正弦定理、余弦定理、三角比の相互関係、面積公式 ── 第4章で学んだ道具はそろいました。
総合問題では、これらの道具を「どの順番で」「なぜ使うか」を判断する力が問われます。
第4章の前半で、三角比を含む方程式・不等式の基本を学びました。 総合問題では、これが2次関数や因数分解と融合して出題されます。 たとえば $\sin\theta$ や $\cos\theta$ を1つの文字 $t$ とおき換えることで、 三角比の問題が2次方程式や2次関数の最大・最小問題に帰着するのです。
なぜこの融合が起こるのでしょうか。 それは $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ という相互関係があるため、 $\sin\theta$ と $\cos\theta$ のうち一方を消去すれば、 もう一方だけの式(つまり1変数の式)になるからです。 1変数の式になれば、第2章で学んだ2次関数の道具がそのまま使えます。
$t = \sin\theta$(または $t = \cos\theta$)とおくと、三角比の問題は $t$ の多項式の問題に変わります。 このとき絶対に忘れてはならないのが$t$ の定義域です。
$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき:$-1 \leq \cos\theta \leq 1$、$0 \leq \sin\theta \leq 1$
2-4「おき換え」で学んだ「新変数の定義域を必ず求める」というルールが、ここでも同じように効いてきます。 三角比と2次関数は、おき換えという橋でつながっているのです。
$\sin\theta + \cos\theta = t$ とおくと、両辺を2乗して
$$\sin^2\theta + 2\sin\theta\cos\theta + \cos^2\theta = t^2$$$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ より $1 + 2\sin\theta\cos\theta = t^2$。 したがって
$$\sin\theta\cos\theta = \frac{t^2 - 1}{2}$$このように $\sin\theta + \cos\theta$ の値が決まれば $\sin\theta\cos\theta$ の値も自動的に決まります。 つまり $\sin\theta + \cos\theta$ と $\sin\theta\cos\theta$ の対称式は、 すべて $t$ の式に書き換えられるのです。
$t = \sin\theta + \cos\theta$ とおくと
$$\sin\theta\cos\theta = \frac{t^2 - 1}{2}$$
$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、$t$ の範囲は $-1 \leq t \leq \sqrt{2}$
✕ 誤:$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ で $t = \sin\theta$ とおく。「$\sin$ の値域は $-1 \leq t \leq 1$」
○ 正:$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ の範囲では $\sin\theta \geq 0$ なので $0 \leq t \leq 1$。 $t = 0$ は $\theta = 0^\circ, 180^\circ$、$t = 1$ は $\theta = 90^\circ$ に対応します。
$\sin\theta$ が負になるのは $180^\circ < \theta < 360^\circ$ の範囲です(数学IIで扱います)。 定義域が変われば値域も変わる── これは2次関数の最大・最小で学んだ原理と同じです。
入試では「$x$ の2次方程式 $x^2 + 2x\cos\theta - \cos 2\theta = 0$ が実数解をもつ条件」のように、 係数に三角比を含む2次方程式も頻出です。
このタイプの問題では、まず $\theta$ を定数(パラメータ)とみなして $x$ の2次方程式として解析します。 実数解の条件は判別式 $D \geq 0$ です。 $D$ は $\theta$ の式になるので、今度は $\theta$ の三角比の不等式を解くことになります。
✕ 誤:$x^2 + 2x\cos\theta - \cos 2\theta = 0$ を $\theta$ の方程式として解こうとする
○ 正:この方程式は$x$ についての2次方程式。$\theta$ はパラメータ(条件を定める定数)。 まず $x$ について解き、その後 $\theta$ の条件を調べます。
「何を求めるか」を問題文で確認し、主役の変数(未知数)とパラメータを区別することが第一歩です。
$\cos 2\theta = 2\cos^2\theta - 1$ のように、$\cos n\theta$ は $\cos\theta$ の $n$ 次多項式で表せます。 この多項式をチェビシェフ多項式と呼びます。
$T_1(x) = x$、$T_2(x) = 2x^2 - 1$、$T_3(x) = 4x^3 - 3x$、...のように定義され、 $\cos n\theta = T_n(\cos\theta)$ が成り立ちます。
高校で学ぶ「2倍角の公式」は、チェビシェフ多項式の $n = 2$ の場合にすぎません。 三角比と多項式は、想像以上に深くつながっています。
空間図形の問題に三角比を使うとき、最も大切なのは 「立体の中に適切な三角形を見つけ出す」ことです。 立体そのものに正弦定理や余弦定理を適用することはできません。 立体を構成する平面上の三角形を取り出し、 その三角形に対して定理を使うのです。
空間図形の計量(長さ・角度・面積・体積)は、次の手順で解きます。
Step 1:求めたい量(長さ、角度など)を含む三角形を特定する
Step 2:その三角形の辺や角に関する情報を集める(既知の辺、角、直角の有無)
Step 3:正弦定理・余弦定理・三角比の定義のうち、適切なものを選んで計算する
この「三角形の特定」こそが空間問題の核心であり、最も練習が必要な部分です。
