第4章 図形と計量

正弦定理
─ 辺と角の「比例関係」を外接円でつなぐ

三角形の辺と角には、驚くほどシンプルな関係が隠れています。
「辺の長さ ÷ 対角の正弦 = 一定」。この一定値こそ、外接円の直径 $2R$ です。
正弦定理は、三角形と円を結ぶ美しい橋渡しの定理です。

1正弦定理とは ─ 辺と角の「比例関係」

三角形の辺と角の間には、どんな関係があるでしょうか。 直感的に「大きな角の向かいには長い辺がある」と感じるかもしれません。 正弦定理は、この直感を正確な等式にしたものです。

$\triangle \mathrm{ABC}$ において、頂点 $\mathrm{A}$, $\mathrm{B}$, $\mathrm{C}$ の対辺の長さをそれぞれ $a$, $b$, $c$ とし、 各角の大きさを $A$, $B$, $C$ とします。 このとき、外接円(三角形の3頂点を通る円)の半径を $R$ とすると、次の等式が成り立ちます。

📐 正弦定理

$\triangle \mathrm{ABC}$ の外接円の半径を $R$ とすると

$$\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R$$
※ 「辺 ÷ 対角の正弦」がすべて等しく、その値は外接円の直径 $2R$ に一致する。

この定理が言っていることは、実にシンプルです。 どの辺をとっても、「辺の長さ ÷ その対角の $\sin$」は同じ値になる。 しかも、その共通の値は外接円の直径 $2R$ という幾何学的な意味を持っています。

💡 ここが本質:なぜ「辺 ÷ sinの対角」が一定になるのか

大きな角の対辺は長く、小さな角の対辺は短い。 角が大きくなると $\sin$ の値も変化し、対辺の長さの変化とぴったり釣り合います。

この「釣り合い」が起こる理由は、すべての辺と角が同一の外接円に乗っているからです。 円周角と弦の長さの関係が、正弦定理の正体です。

正弦定理は「三角形の情報」に見えますが、本質は「円の性質」です。 三角形を外接円の中で捉えることで、辺と角の関係が一本の等式にまとまります。

正弦定理の「使いどころ」を整理する

正弦定理は、等式 $\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{b}{\sin B} = \dfrac{c}{\sin C} = 2R$ から必要な部分を取り出して使います。 主に次の2つの場面で威力を発揮します。

  • 場面1:辺の長さを求める ─ 1辺と2角がわかっているとき、もう1つの辺の長さを求められる
  • 場面2:外接円の半径を求める ─ 1辺とその対角がわかっているとき、$R$ を求められる
⚠️ 落とし穴:正弦定理と余弦定理の使い分け

✕ 誤:「辺と角の問題は全部正弦定理で解ける」

○ 正:正弦定理は「向かい合う辺と角」のペアが関わるときに使います。 2辺とその間の角、あるいは3辺が条件のときは余弦定理の出番です。

判断基準:条件に「辺とその対角のペア」があるなら正弦定理、「2辺とその挟む角」や「3辺」なら余弦定理。 この使い分けが最も重要です。

🔬 深掘り:正弦定理の発見と歴史

正弦定理の起源は古く、中世イスラム数学にまで遡ります。 ペルシアの数学者アブー・アル=ワファー(10世紀)らが球面三角法の研究の中で見出しました。

実は、正弦定理には平面版球面版があります。 高校で学ぶのは平面版ですが、球面版は地球上の距離計算や天文学で使われます。 大学の微分幾何学では、さまざまな曲面上の三角形に正弦定理を拡張する研究が行われています。

2正弦定理の証明 ─ 外接円を使った導出

正弦定理はなぜ成り立つのでしょうか。 鍵になるのは外接円の円周角と弦の関係です。 「半円の弧に対する円周角は $90^\circ$」という性質を使って証明します。

$\dfrac{a}{\sin A} = 2R$ を示せば十分です($b$, $c$ についても同様の議論ができるため)。 角 $A$ が鋭角か、直角か、鈍角かで場合分けが必要です。

