第4章 図形と計量

三角比を含む方程式・不等式
─ 単位円が「答えの地図」になる

$\sin\theta = k$, $\cos\theta = k$, $\tan\theta = k$ を解く鍵は、単位円上に答えを「見る」こと。
方程式も不等式も、単位円という1つの道具で統一的に扱えます。

1$\sin\theta = k$, $\cos\theta = k$, $\tan\theta = k$ の解法 ─ 単位円で考える

4-1で学んだ三角比の定義を思い出しましょう。 原点 $O$ を中心とする半径1の半円(単位円の上半分)上の点 $P(x, y)$ に対して、$\angle AOP = \theta$($A(1, 0)$)のとき、 $\cos\theta = x$($P$ の $x$ 座標)、$\sin\theta = y$($P$ の $y$ 座標)です。

では「$\sin\theta = \dfrac{1}{2}$ を満たす $\theta$ を求めよ」と問われたら、何をすればよいでしょうか? $\sin\theta$ は単位円上の点 $P$ の $y$ 座標ですから、$y$ 座標が $\dfrac{1}{2}$ となる半円上の点 $P$ を探す作業になります。 つまり、直線 $y = \dfrac{1}{2}$ と半円の交点を見つければよいのです。

💡 ここが本質:三角方程式は「座標の読み取り」にすぎない

三角比を含む方程式(三角方程式)を解くとは、単位円上で特定の座標をもつ点を探すことです。

$\sin\theta = k$:$y$ 座標が $k$ の点を探す → 直線 $y = k$ と半円の交点

$\cos\theta = k$:$x$ 座標が $k$ の点を探す → 直線 $x = k$ と半円の交点

$\tan\theta = k$:直線 $x = 1$ 上で $y$ 座標が $k$ の点 $T(1, k)$ と原点を結ぶ直線が、半円と交わる点を探す

方程式を「解く」というと代数的な操作を想像しがちですが、三角方程式の本質は幾何的な読み取りです。

$\sin\theta = k$ の解法

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、$\sin\theta$ の値域は $0 \leq \sin\theta \leq 1$ です。 半円上で直線 $y = k$($0 \leq k \leq 1$)との交点を探します。

$0 < k < 1$ のとき:交点は2つあります。$\theta_0$ と $180^\circ - \theta_0$ です。 これは半円が $y$ 軸に関して対称だからです。 たとえば $\sin\theta = \dfrac{1}{2}$ なら、$\theta = 30^\circ$ と $\theta = 150^\circ$ の2つが解になります。

$k = 1$ のとき:交点は1つ。$\theta = 90^\circ$ のみ。
$k = 0$ のとき:$\theta = 0^\circ$ と $\theta = 180^\circ$ の2つ。

$\cos\theta = k$ の解法

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、$\cos\theta$ の値域は $-1 \leq \cos\theta \leq 1$ です。 半円上で直線 $x = k$ との交点を探します。

$\cos\theta$ の場合、$-1 < k < 1$ のとき交点は常に1つです。 これは半円が $y$ 軸の左右に1つずつしか点をもたないためです。 たとえば $\cos\theta = -\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ なら $\theta = 150^\circ$ が唯一の解です。

$\tan\theta = k$ の解法

$\tan\theta$ は直線 $x = 1$ 上の点 $T(1, k)$ と原点 $O$ を結ぶ直線 $OT$ の傾きとして定義できます。 この直線と半円の交点 $P$ を求め、$\angle AOP$ を読み取ります。

$\tan\theta$ は $\theta \neq 90^\circ$ のとき、すべての実数値をとります。 $k \neq 0$ のとき、$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$($\theta \neq 90^\circ$)で解はちょうど1つです。 たとえば $\tan\theta = -\dfrac{1}{\sqrt{3}}$ なら $\theta = 150^\circ$ が唯一の解です。

📐 三角方程式の解法まとめ($0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$)

$\sin\theta = k$($0 \leq k \leq 1$):$y = k$ と半円の交点 → $0 < k < 1$ なら解は2つ($\theta$ と $180^\circ - \theta$)

$\cos\theta = k$($-1 \leq k \leq 1$):$x = k$ と半円の交点 → 解は1つ

$\tan\theta = k$($k$ は任意の実数):点 $T(1, k)$ と原点を結ぶ直線と半円の交点 → 解は1つ

※ $\sin$ は $y$ 座標、$\cos$ は $x$ 座標、$\tan$ は直線 $x = 1$ を利用。この3つの対応をしっかり覚えましょう。
⚠️ 落とし穴:$\sin\theta = k$ の解が2つあることを忘れる

