直角三角形では $a^2 = b^2 + c^2$ という美しい関係が成り立ちます。
では、直角でない三角形ではどうなるのか? その答えが余弦定理です。
この定理を使えば、三角形のあらゆる辺と角の関係を解き明かすことができます。
中学で学んだピタゴラスの定理(三平方の定理)を思い出してください。 直角三角形 ABC で $\angle C = 90^\circ$ のとき、
$$c^2 = a^2 + b^2$$が成り立ちます。ここで $c$ は斜辺(直角の対辺)の長さです。
では、$\angle C$ が直角でなかったらどうなるでしょうか。 $\angle C = 60^\circ$ の場合や $\angle C = 120^\circ$ の場合、$c^2 = a^2 + b^2$ は成り立ちません。 直感的に考えると、$\angle C$ が鋭角なら $c$ は短くなり、鈍角なら $c$ は長くなります。 つまり、$c^2$ は $a^2 + b^2$ からどれだけ「ずれる」かが、角度 $C$ によって決まるのです。
その「ずれ」を正確に表したのが余弦定理です。
$\triangle \text{ABC}$ において、頂点 A, B, C の対辺の長さをそれぞれ $a, b, c$ とすると
$$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc \cos A$$ $$b^2 = c^2 + a^2 - 2ca \cos B$$ $$c^2 = a^2 + b^2 - 2ab \cos C$$余弦定理の式 $c^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C$ で $\angle C = 90^\circ$ とおくと、$\cos 90^\circ = 0$ なので
$$c^2 = a^2 + b^2 - 2ab \cdot 0 = a^2 + b^2$$
これはまさにピタゴラスの定理そのものです。 つまり、余弦定理はピタゴラスの定理を「直角」という制限を外して一般化したものです。
$-2ab\cos C$ の項は「直角からのずれ」を補正する役割を果たしています。 $\angle C$ が鋭角なら $\cos C > 0$ なので $c^2 < a^2 + b^2$(第3辺が短くなる)、 $\angle C$ が鈍角なら $\cos C < 0$ なので $c^2 > a^2 + b^2$(第3辺が長くなる)。
$c^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C$ の右辺にある $-2ab\cos C$ の意味をもう少し考えてみましょう。
角が鋭角のとき2辺が「内側に寄る」ので対辺は短くなり、 鈍角のとき2辺が「外側に開く」ので対辺は長くなる。 $\cos C$ の正負がこの直感をそのまま数式に反映しています。
✕ 誤:$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos C$(辺 $a$ の2乗に $\cos C$ を使う)
○ 正:$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$(辺 $a$ の2乗には $\cos A$ を使う)
ルール:左辺の辺と、$\cos$ の中の角は「対辺と対角」の関係です。 辺 $a$ の対角は $A$、辺 $b$ の対角は $B$、辺 $c$ の対角は $C$。 「求めたい辺の対角の $\cos$」を使うと覚えましょう。
数学Bで学ぶベクトルの内積を使うと、余弦定理は驚くほどシンプルに導けます。 $\vec{a} = \overrightarrow{\text{CA}}$、$\vec{b} = \overrightarrow{\text{CB}}$ とおくと、 $\overrightarrow{\text{AB}} = \vec{b} - \vec{a}$ であり
$$c^2 = |\vec{b} - \vec{a}|^2 = |\vec{a}|^2 - 2\vec{a}\cdot\vec{b} + |\vec{b}|^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C$$
ここで $\vec{a}\cdot\vec{b} = ab\cos C$(内積の定義)を使いました。 余弦定理は「ベクトルの大きさの2乗を展開したもの」にすぎないのです。 大学の線形代数では、この考え方がさらに一般化されて「内積空間」の理論になります。
余弦定理は「なぜ成り立つのか」を理解することが大切です。 ここでは、座標を使ったもっとも自然な証明を紹介します。
余弦定理の証明の本質は、三角形を座標平面に配置し、 2点間の距離の公式に三角比の定義を代入することです。
これは「図形の性質を座標で調べる」という解析幾何学の基本手法であり、 高校数学で繰り返し使う重要な考え方です。
Step 1:座標の設定
$\triangle \text{ABC}$ の頂点 A を原点に置き、辺 AB を $x$ 軸の正の方向に沿わせます。
$$\text{A} = (0, 0), \quad \text{B} = (c, 0)$$
Step 2:頂点 C の座標を三角比で表す
$\text{AC} = b$、$\angle \text{A}$ の大きさが $A$ なので、三角比の定義から
$$\text{C} = (b\cos A, \; b\sin A)$$
Step 3:2点間の距離の公式を適用
辺 BC の長さが $a$ なので、$\text{BC}^2 = a^2$ です。2点間の距離の公式より
$$a^2 = (b\cos A - c)^2 + (b\sin A - 0)^2$$
Step 4:展開して整理
$$a^2 = b^2\cos^2 A - 2bc\cos A + c^2 + b^2\sin^2 A$$
$$= b^2(\cos^2 A + \sin^2 A) + c^2 - 2bc\cos A$$
ここで $\cos^2 A + \sin^2 A = 1$ を使うと
