角度を求めるとき、最大角以外を先に求めてしまう

3辺の長さから角度を求めるとき、最大辺の対角(最大角)を最初に求めるのがコツです。

✕ 非効率:最小辺の対角から求め始める → その角が鋭角とわかっても、残りの角が鋭角か鈍角かまだ不明。

○ 効率的:最大辺の対角を最初に求める → 鈍角になりうるのはこの角だけ。残りの角は必ず鋭角なので、正弦定理でも安全に求められる。

鈍角三角形で小さい角を先に正弦定理で求めると、$\sin$ だけでは鋭角と鈍角の区別がつかず($\sin$ は $0^\circ$~$180^\circ$ で常に正)、解が2通り出てしまいます。

🔬 深掘り:余弦定理と「距離」の概念の一般化

余弦定理を変形した $\cos A = \dfrac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}$ は、 実は「2つのベクトルのなす角」を求める公式と同じ形をしています。 大学の線形代数では、ベクトル $\vec{u}$, $\vec{v}$ のなす角 $\theta$ を

$$\cos\theta = \frac{\vec{u}\cdot\vec{v}}{|\vec{u}||\vec{v}|}$$

で定義します。余弦定理は2次元の三角形に限った話ですが、 この公式は3次元でも $n$ 次元でも使えます。 高校で学ぶ余弦定理は、高次元の「角度」という概念の入口なのです。

5この章を俯瞰する

余弦定理は「三角形を解く」ための中心的な道具です。 正弦定理と合わせて使うことで、三角形のあらゆる要素(辺の長さ・角度・面積)を求められるようになります。 ここで、正弦定理と余弦定理の使い分けを整理しましょう。

正弦定理と余弦定理の使い分け

わかっている情報使う定理求められるもの
2辺と挟角余弦定理第3辺の長さ
3辺余弦定理各角度
1辺とその対角 + 他の角正弦定理他の辺の長さ
1辺とその対角 + 他の辺正弦定理他の角度(注意:2解の可能性)
外接円の半径が必要正弦定理外接円の半径 $R$

つながりマップ

  • ← 4-1 三角比の定義と性質:$\cos$ の値(特に $\cos 30^\circ$, $\cos 45^\circ$, $\cos 60^\circ$, $\cos 120^\circ$, $\cos 135^\circ$, $\cos 150^\circ$)を正確に使えることが前提。余弦定理の計算で $\cos$ の値を間違えると全てが崩れる。
  • ← 4-6 正弦定理:正弦定理だけでは解けない「2辺と挟角」「3辺」の問題を、余弦定理が補完する。2つの定理を組み合わせることで、三角形のあらゆる要素が求められる。
  • → 4-8 三角形の面積:面積の公式 $S = \dfrac{1}{2}bc\sin A$ と余弦定理を組み合わせると、3辺から面積を求めるヘロンの公式が導ける。
  • → 第2章 2次関数:余弦定理で2辺と挟角から第3辺を求める問題は、辺の長さが変数のとき「2次方程式」になる。2次方程式の解の公式と組み合わせる融合問題が入試で頻出。
  • → 数学B ベクトル:余弦定理はベクトルの内積 $\vec{a}\cdot\vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$ を使えば一行で導ける。ベクトルの学習で余弦定理の「正体」がわかる。

📋まとめ

  • 余弦定理 $a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$ はピタゴラスの定理の一般化。$\angle A = 90^\circ$ のとき $\cos A = 0$ となり、ピタゴラスの定理に帰着する
  • $-2bc\cos A$ は「直角からのずれ」の補正項。鋭角なら $c^2$ は小さくなり、鈍角なら大きくなる
  • 証明のキーは座標設定 + 距離の公式 + $\sin^2 A + \cos^2 A = 1$
  • 2辺と挟角がわかっているとき → 余弦定理で第3辺を求める
  • 3辺がわかっているとき → $\cos A = \dfrac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}$ で角度を求める
  • 3辺から角を求めるときは最大辺の対角を最初に求めるのが効率的かつ安全

確認テスト

Q1. 余弦定理の式 $a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$ で $\angle A = 90^\circ$ としたとき、どんな公式になりますか?

▶ クリックして解答を表示$\cos 90^\circ = 0$ なので $a^2 = b^2 + c^2$。ピタゴラスの定理(三平方の定理)になる。

Q2. $\triangle \text{ABC}$ で $b = 4$, $c = 6$, $\angle A = 60^\circ$ のとき、$a$ の値を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$a^2 = 16 + 36 - 2 \cdot 4 \cdot 6 \cdot \cos 60^\circ = 52 - 48 \cdot \dfrac{1}{2} = 52 - 24 = 28$。$a = \sqrt{28} = 2\sqrt{7}$。

Q3. $\triangle \text{ABC}$ で $a = 5$, $b = 6$, $c = 7$ のとき、$\cos C$ の値を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$\cos C = \dfrac{a^2 + b^2 - c^2}{2ab} = \dfrac{25 + 36 - 49}{2 \cdot 5 \cdot 6} = \dfrac{12}{60} = \dfrac{1}{5}$。$\cos C > 0$ なので $\angle C$ は鋭角。

Q4. 「2辺とその間の角がわかっている」とき、正弦定理と余弦定理のどちらを使うべきですか? その理由も答えてください。

▶ クリックして解答を表示余弦定理。正弦定理は「辺と対角のペア」を結びつける定理なので、2辺と挟角からは直接使えない。余弦定理は $a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$ の形で、2辺と挟角から第3辺を直接求められる。

Q5. $a = 8$, $b = 5$, $c = 3$ のとき、$\triangle \text{ABC}$ は鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のどれですか?