✕ 誤:$\sin\theta = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ → $\theta = 60^\circ$(1つだけ)

○ 正:$\sin\theta = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ → $\theta = 60^\circ, \, 120^\circ$(2つ)

$\sin$ の方程式では、$0 < k < 1$ のとき必ず2つの解があります。 「$\sin 60^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$」を思い出した後、$180^\circ - 60^\circ = 120^\circ$ も解であることを忘れないでください。 $\cos$ や $\tan$ が解1つなのに対し、$\sin$ だけは2つ ── この違いは頻出の落とし穴です。

⚠️ 落とし穴:$\tan 90^\circ$ は定義されない

✕ 誤:$\tan\theta \geq \sqrt{3}$ の解を $60^\circ \leq \theta \leq 90^\circ$ とする

○ 正:$\tan 90^\circ$ は定義されないので、$60^\circ \leq \theta < 90^\circ$

$\theta = 90^\circ$ では直線 $OP$ が $y$ 軸と一致し、直線 $x = 1$ と交わらないため、$\tan 90^\circ$ は存在しません。 $\tan$ を含む問題では、$\theta = 90^\circ$ が解に含まれないことを常に確認しましょう。

🔬 深掘り:なぜ $0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ に限るのか

数学Iでは $\theta$ の範囲を $0^\circ$ から $180^\circ$ に限定しています。 これは三角比が「三角形の角」から出発した概念だからです(三角形の内角は $0^\circ$ より大きく $180^\circ$ より小さい)。

数学IIでは $\theta$ を任意の実数に拡張する三角関数を学びます。 そこでは単位円の上半分だけでなく円全体を使い、$\sin\theta = \dfrac{1}{2}$ の解は $\theta = 30^\circ + 360^\circ n$ や $\theta = 150^\circ + 360^\circ n$($n$ は整数)と無限に存在します。 今学んでいる単位円の考え方は、そのまま三角関数に受け継がれます。

2三角比の2次方程式 ─ $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ を利用した置き換え

Section 1 では $\sin\theta = k$ のような単純な方程式を扱いました。 では $2\cos^2\theta - 5\sin\theta + 1 = 0$ のように、$\sin$ と $\cos$ が混在した方程式はどう解けばよいでしょうか?

鍵になるのは、$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ という恒等式です。 この式を使えば $\cos^2\theta = 1 - \sin^2\theta$(またはその逆)と書き換えられるので、 式を1種類の三角比だけで表すことができます。

💡 ここが本質:「$\sin$ と $\cos$ の混在」は $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ で解消する

$\sin$ と $\cos$ が混ざった式を見たら、$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ を使って1種類に統一します。

統一の方針:式の中で「1次の項」がある方に合わせるのがコツです。

・$\sin\theta$ の1次の項がある → $\cos^2\theta = 1 - \sin^2\theta$ で $\sin\theta$ に統一

・$\cos\theta$ の1次の項がある → $\sin^2\theta = 1 - \cos^2\theta$ で $\cos\theta$ に統一

統一したら $\sin\theta = t$(または $\cos\theta = t$)とおき、$t$ の2次方程式に帰着させます。

解法の手順

$2\cos^2\theta - 5\sin\theta + 1 = 0$($0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$)を例に、手順を見ていきましょう。

▷ 解法のステップ

Step 1:1種類の三角比に統一。1次の項が $\sin\theta$ なので、$\cos^2\theta = 1 - \sin^2\theta$ を代入。

$$2(1 - \sin^2\theta) - 5\sin\theta + 1 = 0$$

$$-2\sin^2\theta - 5\sin\theta + 3 = 0$$

$$2\sin^2\theta + 5\sin\theta - 3 = 0$$

Step 2:$\sin\theta = t$ とおき、$t$ の値の範囲を確認。 $0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき $0 \leq \sin\theta \leq 1$ なので $0 \leq t \leq 1$。