$$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$$
これで余弦定理が証明されました。$\square$
この証明のポイントは、$\angle A$ が鋭角でも鈍角でもまったく同じ式変形で成り立つことです。 座標を使った証明では、$\cos A$ や $\sin A$ が自動的に正しい符号をもつため、 場合分けが不要になります。
頂点 C から辺 AB(またはその延長)に垂線 CH を下ろします。
$\angle A$ が鋭角の場合:H は辺 AB 上にあり、 $\text{AH} = b\cos A$、$\text{CH} = b\sin A$ です。
$\text{BH} = c - b\cos A$ なので、直角三角形 BHC でピタゴラスの定理を使うと
$$a^2 = \text{BH}^2 + \text{CH}^2 = (c - b\cos A)^2 + (b\sin A)^2$$
これを展開すると、座標を使った証明と同じ式になります。
※ $\angle A$ が鈍角の場合は H が辺 AB の延長上に来ますが、 $\cos A < 0$ を正しく代入すれば同じ結論が得られます。
証明の途中で $b^2\cos^2 A + b^2\sin^2 A$ が出てきたとき、 これを $b^2(\cos^2 A + \sin^2 A) = b^2 \cdot 1 = b^2$ とまとめるステップが不可欠です。
✕ 誤:$b^2\cos^2 A + b^2\sin^2 A$ をそのまま残して式が複雑になる
○ 正:$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ を使って $b^2$ にまとめる
この恒等式は三角比のあらゆる計算で登場する「最重要公式」です。 三角比の式が複雑になったら、まず $\sin^2 + \cos^2 = 1$ で簡単にできないか考える習慣をつけましょう。
余弦定理の証明は、京都教育大学(2007年)、福島大学(2009年)、上智大学(2012年)、 愛媛大学(2015年)、筑波大学(2019年推薦)など、複数の大学入試で出題実績があります。
座標を設定して距離の公式を使う方法と、垂線を下ろしてピタゴラスの定理を使う方法の 両方を書けるようにしておくと安心です。どちらの場合も、キーとなるのは $\sin^2 A + \cos^2 A = 1$ を使って整理するステップです。
余弦定理のもっとも基本的な使い方は、2辺とその間の角(挟角)がわかっているとき、 残りの第3辺の長さを求めることです。
これは正弦定理ではできないことです。正弦定理 $\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{b}{\sin B} = \dfrac{c}{\sin C}$ は 「辺と対角のペア」を結びつける定理なので、2辺と挟角の情報からは直接使えません。 2辺と挟角が与えられたら、まず余弦定理で第3辺を求めるのが定石です。
正弦定理と余弦定理の使い分けは、与えられた情報の形で決まります。
余弦定理を使う場面:
・2辺とその間の角がわかっている → 第3辺を求める
・3辺がわかっている → 角度を求める(Section 4)
正弦定理を使う場面:
・1辺とその対角、さらにもう1つの角がわかっている → 残りの辺を求める
・外接円の半径を求める
$\triangle \text{ABC}$ で $b = 5$、$c = 3\sqrt{3}$、$A = 30^\circ$ のとき、辺 $a$ の長さを求めてみましょう。
Step 1:余弦定理に代入。
$$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A = 5^2 + (3\sqrt{3})^2 - 2 \cdot 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \cos 30^\circ$$
Step 2:各項を計算。
$5^2 = 25$、$(3\sqrt{3})^2 = 27$、$\cos 30^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ なので
$$a^2 = 25 + 27 - 2 \cdot 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = 52 - 30\sqrt{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}$$
$$= 52 - 45 = 7$$
Step 3:$a > 0$ より $a = \sqrt{7}$。
上の計算で $2 \cdot 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ を計算する際、$\sqrt{3} \cdot \sqrt{3} = 3$ を見落とすことがあります。
✕ 誤:$2 \cdot 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2} = 15\sqrt{3}$($\sqrt{3}$ をまとめ忘れ)
○ 正:$2 \cdot 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2} = 5 \cdot 3\sqrt{3} \cdot \sqrt{3} = 5 \cdot 3 \cdot 3 = 45$
先に $\sqrt{3} \times \sqrt{3} = 3$ を処理してから残りをかけると計算ミスを防げます。
$\triangle \text{ABC}$ で $b = 3$、$c = \sqrt{2}$、$A = 135^\circ$ のとき、辺 $a$ を求めましょう。
$\cos 135^\circ = -\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ なので