💡 ここが本質:証明の戦略 ─ 直径を引いて直角三角形をつくる

外接円の中心を $\mathrm{O}$ とし、頂点 $\mathrm{B}$ を通る直径 $\mathrm{BD}$ を引きます。 すると、直径に対する円周角は $90^\circ$ なので、$\angle \mathrm{BCD'}$ や $\angle \mathrm{BDA}$($\mathrm{D}$ が適切な点のとき)が直角になります。

この直角三角形の中で $\sin$ を使えば、弦の長さ $a$ と外接円の半径 $R$ の関係が導けます。 「直径を引いて直角三角形をつくる」のが証明の核心アイデアです。

▷ 正弦定理の証明(鋭角の場合:$A < 90^\circ$)

外接円の中心を $\mathrm{O}$、半径を $R$ とし、$\mathrm{B}$ を通る直径 $\mathrm{BD}$ を引きます。

Step 1:$\mathrm{D}$ は円周上の点なので、直径 $\mathrm{BD}$ に対する円周角 $\angle \mathrm{BCD}$ ではなく、 弧 $\mathrm{BC}$ に対する円周角を考えます。 弧 $\mathrm{BC}$($\mathrm{A}$ を含む側と反対側)に対して、$\angle \mathrm{BDC}$ は $\angle \mathrm{BAC} = A$ と等しい(同じ弧に対する円周角)。

ただし、ここでは別のアプローチを使います。 $\mathrm{B}$ を通る直径 $\mathrm{BD}$ を引くと、$\mathrm{BD} = 2R$ です。 直径に対する円周角は $90^\circ$ なので、$\angle \mathrm{BCD} = 90^\circ$(ただし $\mathrm{C}$ ではなく、半円上の点)。

ここで正確に述べます。$\mathrm{B}$ を通る直径の反対側の端点を $\mathrm{D}$ とします。 $\mathrm{D}$ と $\mathrm{A}$ は弧 $\mathrm{BC}$ の同じ側にあるとき、$\angle \mathrm{BDA} = \angle \mathrm{BCA}$ ではなく、 $\mathrm{D}$ と $\mathrm{C}$ を結ぶと直径に対する円周角 $\angle \mathrm{BCD} = 90^\circ$ です。

Step 2(簡潔な定式化):$\mathrm{B}$ を通る直径 $\mathrm{BD}$ をとります。 $\triangle \mathrm{BDC}$ において、$\angle \mathrm{BCD} = 90^\circ$(直径に対する円周角)。 また、弧 $\mathrm{BC}$ に対する円周角として $\angle \mathrm{BDC} = \angle \mathrm{BAC} = A$。

Step 3:$\triangle \mathrm{BDC}$ は $\angle \mathrm{BCD} = 90^\circ$ の直角三角形なので $$\sin(\angle \mathrm{BDC}) = \frac{\mathrm{BC}}{\mathrm{BD}}$$ $$\sin A = \frac{a}{2R}$$

Step 4:両辺を変形して $$\frac{a}{\sin A} = 2R$$

これが示したかった等式です。 $\blacksquare$

▷ 正弦定理の証明(鈍角の場合:$A > 90^\circ$)

$A > 90^\circ$ のとき、鋭角の場合と同じく $\mathrm{B}$ を通る直径 $\mathrm{BD}$ を引きます。

Step 1:弧 $\mathrm{BC}$($\mathrm{A}$ を含まない短い弧)に対して、 $\angle \mathrm{BDC}$ は $\mathrm{A}$ と同じ弧に対する円周角ですが、 $\mathrm{D}$ と $\mathrm{A}$ が弦 $\mathrm{BC}$ に対して反対側にあるとき、 $\angle \mathrm{BDC} + \angle \mathrm{BAC} = 180^\circ$ が成り立ちます(円に内接する四角形の対角の和)。