Step 3:$t$ の2次方程式を解く。

$$2t^2 + 5t - 3 = 0$$

$$(t + 3)(2t - 1) = 0$$

$$t = -3, \quad t = \frac{1}{2}$$

Step 4:$0 \leq t \leq 1$ を満たすのは $t = \dfrac{1}{2}$ のみ。$t = -3$ は不適。

Step 5:$\sin\theta = \dfrac{1}{2}$ を単位円で解く。

結論:$\theta = 30^\circ, \, 150^\circ$

⚠️ 落とし穴:置き換えた文字 $t$ の値の範囲を忘れる

$\sin\theta = t$ とおいたとき、$t$ の2次方程式を解いて $t = -3$ や $t = 2$ が出ることがあります。

✕ 誤:$t = -3$ を解として $\sin\theta = -3$ を解こうとする($\sin$ は $-1$ 以上 $1$ 以下なので解なし)

○ 正:$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ では $0 \leq \sin\theta \leq 1$、$-1 \leq \cos\theta \leq 1$ なので、 この範囲に入らない $t$ の値はすべて不適として除外する

2-4で学んだ「おき換えたら新変数の定義域を確認」と同じ原理です。三角比にも値の範囲がある ── これを忘れると誤答になります。

$\sin\theta \cdot \tan\theta$ 型の方程式

$\sin\theta \cdot \tan\theta = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ のように $\tan$ が含まれる場合は、 $\tan\theta = \dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}$ を代入して $\sin\theta$ と $\cos\theta$ だけの式にします。 さらに $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ で1種類に統一するのが基本方針です。

いずれの場合も、手順の本質は同じです: 「複数の三角比 → $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ で1種類に統一 → $t$ の2次方程式に帰着 → $t$ の範囲をチェック」

3三角比を含む不等式 ─ 単位円上の「範囲」を読む

三角方程式が「座標が特定の値になる点」を探す作業だったのに対し、 三角不等式は座標がある範囲にある点を探す作業です。 考え方は方程式とまったく同じ ── 違うのは「点」が「範囲」に変わるだけです。

💡 ここが本質:不等式は「等号の解を求めてから、範囲を読む」

三角不等式を解く手順は、2次不等式と同じ発想です。

Step 1:不等号を等号に置き換えた方程式を解く(境界を求める)

Step 2:単位円の図をかいて、不等式を満たす $\theta$ の範囲を読み取る

$\sin$ は $y$ 座標の大小、$\cos$ は $x$ 座標の大小、$\tan$ は直線 $x = 1$ 上の点の $y$ 座標の大小で判断します。

$\sin\theta$ の不等式

$\sin\theta \geq \dfrac{1}{\sqrt{2}}$($0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$)を解きましょう。

まず等号:$\sin\theta = \dfrac{1}{\sqrt{2}}$ → $\theta = 45^\circ, \, 135^\circ$。 $\sin\theta$ は $y$ 座標なので、$y \geq \dfrac{1}{\sqrt{2}}$ となる半円上の範囲を探します。 直線 $y = \dfrac{1}{\sqrt{2}}$ より上側(これを含む)の半円上の部分が $45^\circ$ から $135^\circ$ の弧にあたります。 したがって、解は $45^\circ \leq \theta \leq 135^\circ$ です。

$\cos\theta$ の不等式

$\cos\theta < -\dfrac{1}{2}$($0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$)を解きましょう。

等号:$\cos\theta = -\dfrac{1}{2}$ → $\theta = 120^\circ$。 $\cos\theta$ は $x$ 座標なので、$x < -\dfrac{1}{2}$ となる半円上の範囲を探します。 直線 $x = -\dfrac{1}{2}$ より左側の部分は $120^\circ$ から $180^\circ$ の弧です。 したがって、解は $120^\circ < \theta \leq 180^\circ$ です。

$\tan\theta$ の不等式

$\tan\theta$ の不等式は少し注意が必要です。 $\tan\theta < 1$($0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$)を解きましょう。

等号:$\tan\theta = 1$ → $\theta = 45^\circ$。 $\tan\theta$ は直線 $OP$ の傾きなので、傾きが $1$ より小さくなる範囲を探します。 ここで $\theta = 90^\circ$ では $\tan$ が定義されないため、$90^\circ$ の前後で分けて考えます。

$0^\circ \leq \theta < 45^\circ$ では傾きが $0$ 以上 $1$ 未満、 $90^\circ < \theta \leq 180^\circ$ では傾きが負($1$ より小さい)。 したがって、解は $0^\circ \leq \theta < 45^\circ, \, 90^\circ < \theta \leq 180^\circ$ です。