▶ クリックして解答を表示最大辺は $a = 8$。$b^2 + c^2 = 25 + 9 = 34$、$a^2 = 64$。$b^2 + c^2 < a^2$ なので $\cos A < 0$。よって $\angle A$ は鈍角であり、鈍角三角形。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

4-7-1 A 基礎 2辺と挟角 余弦定理

$\triangle \text{ABC}$ において、$b = 4\sqrt{3}$、$c = 6$、$A = 30^\circ$ のとき、辺 $a$ の長さを求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$a = 2\sqrt{3}$

解説

方針:2辺 $b$, $c$ とその間の角 $A$ がわかっているので、余弦定理で $a$ を求める。

$$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A = (4\sqrt{3})^2 + 6^2 - 2 \cdot 4\sqrt{3} \cdot 6 \cdot \cos 30^\circ$$

$$= 48 + 36 - 48\sqrt{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = 84 - 72 = 12$$

$a > 0$ より $a = \sqrt{12} = 2\sqrt{3}$

4-7-2 A 基礎 3辺から角度 余弦定理

$\triangle \text{ABC}$ において、$a = \sqrt{7}$、$b = 2$、$c = 3$ のとき、$\angle A$ の大きさを求めよ。

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解答

$\angle A = 60^\circ$

解説

方針:3辺がわかっているので、余弦定理を $\cos A$ について解いた式を使う。

$$\cos A = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc} = \frac{4 + 9 - 7}{2 \cdot 2 \cdot 3} = \frac{6}{12} = \frac{1}{2}$$

$0^\circ < A < 180^\circ$ で $\cos A = \dfrac{1}{2}$ より $A = 60^\circ$。

B 標準レベル

4-7-3 B 標準 余弦定理 2次方程式 論述

$\triangle \text{ABC}$ において、$a = 2$、$c = 3$、$B = 60^\circ$ のとき、辺 $b$ の長さを求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$b = \sqrt{7}$

解説

方針:$\angle B = 60^\circ$ は辺 $a$ と辺 $c$ の挟角なので、余弦定理で辺 $b$ を直接求められる。

$$b^2 = a^2 + c^2 - 2ac\cos B = 4 + 9 - 2 \cdot 2 \cdot 3 \cdot \cos 60^\circ$$

$$= 13 - 12 \cdot \frac{1}{2} = 13 - 6 = 7$$

$b > 0$ より $b = \sqrt{7}$。

⚠️ 注意:もし $\angle B$ が挟角でなく、例えば $a$, $c$, $\angle A$ が与えられた場合は、余弦定理を $c$ について整理すると $c$ の2次方程式が現れ、$c > 0$ の解が2つ存在する場合がある(三角形が2通り作れる場合に対応)。挟角が与えられている場合はこの問題が起きない。

採点ポイント
  • 余弦定理を正しく立式する(3点)
  • $\cos 60^\circ = \dfrac{1}{2}$ を正しく代入する(3点)
  • 計算を正確に行い $b = \sqrt{7}$ を得る(4点)

C 発展レベル

4-7-4 C 発展 余弦定理 三角形の形状 論述

$\triangle \text{ABC}$ において、等式 $a\cos B = b\cos A$ が成り立つとき、この三角形はどのような形の三角形か。

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解答

$a = b$ の二等辺三角形($\angle A = \angle B$)、または $C = 90^\circ$ の直角三角形

解説

方針:余弦定理を使って $\cos A$ と $\cos B$ を3辺で表し、条件式に代入して整理する。

余弦定理より

$$\cos A = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}, \quad \cos B = \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca}$$

条件 $a\cos B = b\cos A$ に代入すると

$$a \cdot \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca} = b \cdot \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}$$

両辺を整理すると

$$\frac{c^2 + a^2 - b^2}{2c} = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2c}$$

両辺に $2c$ をかけると

$$c^2 + a^2 - b^2 = b^2 + c^2 - a^2$$

$$2a^2 = 2b^2$$

$$a^2 = b^2$$

$a > 0$, $b > 0$ より $a = b$。

したがって、$\triangle \text{ABC}$ は $a = b$ の二等辺三角形($\angle A = \angle B$)です。

⚠️ 別解として、正弦定理 $\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{b}{\sin B}$ より $a = 2R\sin A$, $b = 2R\sin B$ を代入する方法もあります。 条件は $\sin A \cos B = \sin B \cos A$ となり、$\sin A \cos B - \cos A \sin B = 0$、 すなわち $\sin(A - B) = 0$ です。$-180^\circ < A - B < 180^\circ$ より $A = B$、つまり $a = b$。

採点ポイント
  • 余弦定理(または正弦定理)を用いて条件式を辺で表す(3点)
  • 正しく式を整理して $a = b$ を導く(4点)
  • 結論を正しく述べる(3点)