したがって $\angle \mathrm{BDC} = 180^\circ - A$ です。

Step 2:直径に対する円周角より $\angle \mathrm{BCD} = 90^\circ$ なので、$\triangle \mathrm{BDC}$ で $$\sin(\angle \mathrm{BDC}) = \frac{\mathrm{BC}}{\mathrm{BD}} = \frac{a}{2R}$$

Step 3:$\sin(180^\circ - A) = \sin A$ なので $$\sin A = \frac{a}{2R}$$ よって $\dfrac{a}{\sin A} = 2R$。 $\blacksquare$

補足($A = 90^\circ$ の場合):$A = 90^\circ$ のとき、辺 $a = \mathrm{BC}$ が外接円の直径そのものになります。 $\sin 90^\circ = 1$ なので、$\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{2R}{1} = 2R$ が直ちに成り立ちます。

⚠️ 落とし穴:鈍角の場合を忘れて「証明できた」と思い込む

✕ 誤:鋭角の場合だけ証明して「正弦定理が示された」と結論づける。

○ 正:正弦定理はすべての三角形で成り立つ定理です。 鋭角・直角・鈍角の3つの場合を確認して初めて完全な証明になります。

入試で「正弦定理を証明せよ」と出題されたとき、鈍角の場合の処理がポイントになります。 $\sin(180^\circ - A) = \sin A$ を使うのがコツです。

⚠️ 落とし穴:$\sin(180^\circ - A) = \sin A$ を使い忘れる

鈍角の証明で $\angle \mathrm{BDC} = 180^\circ - A$ が出てきたとき、 $\sin(180^\circ - A)$ をどう処理するかでつまずく人が多いです。

✕ 誤:「$180^\circ - A$ だから $\sin$ の値は違う」と混乱する。

○ 正:$\sin(180^\circ - \theta) = \sin \theta$ は三角比の基本公式。 単位円で考えれば、$\theta$ と $180^\circ - \theta$ は $y$ 座標($\sin$ の値)が同じです。 この公式のおかげで、鈍角でも鋭角と全く同じ結果が得られます。

3正弦定理の活用① ─ 辺の長さを求める

正弦定理の最も基本的な使い方は、1辺と2角がわかっているとき、別の辺を求めることです。 三角形の内角の和が $180^\circ$ であることも合わせて使います。

💡 ここが本質:「1辺2角」→ 三角形が1つに決まる

三角形を決定する条件の1つが「1辺と2角」です。 2角がわかれば残りの角も $180^\circ - (A + B)$ で決まるので、実質的に3角すべてがわかります。

正弦定理 $\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{b}{\sin B}$ は、「向かい合う辺と角のペア」をつなぐ比例式です。 1つのペア(たとえば $a$ と $\sin A$)がわかっていれば、もう1つのペアの未知辺 $b$ が求まります。

具体例で手順を確認する

$\triangle \mathrm{ABC}$ で $b = 3\sqrt{2}$, $B = 45^\circ$, $C = 105^\circ$ のとき、辺 $a$ と辺 $c$ を求めてみましょう。

▷ 解法のステップ

Step 1:残りの角を求める。$A = 180^\circ - 45^\circ - 105^\circ = 30^\circ$

Step 2:正弦定理から $a$ を求める。 $$\frac{a}{\sin 30^\circ} = \frac{3\sqrt{2}}{\sin 45^\circ}$$ $$\frac{a}{\dfrac{1}{2}} = \frac{3\sqrt{2}}{\dfrac{\sqrt{2}}{2}}$$ $$a = \frac{1}{2} \times \frac{3\sqrt{2}}{\dfrac{\sqrt{2}}{2}} = \frac{1}{2} \times 6 = 3$$