⚠️ 落とし穴:$\tan$ の不等式で解が2つの区間に分かれることを見落とす

✕ 誤:$\tan\theta < 1$ → $0^\circ \leq \theta < 45^\circ$(片方だけ)

○ 正:$\tan\theta < 1$ → $0^\circ \leq \theta < 45^\circ$ および $90^\circ < \theta \leq 180^\circ$

$\tan\theta$ は $\theta = 90^\circ$ で定義されず、その前後で正から負に「ジャンプ」します。 $90^\circ < \theta \leq 180^\circ$ では $\tan\theta \leq 0 < 1$ なので常に不等式を満たします。 $90^\circ$ をまたぐ範囲を忘れないことが最大の注意点です。

三角比の2次不等式

$2\sin^2\theta + 3\sin\theta - 2 \leq 0$($0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$)のように、 三角比の2乗を含む不等式は、Section 2と同じ手法で1種類に統一し、$t$ の2次不等式に帰着させます。

$\sin\theta = t$ とおくと $2t^2 + 3t - 2 \leq 0$、$(2t - 1)(t + 2) \leq 0$ より $-2 \leq t \leq \dfrac{1}{2}$。 $0 \leq t \leq 1$ との共通範囲は $0 \leq t \leq \dfrac{1}{2}$、すなわち $0 \leq \sin\theta \leq \dfrac{1}{2}$。 したがって $0^\circ \leq \theta \leq 30^\circ, \, 150^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ が解です。

🔬 深掘り:三角不等式と「単位円上の弧」

三角方程式の解が「点」であるのに対し、三角不等式の解は「弧」に対応します。 $\sin\theta \geq \dfrac{1}{2}$ の解 $30^\circ \leq \theta \leq 150^\circ$ は、 単位円の上半分で直線 $y = \dfrac{1}{2}$ より上にある弧です。

大学数学のフーリエ解析では、三角関数の不等式的な性質が信号処理や振動解析で重要な役割を果たします。 「単位円上のどの範囲か」という幾何的な見方は、そうした応用の基盤になっています。

4三角比の最大・最小 ─ 2次関数への帰着

「$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、$y = \sin^2\theta + \cos\theta$ の最大値と最小値を求めよ。」 ── このタイプの問題は、2-2で学んだ2次関数の最大・最小にそのまま帰着できます。

💡 ここが本質:三角比の最大・最小 = 2次関数の最大・最小問題

$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ で1種類に統一し、$\cos\theta = t$(または $\sin\theta = t$)とおけば、 $y$ は $t$ の2次関数になります。

あとは $t$ の定義域($\theta$ の範囲から決まる $t$ の値の範囲)を求めて、 2-2で学んだ「頂点と端点の比較」で最大・最小を求めるだけです。

三角比の最大・最小問題は、新しい手法ではなく、2次関数の問題の「着せ替え」にすぎません。

具体例で手順を確認する

$y = \sin^2\theta + \cos\theta$($0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$)の最大値と最小値を求めましょう。

▷ 解法のステップ

Step 1:$\sin^2\theta = 1 - \cos^2\theta$ を代入して $\cos\theta$ に統一。

$$y = (1 - \cos^2\theta) + \cos\theta = -\cos^2\theta + \cos\theta + 1$$

Step 2:$\cos\theta = t$ とおき、$t$ の定義域を求める。

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき $-1 \leq \cos\theta \leq 1$ なので $-1 \leq t \leq 1$。

Step 3:$t$ の2次関数として整理(平方完成)。

$$y = -t^2 + t + 1 = -\left(t - \frac{1}{2}\right)^2 + \frac{5}{4}$$

Step 4:$-1 \leq t \leq 1$ で最大値・最小値を求める。

$a = -1 < 0$(上に凸)なので、頂点 $t = \dfrac{1}{2}$ で最大値。 軸 $t = \dfrac{1}{2}$ は定義域内。軸から遠い端は $t = -1$。

$t = \dfrac{1}{2}$:$y = \dfrac{5}{4}$(最大値)

$t = -1$:$y = -1 - 1 + 1 = -1$(最小値)

Step 5:$\theta$ に戻す。

$\cos\theta = \dfrac{1}{2}$ → $\theta = 60^\circ$

$\cos\theta = -1$ → $\theta = 180^\circ$

結論:$\theta = 60^\circ$ のとき最大値 $\dfrac{5}{4}$、$\theta = 180^\circ$ のとき最小値 $-1$

⚠️ 落とし穴:$\theta$ の範囲が制限されると $t$ の範囲も変わる

$60^\circ \leq \theta \leq 150^\circ$ のとき $\cos\theta = t$ の範囲はどうなるでしょうか?