$$a^2 = 9 + 2 - 2 \cdot 3 \cdot \sqrt{2} \cdot \left(-\frac{\sqrt{2}}{2}\right) = 11 + 6 = 17$$よって $a = \sqrt{17}$。 $\cos$ が負なので $-2bc\cos A$ が正の値になり、$a^2$ が $b^2 + c^2$ より大きくなることを確認してください。 鈍角のとき対辺が長くなるのは、Section 1 で述べた直感と一致しています。
与えられた情報:$b$, $c$, $\angle A$
求める量:辺 $a$
使う公式:$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$
手順:代入 → 計算 → $a > 0$ より正の平方根をとる
余弦定理のもう1つの重要な使い方は、3辺の長さがすべてわかっているとき、 角度を求めることです。
余弦定理 $a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$ を $\cos A$ について解くと、
$$\cos A = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}$$この式の右辺は $a$, $b$, $c$ だけで表されているので、3辺の長さがわかれば $\cos A$ が求まり、 そこから角度 $A$ が決まります。
中学で学んだ三角形の合同条件の1つに「3組の辺がそれぞれ等しい」があります。 これは「3辺の長さが決まれば、三角形の形は1通りに定まる」ということです。
形が1通りなら、当然すべての角度も1通りに決まるはずです。 余弦定理はそれを具体的に計算する手段を与えてくれるのです。 合同条件が「三角形は決まる」ことを保証し、余弦定理が「実際に求める方法」を提供する。 この2つはセットで理解してください。
$\triangle \text{ABC}$ で $a = 7$、$b = 5$、$c = 3$ のとき、$\angle A$ を求めてみましょう。
Step 1:余弦定理を $\cos A$ について解いた式に代入。
$$\cos A = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc} = \frac{25 + 9 - 49}{2 \cdot 5 \cdot 3} = \frac{-15}{30} = -\frac{1}{2}$$
Step 2:$\cos A = -\dfrac{1}{2}$ を満たす $A$ を求める。
$0^\circ < A < 180^\circ$ の範囲で $\cos A = -\dfrac{1}{2}$ となるのは $A = 120^\circ$。
結論:$\angle A = 120^\circ$
$\cos A < 0$ が出たので、$\angle A$ は鈍角です。 これは $a = 7$ が最大辺であることと整合します。 三角形で最も長い辺の対角が最大角であり、それが鈍角であることを $\cos$ の符号が教えてくれます。
3辺から $\cos A$ を求めることで、三角形が鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のどれかを判定できます。
| $\cos A$ の符号 | $\angle A$ の種類 | $b^2 + c^2$ と $a^2$ の大小 |
|---|---|---|
| $\cos A > 0$ | 鋭角 | $b^2 + c^2 > a^2$ |
| $\cos A = 0$ | 直角 | $b^2 + c^2 = a^2$ |
| $\cos A < 0$ | 鈍角 | $b^2 + c^2 < a^2$ |
鈍角三角形かどうかを判定するには、最大辺の対角だけ調べれば十分です。 最大辺の2乗が他の2辺の2乗の和より大きければ鈍角三角形です。
3辺の長さから角度を求めるとき、最大辺の対角(最大角)を最初に求めるのがコツです。
✕ 非効率:最小辺の対角から求め始める → その角が鋭角とわかっても、残りの角が鋭角か鈍角かまだ不明。
○ 効率的:最大辺の対角を最初に求める → 鈍角になりうるのはこの角だけ。残りの角は必ず鋭角なので、正弦定理でも安全に求められる。
鈍角三角形で小さい角を先に正弦定理で求めると、$\sin$ だけでは鋭角と鈍角の区別がつかず($\sin$ は $0^\circ$~$180^\circ$ で常に正)、解が2通り出てしまいます。
余弦定理を変形した $\cos A = \dfrac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}$ は、 実は「2つのベクトルのなす角」を求める公式と同じ形をしています。 大学の線形代数では、ベクトル $\vec{u}$, $\vec{v}$ のなす角 $\theta$ を
$$\cos\theta = \frac{\vec{u}\cdot\vec{v}}{|\vec{u}||\vec{v}|}$$
で定義します。余弦定理は2次元の三角形に限った話ですが、 この公式は3次元でも $n$ 次元でも使えます。 高校で学ぶ余弦定理は、高次元の「角度」という概念の入口なのです。
余弦定理は「三角形を解く」ための中心的な道具です。 正弦定理と合わせて使うことで、三角形のあらゆる要素(辺の長さ・角度・面積)を求められるようになります。 ここで、正弦定理と余弦定理の使い分けを整理しましょう。
| わかっている情報 | 使う定理 | 求められるもの |
|---|---|---|
| 2辺と挟角 | 余弦定理 | 第3辺の長さ |
| 3辺 | 余弦定理 | 各角度 |
| 1辺とその対角 + 他の角 | 正弦定理 | 他の辺の長さ |
| 1辺とその対角 + 他の辺 | 正弦定理 | 他の角度(注意:2解の可能性) |
| 外接円の半径が必要 | 正弦定理 | 外接円の半径 $R$ |
Q1. 余弦定理の式 $a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$ で $\angle A = 90^\circ$ としたとき、どんな公式になりますか?