Step 3:正弦定理から $c$ を求める。 $$\frac{c}{\sin 105^\circ} = \frac{3\sqrt{2}}{\sin 45^\circ} = 6$$ $\sin 105^\circ = \sin(180^\circ - 75^\circ) = \sin 75^\circ = \dfrac{\sqrt{6} + \sqrt{2}}{4}$ なので $$c = 6 \times \frac{\sqrt{6} + \sqrt{2}}{4} = \frac{3(\sqrt{6} + \sqrt{2})}{2}$$

結論:$a = 3$, $c = \dfrac{3(\sqrt{6} + \sqrt{2})}{2}$

📐 正弦定理の適用手順(辺を求める場合)

条件:1辺とその対角、および求めたい辺の対角がわかっている

手順:

1. 内角の和 $A + B + C = 180^\circ$ から未知の角を求める

2. 正弦定理 $\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{b}{\sin B}$ に既知の値を代入

3. 未知辺について解く:$b = a \cdot \dfrac{\sin B}{\sin A}$

※ 求めたい辺の対角の $\sin$ が必要。角がわからなければ先に求めること。
⚠️ 落とし穴:$\sin$ から角を求めるとき解が2つある場合

2辺と1つの対角から正弦定理で別の角を求めるとき、$\sin B = k$($0 < k < 1$)となると $B$ の候補が2つ出ます。

✕ 誤:$\sin B = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ → 「$B = 60^\circ$」と即断する。

○ 正:$\sin B = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ → $B = 60^\circ$ または $B = 120^\circ$。 $A + B + C = 180^\circ$ を満たすかどうかで、どちらが適するか確認する必要があります。 条件によっては三角形が2つ存在する場合もあります。

4正弦定理の活用② ─ 外接円の半径を求める

正弦定理のもう1つの重要な使い方は、外接円の半径 $R$ を求めることです。 $\dfrac{a}{\sin A} = 2R$ の右辺に $R$ が直接現れているので、 1辺とその対角がわかれば $R$ を計算できます。

💡 ここが本質:外接円の半径を求められるのは正弦定理だけ

余弦定理には $R$ が登場しません。 外接円の半径を求める問題は、正弦定理一択です。

問題文に「外接円」「外接円の半径」というキーワードが出てきたら、正弦定理を使うサインです。 逆に、正弦定理の $= 2R$ の部分を使いこなすことで、三角形と円を結びつける問題に対応できます。

具体例で手順を確認する

$\triangle \mathrm{ABC}$ で $a = 4$, $A = 60^\circ$ のとき、外接円の半径 $R$ を求めてみましょう。

▷ 解法のステップ

Step 1:正弦定理を適用する。 $$\frac{a}{\sin A} = 2R$$

Step 2:既知の値を代入。 $$\frac{4}{\sin 60^\circ} = 2R$$ $$\frac{4}{\dfrac{\sqrt{3}}{2}} = 2R$$ $$\frac{8}{\sqrt{3}} = 2R$$

Step 3:$R$ について解く。 $$R = \frac{4}{\sqrt{3}} = \frac{4\sqrt{3}}{3}$$

結論:外接円の半径 $R = \dfrac{4\sqrt{3}}{3}$

辺の長さと外接円の半径を同時に求める

入試では、辺と外接円の半径を両方求める問題がよく出ます。 $\triangle \mathrm{ABC}$ で $b = 3\sqrt{2}$, $B = 45^\circ$, $A = 105^\circ$ のとき、辺 $a$ と外接円の半径 $R$ を求めましょう。

▷ 解法のステップ

Step 1:まず $\dfrac{b}{\sin B} = 2R$ から $R$ を求める。 $$2R = \frac{3\sqrt{2}}{\sin 45^\circ} = \frac{3\sqrt{2}}{\dfrac{\sqrt{2}}{2}} = 6$$ よって $R = 3$。

Step 2:$C = 180^\circ - 105^\circ - 45^\circ = 30^\circ$

Step 3:$a = 2R \sin A = 6 \sin 105^\circ = 6 \cdot \dfrac{\sqrt{6} + \sqrt{2}}{4} = \dfrac{3(\sqrt{6} + \sqrt{2})}{2}$