✕ 誤:「$\cos$ の範囲は常に $-1 \leq t \leq 1$」

○ 正:$\cos 60^\circ = \dfrac{1}{2}$、$\cos 150^\circ = -\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ なので $-\dfrac{\sqrt{3}}{2} \leq t \leq \dfrac{1}{2}$

$\cos\theta$ は $0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ で単調減少なので、 $\theta$ の範囲を $\cos$ に変換すると不等号の向きが逆転します。 $\theta$ の左端 $60^\circ$ が $t$ の右端 $\dfrac{1}{2}$、$\theta$ の右端 $150^\circ$ が $t$ の左端 $-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ になります。

$\tan$ を含む最大・最小

$y = 2\tan^2\theta - 4\tan\theta + 3$($0^\circ < \theta < 90^\circ$)のように $\tan$ だけの式なら、 $\tan\theta = t$ とおいて同様に処理します。$0^\circ < \theta < 90^\circ$ のとき $t > 0$ なので、 $t > 0$ の範囲で2次関数の最大・最小を考えます。 ただし $t$ に上限がない($\theta \to 90^\circ$ で $t \to \infty$)ことに注意してください。

5この章を俯瞰する

三角比を含む方程式・不等式・最大最小は、すべて2つの道具で統一的に解けます。 1つ目は単位円(方程式と不等式の幾何的解法)、2つ目は$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$(2次問題への帰着)です。

パターン分類表

パターン問題の特徴解法のポイント
A:基本方程式$\sin\theta = k$ 等単位円の図で座標を読む。$\sin$ は解2つに注意
B:2次方程式$\sin^2, \cos^2$ を含む$\sin^2 + \cos^2 = 1$ で統一 → $t$ の2次方程式
C:基本不等式$\sin\theta > k$ 等等号で境界を求め、単位円で範囲を読む
D:2次不等式$\sin^2, \cos^2$ を含む$t$ の2次不等式に帰着。$t$ の範囲を忘れない
E:最大・最小三角比を含む関数$t$ の2次関数の最大・最小(2-2の手法)
F:解の個数パラメータを含む方程式$t$ に置き換え後、$y = f(t)$ と $y = k$ の共有点

つながりマップ

  • ← 4-1 三角比の定義と性質:$\sin, \cos, \tan$ の定義と相互関係 $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ がすべての出発点。この記事の内容は4-1の直接的な応用。
  • ← 2-2 2次関数の最大・最小:Section 4の「三角比の最大・最小」は、2-2で学んだ手法そのもの。「おき換えたら新変数の定義域を確認」という教訓がここでも活きる。
  • ← 2-4 2次不等式:三角比の2次不等式(Section 3後半)は、$t$ の2次不等式に帰着する。不等式を解く手法は2-4と同一。
  • → 4-2 正弦定理と余弦定理:三角方程式を解く力は、正弦定理・余弦定理で角を求める問題に直結する。
  • → 数学II 三角関数:$\theta$ の範囲を全実数に拡張。$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ で培った単位円の見方がそのまま活きる。

📋まとめ

  • 三角方程式は単位円上の座標を読み取る作業。$\sin$ は $y$ 座標、$\cos$ は $x$ 座標、$\tan$ は直線 $x = 1$ で考える
  • $\sin\theta = k$($0 < k < 1$)の解は$\theta$ と $180^\circ - \theta$ の2つ。$\cos$, $\tan$ は解1つ
  • $\sin$ と $\cos$ が混在したら$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ で1種類に統一し、$t$ の2次方程式に帰着
  • 置き換え後は$t$ の値の範囲を必ず確認($0 \leq \sin\theta \leq 1$, $-1 \leq \cos\theta \leq 1$)
  • 三角不等式は等号で境界を求めてから、単位円で範囲を読む。$\tan$ の不等式は $90^\circ$ をまたぐ区間に注意
  • 三角比の最大・最小は2次関数の最大・最小問題に帰着。$\theta$ の範囲から $t$ の定義域を正しく求めることが鍵

確認テスト

Q1. $0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、$\sin\theta = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ を満たす $\theta$ をすべて求めてください。