Q2. $\triangle \text{ABC}$ で $b = 4$, $c = 6$, $\angle A = 60^\circ$ のとき、$a$ の値を求めてください。
Q3. $\triangle \text{ABC}$ で $a = 5$, $b = 6$, $c = 7$ のとき、$\cos C$ の値を求めてください。
Q4. 「2辺とその間の角がわかっている」とき、正弦定理と余弦定理のどちらを使うべきですか? その理由も答えてください。
Q5. $a = 8$, $b = 5$, $c = 3$ のとき、$\triangle \text{ABC}$ は鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のどれですか?
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
$\triangle \text{ABC}$ において、$b = 4\sqrt{3}$、$c = 6$、$A = 30^\circ$ のとき、辺 $a$ の長さを求めよ。
$a = 2\sqrt{3}$
方針:2辺 $b$, $c$ とその間の角 $A$ がわかっているので、余弦定理で $a$ を求める。
$$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A = (4\sqrt{3})^2 + 6^2 - 2 \cdot 4\sqrt{3} \cdot 6 \cdot \cos 30^\circ$$
$$= 48 + 36 - 48\sqrt{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = 84 - 72 = 12$$
$a > 0$ より $a = \sqrt{12} = 2\sqrt{3}$
$\triangle \text{ABC}$ において、$a = \sqrt{7}$、$b = 2$、$c = 3$ のとき、$\angle A$ の大きさを求めよ。
$\angle A = 60^\circ$
方針:3辺がわかっているので、余弦定理を $\cos A$ について解いた式を使う。
$$\cos A = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc} = \frac{4 + 9 - 7}{2 \cdot 2 \cdot 3} = \frac{6}{12} = \frac{1}{2}$$
$0^\circ < A < 180^\circ$ で $\cos A = \dfrac{1}{2}$ より $A = 60^\circ$。
$\triangle \text{ABC}$ において、$a = 2$、$c = 3$、$B = 60^\circ$ のとき、辺 $b$ の長さを求めよ。
$b = \sqrt{7}$
方針:$\angle B = 60^\circ$ は辺 $a$ と辺 $c$ の挟角なので、余弦定理で辺 $b$ を直接求められる。
$$b^2 = a^2 + c^2 - 2ac\cos B = 4 + 9 - 2 \cdot 2 \cdot 3 \cdot \cos 60^\circ$$
$$= 13 - 12 \cdot \frac{1}{2} = 13 - 6 = 7$$
$b > 0$ より $b = \sqrt{7}$。
⚠️ 注意:もし $\angle B$ が挟角でなく、例えば $a$, $c$, $\angle A$ が与えられた場合は、余弦定理を $c$ について整理すると $c$ の2次方程式が現れ、$c > 0$ の解が2つ存在する場合がある(三角形が2通り作れる場合に対応)。挟角が与えられている場合はこの問題が起きない。
$\triangle \text{ABC}$ において、等式 $a\cos B = b\cos A$ が成り立つとき、この三角形はどのような形の三角形か。
$a = b$ の二等辺三角形($\angle A = \angle B$)、または $C = 90^\circ$ の直角三角形
方針:余弦定理を使って $\cos A$ と $\cos B$ を3辺で表し、条件式に代入して整理する。
余弦定理より
$$\cos A = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}, \quad \cos B = \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca}$$
条件 $a\cos B = b\cos A$ に代入すると
$$a \cdot \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca} = b \cdot \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}$$
両辺を整理すると
$$\frac{c^2 + a^2 - b^2}{2c} = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2c}$$
両辺に $2c$ をかけると
$$c^2 + a^2 - b^2 = b^2 + c^2 - a^2$$
$$2a^2 = 2b^2$$
$$a^2 = b^2$$
$a > 0$, $b > 0$ より $a = b$。
したがって、$\triangle \text{ABC}$ は $a = b$ の二等辺三角形($\angle A = \angle B$)です。
⚠️ 別解として、正弦定理 $\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{b}{\sin B}$ より $a = 2R\sin A$, $b = 2R\sin B$ を代入する方法もあります。 条件は $\sin A \cos B = \sin B \cos A$ となり、$\sin A \cos B - \cos A \sin B = 0$、 すなわち $\sin(A - B) = 0$ です。$-180^\circ < A - B < 180^\circ$ より $A = B$、つまり $a = b$。