結論:$R = 3$, $a = \dfrac{3(\sqrt{6} + \sqrt{2})}{2}$

このように、まず $2R$ の値を求めてしまえば、あとは $a = 2R \sin A$ で任意の辺が求まります。 $2R$ を「共通の定数」として先に確定させるのが効率的なテクニックです。

🔬 深掘り:正弦定理と余弦定理の統一的理解 ─ ベクトルによる証明

大学の線形代数では、正弦定理と余弦定理をベクトルの内積と外積から統一的に導くことができます。

$\vec{a}$ と $\vec{b}$ のなす角を $\theta$ とすると、 内積 $\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$ から余弦定理が、 外積 $|\vec{a} \times \vec{b}| = |\vec{a}||\vec{b}|\sin\theta$ から正弦定理が自然に現れます。

高校では正弦定理を「外接円を使った幾何学的な定理」として学びますが、 ベクトルの視点から見ると $\sin$ と $\cos$ はそれぞれ「垂直成分」と「平行成分」を表しており、 正弦定理と余弦定理は表裏一体の関係にあります。

5この章を俯瞰する

正弦定理は、三角形と円を結ぶ定理です。 ここまで学んだ内容を整理し、他の定理や分野とのつながりを確認しましょう。

正弦定理と余弦定理の使い分け

条件使う定理理由
1辺と2角正弦定理対辺と対角のペアが作れる
2辺と1つの対角正弦定理対辺と対角のペアがある(解が2つの場合に注意)
外接円の半径正弦定理$2R$ が含まれるのは正弦定理だけ
2辺とその間の角余弦定理辺と対角のペアがない
3辺余弦定理角が1つもわからないので $\sin$ が使えない

つながりマップ

  • ← 4-1 三角比の定義と性質:$\sin$, $\cos$, $\tan$ の定義と $\sin(180^\circ - \theta) = \sin \theta$ などの性質が正弦定理の証明で不可欠。
  • ↔ 4-7 余弦定理:正弦定理と余弦定理は「三角形の辺と角の関係」を異なる角度から記述する。両方を使い分けることで、あらゆる三角形の問題に対応できる。
  • → 4-8 三角形の面積:面積公式 $S = \dfrac{1}{2}bc\sin A$ は正弦定理と組み合わせることで $S = \dfrac{abc}{4R}$(外接円の半径を用いた面積公式)に変形できる。
  • → 数学A 円の性質:正弦定理の証明で使った「円周角の定理」は数学Aで本格的に学ぶ。円に内接する四角形の性質とも関連する。
  • → 数学II 三角関数:$\sin$ の値から角を求める操作は、数学IIの三角方程式・逆三角関数の考え方につながる。

📋まとめ

  • 正弦定理:$\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{b}{\sin B} = \dfrac{c}{\sin C} = 2R$。辺と対角の正弦の比が一定で、外接円の直径に等しい
  • 正弦定理の本質は外接円の性質。証明は「直径を引いて直角三角形をつくる」のが鍵
  • 証明では角 $A$ が鋭角・直角・鈍角の3つの場合を確認する必要がある。鈍角では $\sin(180^\circ - A) = \sin A$ を使う
  • 辺を求める場面:1辺と2角がわかっているとき、$b = \dfrac{a \sin B}{\sin A}$ で求まる
  • 外接円の半径を求める場面:1辺とその対角がわかっているとき、$R = \dfrac{a}{2\sin A}$ で求まる
  • 正弦定理は「辺と対角のペア」がある場面で使う。「2辺と挟む角」「3辺」の場合は余弦定理を使う

確認テスト

Q1. 正弦定理を式で書いてください。$R$ は何を表しますか?

▶ クリックして解答を表示$\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{b}{\sin B} = \dfrac{c}{\sin C} = 2R$。$R$ は $\triangle \mathrm{ABC}$ の外接円の半径。

Q2. 正弦定理の証明で「直径を引く」のはなぜですか?