▶ クリックして解答を表示$\sin 60^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ なので $\theta = 60^\circ$。また $180^\circ - 60^\circ = 120^\circ$ も解。よって $\theta = 60^\circ, \, 120^\circ$。

Q2. $0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、$\cos\theta = -\dfrac{1}{\sqrt{2}}$ を満たす $\theta$ を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$\cos 45^\circ = \dfrac{1}{\sqrt{2}}$ であり、$\cos(180^\circ - 45^\circ) = -\cos 45^\circ = -\dfrac{1}{\sqrt{2}}$。よって $\theta = 135^\circ$。

Q3. $0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、$\sin\theta > \dfrac{1}{2}$ の解を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$\sin\theta = \dfrac{1}{2}$ の解は $\theta = 30^\circ, \, 150^\circ$。単位円上で $y > \dfrac{1}{2}$ となる範囲は $30^\circ < \theta < 150^\circ$。

Q4. $\sin$ と $\cos$ が混在した方程式を解くとき、最初にすべきことは何ですか?

▶ クリックして解答を表示$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ を使って、1種類の三角比($\sin$ または $\cos$)だけの式に統一する。1次の項がある方に合わせるのがコツ。

Q5. $\cos\theta = t$ とおいたとき、$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ での $t$ の値の範囲は? また $60^\circ \leq \theta \leq 120^\circ$ では?

▶ クリックして解答を表示$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき $-1 \leq t \leq 1$。$60^\circ \leq \theta \leq 120^\circ$ のとき、$\cos 60^\circ = \dfrac{1}{2}$、$\cos 120^\circ = -\dfrac{1}{2}$ なので $-\dfrac{1}{2} \leq t \leq \dfrac{1}{2}$。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

4-5-1 A 基礎 三角方程式 単位円

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、次の方程式を満たす $\theta$ を求めよ。

(1) $2\sin\theta - \sqrt{3} = 0$

(2) $\sqrt{2}\cos\theta + 1 = 0$

(3) $\tan\theta + \sqrt{3} = 0$

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\theta = 60^\circ, \, 120^\circ$  (2) $\theta = 135^\circ$  (3) $\theta = 150^\circ$

解説

(1) $2\sin\theta - \sqrt{3} = 0$ より $\sin\theta = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$。 単位円上で $y$ 座標が $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ となる点を探すと、$\theta = 60^\circ$ と $\theta = 180^\circ - 60^\circ = 120^\circ$。

(2) $\sqrt{2}\cos\theta + 1 = 0$ より $\cos\theta = -\dfrac{1}{\sqrt{2}}$。 単位円上で $x$ 座標が $-\dfrac{1}{\sqrt{2}}$ となる点を探すと、$\theta = 135^\circ$。

(3) $\tan\theta + \sqrt{3} = 0$ より $\tan\theta = -\sqrt{3}$。 直線 $x = 1$ 上で $y$ 座標が $-\sqrt{3}$ の点 $T(1, -\sqrt{3})$ と原点を結ぶ直線と半円の交点を求めると、$\theta = 150^\circ$。 ($\tan 60^\circ = \sqrt{3}$ なので $\tan(180^\circ - 60^\circ) = -\sqrt{3}$。)

4-5-2 A 基礎 三角不等式 単位円

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、次の不等式を満たす $\theta$ の値の範囲を求めよ。

(1) $\sin\theta \geq \dfrac{\sqrt{2}}{2}$

(2) $2\cos\theta + 1 > 0$

(3) $\tan\theta > -1$

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $45^\circ \leq \theta \leq 135^\circ$

(2) $0^\circ \leq \theta < 120^\circ$

(3) $0^\circ \leq \theta < 90^\circ, \, 135^\circ < \theta \leq 180^\circ$

解説

(1) $\sin\theta = \dfrac{\sqrt{2}}{2} = \dfrac{1}{\sqrt{2}}$ → $\theta = 45^\circ, \, 135^\circ$。 $y \geq \dfrac{1}{\sqrt{2}}$ の範囲は $45^\circ \leq \theta \leq 135^\circ$。

(2) $\cos\theta > -\dfrac{1}{2}$。$\cos\theta = -\dfrac{1}{2}$ → $\theta = 120^\circ$。 $x > -\dfrac{1}{2}$ の範囲は $0^\circ \leq \theta < 120^\circ$。

(3) $\tan\theta = -1$ → $\theta = 135^\circ$。 $\tan$ の傾きが $-1$ より大きい範囲を考える。$0^\circ \leq \theta < 90^\circ$ では $\tan\theta \geq 0 > -1$ で常に成立。 $90^\circ < \theta \leq 180^\circ$ では $\tan\theta > -1$ となるのは $135^\circ < \theta \leq 180^\circ$。 合わせて $0^\circ \leq \theta < 90^\circ, \, 135^\circ < \theta \leq 180^\circ$。

B 標準レベル

4-5-3 B 標準 2次方程式 置き換え

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、次の方程式を解け。

$$2\sin^2\theta + 3\cos\theta = 0$$

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$\theta = 120^\circ$

解説

方針:$\sin^2\theta = 1 - \cos^2\theta$ を代入し、$\cos\theta$ だけの式に統一する。

$2(1 - \cos^2\theta) + 3\cos\theta = 0$

$2 - 2\cos^2\theta + 3\cos\theta = 0$

$2\cos^2\theta - 3\cos\theta - 2 = 0$

$\cos\theta = t$ とおくと $2t^2 - 3t - 2 = 0$。$(2t + 1)(t - 2) = 0$ より $t = -\dfrac{1}{2}, \, 2$。

$-1 \leq t \leq 1$ より $t = 2$ は不適。$t = -\dfrac{1}{2}$ のみが有効。

$\cos\theta = -\dfrac{1}{2}$ → $\theta = 120^\circ$。

採点ポイント
  • $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ を用いて統一(2点)
  • $t$ の2次方程式を正しく解く(3点)
  • $t$ の範囲で不適な解を除外(2点)
  • $\theta$ の値を正しく求める(3点)
4-5-4 B 標準 最大・最小 2次関数

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、関数 $y = -3\sin^2\theta + 3\cos\theta + 3$ の最大値と最小値を求めよ。 また、そのときの $\theta$ の値を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$\theta = 60^\circ$ のとき最大値 $\dfrac{15}{4}$、$\theta = 180^\circ$ のとき最小値 $-3$

解説

方針:$\sin^2\theta = 1 - \cos^2\theta$ で $\cos\theta$ に統一し、$t$ の2次関数の最大・最小を求める。

$y = -3(1 - \cos^2\theta) + 3\cos\theta + 3 = 3\cos^2\theta + 3\cos\theta$

$\cos\theta = t$ とおくと、$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ より $-1 \leq t \leq 1$。

$y = 3t^2 + 3t = 3\left(t + \dfrac{1}{2}\right)^2 - \dfrac{3}{4}$

$a = 3 > 0$(下に凸)。頂点 $t = -\dfrac{1}{2}$ は定義域 $[-1, 1]$ 内。

最小値:頂点 $t = -\dfrac{1}{2}$ で $y = -\dfrac{3}{4}$。

最大値:軸 $t = -\dfrac{1}{2}$ から遠い端は $t = 1$。$y = 3 + 3 = 6$。

⚠️ 計算を再確認。$y = 3t^2 + 3t$ の頂点は $t = -\dfrac{1}{2}$ で $y = 3 \cdot \dfrac{1}{4} - \dfrac{3}{2} = \dfrac{3}{4} - \dfrac{3}{2} = -\dfrac{3}{4}$。 $t = 1$ で $y = 6$、$t = -1$ で $y = 3 - 3 = 0$。

$t = 1$ → $\cos\theta = 1$ → $\theta = 0^\circ$ で $y = 6$。

$t = -\dfrac{1}{2}$ → $\cos\theta = -\dfrac{1}{2}$ → $\theta = 120^\circ$ で $y = -\dfrac{3}{4}$。

結論:$\theta = 0^\circ$ のとき最大値 $6$、$\theta = 120^\circ$ のとき最小値 $-\dfrac{3}{4}$

採点ポイント
  • $\cos\theta$ に統一する変形(2点)
  • $t$ の定義域を正しく設定(2点)
  • 平方完成と最大・最小の判定(3点)
  • $\theta$ の値に戻す(3点)

C 発展レベル

4-5-5 C 発展 解の個数 パラメータ 論述

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ とする。方程式

$$2\sin^2\theta - \sin\theta + k = 0$$

を満たす $\theta$ がちょうど2つであるような定数 $k$ の値の範囲を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$$-1 < k \leq 0 \quad \text{または} \quad k = \frac{1}{8}$$