▶ クリックして解答を表示直径に対する円周角は $90^\circ$ なので、直角三角形がつくれる。直角三角形の中で $\sin$ を使えば、辺 $a$ と外接円の半径 $R$ の関係が導ける。

Q3. $\triangle \mathrm{ABC}$ で $a = 6$, $A = 30^\circ$ のとき、外接円の半径 $R$ を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$\dfrac{6}{\sin 30^\circ} = 2R$ より $\dfrac{6}{\frac{1}{2}} = 2R$、$12 = 2R$。よって $R = 6$。

Q4. 正弦定理と余弦定理の使い分けの判断基準を述べてください。

▶ クリックして解答を表示「辺とその対角のペア」が条件に含まれているなら正弦定理。「2辺とその挟む角」や「3辺」が条件なら余弦定理。外接円の半径が関わるときは正弦定理一択。

Q5. $\sin B = \dfrac{1}{2}$ のとき、$B$ の値はいくつですか? なぜ1つに決まらない場合があるのですか?

▶ クリックして解答を表示$B = 30^\circ$ または $B = 150^\circ$。$\sin$ は $0^\circ < B < 180^\circ$ の範囲で鋭角と鈍角の2つの値をとりうる($\sin(180^\circ - B) = \sin B$ より)。$A + B + C = 180^\circ$ を満たすかで判定する。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

4-6-1 A 基礎 正弦定理 辺の計算

$\triangle \mathrm{ABC}$ において、$a = 4$, $A = 60^\circ$, $B = 75^\circ$ のとき、辺 $b$ と外接円の半径 $R$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$b = \sqrt{6} + \sqrt{2}$, $R = \dfrac{4\sqrt{3}}{3}$

解説

方針:1辺とその対角がわかっているので、正弦定理を適用する。

まず $C = 180^\circ - 60^\circ - 75^\circ = 45^\circ$。

正弦定理より $2R = \dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{4}{\sin 60^\circ} = \dfrac{4}{\frac{\sqrt{3}}{2}} = \dfrac{8}{\sqrt{3}} = \dfrac{8\sqrt{3}}{3}$

よって $R = \dfrac{4\sqrt{3}}{3}$。

次に $b$ を求める。$\sin 75^\circ = \dfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}$ を用いて

$$b = \frac{a\sin B}{\sin A} = \frac{4 \cdot \frac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}}{\frac{\sqrt{3}}{2}} = \frac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{\frac{\sqrt{3}}{2}} = \frac{2(\sqrt{6}+\sqrt{2})}{\sqrt{3}}$$

分母を有理化すると

$$b = \frac{2(\sqrt{6}+\sqrt{2})\sqrt{3}}{3} = \frac{2(\sqrt{18}+\sqrt{6})}{3} = \frac{2(3\sqrt{2}+\sqrt{6})}{3} = \frac{6\sqrt{2}+2\sqrt{6}}{3}$$

$= 2\sqrt{2} + \dfrac{2\sqrt{6}}{3}$... ではなく、$\dfrac{6\sqrt{2}+2\sqrt{6}}{3} = \dfrac{3(\sqrt{6}+\sqrt{2})+3\sqrt{2}-\sqrt{6}}{3}$。

直接的に確認:$3(\sqrt{6}+\sqrt{2}) = 3\sqrt{6}+3\sqrt{2}$ と $6\sqrt{2}+2\sqrt{6}$ を比較すると一致しない。 よって $b = \dfrac{6\sqrt{2}+2\sqrt{6}}{3}$ が最終答えです。

4-6-2 A 基礎 正弦定理 外接円の半径

$\triangle \mathrm{ABC}$ において、$c = 2\sqrt{3}$, $C = 120^\circ$ のとき、外接円の半径 $R$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$R = 2$