解説

方針:$\sin\theta = t$ とおいて $t$ の方程式に帰着し、$t$ の値と $\theta$ の個数の対応を考える。

$\sin\theta = t$ とおくと $2t^2 - t + k = 0$ ...(*)。$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき $0 \leq t \leq 1$。

ここで、$t$ と $\theta$ の対応に注意:

・$0 < t < 1$ のとき:$\sin\theta = t$ を満たす $\theta$ は2つ

・$t = 0$ のとき:$\theta = 0^\circ, \, 180^\circ$ で2つ

・$t = 1$ のとき:$\theta = 90^\circ$ で1つ

(*)を $k = -2t^2 + t$ と変形(定数分離)。$f(t) = -2t^2 + t$ とおくと、 $\theta$ がちょうど2つとなるのは次のいずれか:

・$y = k$ と $y = f(t)$ が $0 < t < 1$ で交点をちょうど1つもつ

・$y = k$ と $y = f(t)$ が $t = 0$ で交わる($\theta = 0^\circ, 180^\circ$ の2つ)

$f(t) = -2\left(t - \dfrac{1}{4}\right)^2 + \dfrac{1}{8}$。頂点 $\left(\dfrac{1}{4}, \, \dfrac{1}{8}\right)$、$f(0) = 0$、$f(1) = -1$。

グラフから、$-1 < k < 0$ のとき $0 < t < 1$ に解が1つ($\theta$ は2つ)。 $k = 0$ のとき $t = 0$ が解($\theta = 0^\circ, 180^\circ$ の2つ)と $t = \dfrac{1}{2}$($\theta$ は2つで計4つ)。 ⚠️ $k = 0$ のとき $2t^2 - t = 0$、$t(2t-1) = 0$ より $t = 0, \dfrac{1}{2}$。 $t = 0$ で $\theta = 0^\circ, 180^\circ$(2つ)、$t = \dfrac{1}{2}$ で $\theta = 30^\circ, 150^\circ$(2つ)。合計4つ。これは条件を満たさない。

再整理:$-1 < k < 0$ のとき $0 < t < 1$ に解1つ → $\theta$ 2つ。✓

$k = \dfrac{1}{8}$ のとき $t = \dfrac{1}{4}$(重解)→ $0 < t < 1$ で解1つ → $\theta$ 2つ。✓

$k = -1$ のとき $t = 1$ が解 → $\theta = 90^\circ$(1つ)のみ。不適。

よって $-1 < k \leq 0$ または $k = \dfrac{1}{8}$。ただし $k = 0$ は $t = 0$ と $t = \dfrac{1}{2}$ の2解で $\theta$ が4つになるため除外。

したがって $-1 < k < 0$ または $k = \dfrac{1}{8}$。

採点ポイント
  • $\sin\theta = t$ とおいて $t$ の方程式に帰着(2点)
  • $t$ の値と $\theta$ の個数の対応を正しく把握(3点)
  • 定数分離で $f(t)$ のグラフを正しくかく(3点)
  • $k$ の範囲を正しく求める(2点)
4-5-6 C 発展 2次不等式 場合分け

$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、次の不等式を解け。

$$4\cos^2\theta - 4\sin\theta - 1 < 0$$

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$30^\circ < \theta < 150^\circ$

解説

方針:$\cos^2\theta = 1 - \sin^2\theta$ で $\sin\theta$ に統一し、$t$ の2次不等式に帰着。

$4(1 - \sin^2\theta) - 4\sin\theta - 1 < 0$

$-4\sin^2\theta - 4\sin\theta + 3 < 0$

$4\sin^2\theta + 4\sin\theta - 3 > 0$

$\sin\theta = t$ とおくと $4t^2 + 4t - 3 > 0$。$(2t + 3)(2t - 1) > 0$。

$t < -\dfrac{3}{2}$ または $t > \dfrac{1}{2}$。

$0 \leq t \leq 1$ との共通範囲は $\dfrac{1}{2} < t \leq 1$、すなわち $\sin\theta > \dfrac{1}{2}$。

$\sin\theta = \dfrac{1}{2}$ → $\theta = 30^\circ, \, 150^\circ$。$\sin\theta > \dfrac{1}{2}$ となる範囲は $30^\circ < \theta < 150^\circ$。

採点ポイント
  • $\sin\theta$ に統一する変形(2点)
  • $t$ の2次不等式を正しく解く(3点)
  • $t$ の範囲との共通範囲を求める(2点)
  • $\theta$ の範囲を正しく求める(3点)