解説

方針:外接円の半径を求めるので正弦定理を使う。

$\dfrac{c}{\sin C} = 2R$ より $2R = \dfrac{2\sqrt{3}}{\sin 120^\circ} = \dfrac{2\sqrt{3}}{\frac{\sqrt{3}}{2}} = \dfrac{2\sqrt{3} \times 2}{\sqrt{3}} = 4$

よって $R = 2$。

※ 1辺とその対角さえわかっていれば、他の辺や角を知らなくても外接円の半径は求まります。

B 標準レベル

4-6-3 B 標準 正弦定理 角の決定 解の個数

$\triangle \mathrm{ABC}$ において、$a = \sqrt{2}$, $b = \sqrt{3}$, $A = 45^\circ$ のとき、角 $B$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$B = 60^\circ$ または $B = 120^\circ$

解説

方針:2辺と1つの対角($a$ と $A$)がわかっている。「辺と対角のペア」があるので正弦定理を使う。

正弦定理より $\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{b}{\sin B}$

$$\frac{\sqrt{2}}{\sin 45^\circ} = \frac{\sqrt{3}}{\sin B}$$

$\sin 45^\circ = \dfrac{\sqrt{2}}{2}$ を代入すると $\dfrac{\sqrt{2}}{\frac{\sqrt{2}}{2}} = \dfrac{\sqrt{3}}{\sin B}$ より $2 = \dfrac{\sqrt{3}}{\sin B}$

$$\sin B = \frac{\sqrt{3}}{2}$$

$0^\circ < B < 180^\circ$ の範囲で $\sin B = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ を満たす $B$ は2つある。

$B = 60^\circ$ または $B = 120^\circ$

各候補が三角形の条件 $A + B + C = 180^\circ$ を満たすか確認する。

・$B = 60^\circ$ のとき:$C = 180^\circ - 45^\circ - 60^\circ = 75^\circ > 0^\circ$ ✓

・$B = 120^\circ$ のとき:$C = 180^\circ - 45^\circ - 120^\circ = 15^\circ > 0^\circ$ ✓

どちらも三角形が存在するので、$B = 60^\circ$ または $B = 120^\circ$。

⚠️ 「$\sin$ から角を求めるとき解が2つある」典型問題。$\sin B = k$($0 < k < 1$)のとき必ず鋭角と鈍角の2候補を検討すること。

採点ポイント
  • 正弦定理を正しく適用(2点)
  • $\sin B = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ を正しく導出(2点)
  • $B$ の候補が $60^\circ$ と $120^\circ$ の2つあることに気づく(3点)
  • $A + B + C = 180^\circ$ で各候補が有効か確認(3点)

C 発展レベル

4-6-4 C 発展 正弦定理 面積 論述

$\triangle \mathrm{ABC}$ の外接円の半径を $R$ とする。 $\triangle \mathrm{ABC}$ の面積 $S$ が $S = \dfrac{abc}{4R}$ で表されることを証明せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(証明は下記の通り)

解説

方針:三角形の面積公式 $S = \dfrac{1}{2}bc\sin A$ と正弦定理 $\dfrac{a}{\sin A} = 2R$ を組み合わせる。

三角形の面積は $$S = \frac{1}{2}bc\sin A \quad \cdots (*)$$

正弦定理より $\sin A = \dfrac{a}{2R} \quad \cdots (**)$

$(**)$ を $(*)$ に代入すると $$S = \frac{1}{2}bc \cdot \frac{a}{2R} = \frac{abc}{4R}$$

したがって $S = \dfrac{abc}{4R}$ が成り立つ。 $\blacksquare$

※ この公式は「3辺と外接円の半径」から面積を求める場面で便利です。 正弦定理の「$= 2R$」の部分をうまく利用した応用例です。

採点ポイント
  • 面積公式 $S = \dfrac{1}{2}bc\sin A$ を正しく用いている(3点)
  • 正弦定理から $\sin A = \dfrac{a}{2R}$ を導出(3点)
  • 代入して $S = \dfrac{abc}{4R}$ を導出(2点)
  • 論述が論理的に明確(2点)