1辺の長さが $a$ の正四面体(4つの面がすべて合同な正三角形である四面体)は、 入試で最も頻繁に登場する空間図形です。 正四面体のさまざまな量を三角比を使って求めてみましょう。
正四面体 $\mathrm{OABC}$ で、$\triangle\mathrm{ABC}$ の重心を $\mathrm{G}$ とします。 正四面体の対称性から、頂点 $\mathrm{O}$ から底面 $\mathrm{ABC}$ に下ろした垂線の足は重心 $\mathrm{G}$ に一致します。
Step 1:底面 $\triangle\mathrm{ABC}$ の重心 $\mathrm{G}$ の位置を求めます。 辺 $\mathrm{BC}$ の中点を $\mathrm{M}$ とすると、$\mathrm{AM}$ は正三角形の中線で $\mathrm{AM} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}\,a$。 重心は中線を $2:1$ に内分するので $\mathrm{AG} = \dfrac{2}{3} \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2}\,a = \dfrac{\sqrt{3}}{3}\,a$。
Step 2:直角三角形 $\mathrm{OGA}$ で三平方の定理を使います。 $\mathrm{OG} \perp$ 底面なので $\angle\mathrm{OGA} = 90^\circ$。
$$\mathrm{OG}^2 = \mathrm{OA}^2 - \mathrm{AG}^2 = a^2 - \frac{a^2}{3} = \frac{2a^2}{3}$$
$$\therefore\quad \mathrm{OG} = \sqrt{\frac{2}{3}}\,a = \frac{\sqrt{6}}{3}\,a$$
結論:1辺 $a$ の正四面体の高さは $\dfrac{\sqrt{6}}{3}\,a$。
ここでのポイントは、3次元の問題を解くために直角三角形 $\mathrm{OGA}$ という 2次元の図形を取り出したことです。 垂線 $\mathrm{OG}$ と底面上の線分 $\mathrm{AG}$ が作る直角三角形 ── これが空間問題の「鍵となる三角形」です。
正四面体 $\mathrm{OABC}$ で「辺 $\mathrm{OA}$ と底面 $\mathrm{ABC}$ のなす角」を求める問題を考えます。
✕ 誤:$\triangle\mathrm{OAB}$ 内の $\angle\mathrm{OAB}$ を求める(これは $60^\circ$)
○ 正:辺と平面のなす角は、辺 $\mathrm{OA}$ と その平面への正射影 $\mathrm{GA}$ のなす角 $\angle\mathrm{OAG}$ です。 $\cos\angle\mathrm{OAG} = \dfrac{\mathrm{AG}}{\mathrm{OA}} = \dfrac{\frac{\sqrt{3}}{3}\,a}{a} = \dfrac{1}{\sqrt{3}}$ より $\angle\mathrm{OAG} = \arccos\dfrac{1}{\sqrt{3}} \approx 54.7^\circ$
「なす角」は必ず正射影を使って定義することを忘れないでください。
| 空間図形 | 鍵となる三角形の見つけ方 | よく問われる量 |
|---|---|---|
| 正四面体 | 頂点から底面の重心に垂線を下ろし、直角三角形を作る | 高さ、体積、内接球・外接球の半径 |
| 正三角柱 | 対角線と底面の辺で直角三角形を作る | 対角線の長さ、対角線と底面のなす角 |
| 直方体 | 空間対角線と面対角線で直角三角形を作る | 空間対角線の長さ、対角線どうしのなす角 |
| 正四角錐 | 頂点から底面の中心に垂線を下ろし、側面の二等辺三角形に注目 | 側面の面積、頂角 |
| 球に内接/外接する立体 | 球の中心を含む断面で考える | 球の半径と立体の辺の関係 |
空間図形で三角比を使うための最も強力な手法は「垂線を下ろす」ことです。
頂点から底面に垂線を下ろすと、必ず直角三角形が生まれます。 直角三角形では三角比の定義がそのまま使えるので、角度や長さが計算しやすくなります。
空間問題で困ったら、まず「どこに垂線を下ろせるか」を考えてください。 垂線は、3次元を2次元に落とすための最も基本的な道具です。
ここまで学んだ三角比の定理(正弦定理・余弦定理)は、すべて平面上の三角形に対するものでした。 では、球面上に描かれた「三角形」にも同じような公式はあるのでしょうか。
答えは「ある」です。球面三角法では、球面上の大円の弧で囲まれた三角形を扱います。 球面上の余弦定理は $\cos c = \cos a\cos b + \sin a\sin b\cos C$ という形になります ($a, b, c$ は辺の対する中心角)。平面の余弦定理 $c^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C$ と比べると、 辺の長さの代わりにコサインやサインが現れるのが特徴です。
球面三角法は航海術や天文学で不可欠な道具でした。 地球上の2地点間の最短距離(大圏距離)を求めるのも球面三角法の応用です。 平面の三角比は、球面三角法の「球の半径が無限大の極限」と見ることができます。
三角比が歴史的に発展した動機は測量── 直接測れない距離や高さを計算で求めること ── でした。 入試の測量問題でも、この原点に立ち返ることが解法の出発点になります。
測量問題のポイントは、現実世界の状況を三角形に翻訳することです。 仰角・俯角・水平距離・標高差など、問題文に登場する情報を1つの三角形の中に整理し、 正弦定理・余弦定理・直角三角形の三角比のどれを使うかを判断します。
測量問題の解法は、次の3ステップに集約されます。
1. 図を描く:問題文の情報をもとに、三角形を含む図を正確に描く。 仰角・俯角は水平線からの角度であることに注意。
2. 既知情報を書き込む:わかっている辺の長さと角の大きさを図に記入する。
3. 定理を選ぶ:直角三角形があれば三角比の定義、 それ以外なら正弦定理・余弦定理を使う。
正弦定理は「1辺と2角」、余弦定理は「2辺と間の角」または「3辺」のときに有効です。
仰角は水平線から見上げる方向への角度、 俯角は水平線から見下ろす方向への角度です。 どちらも水平線から測ることがポイントです。
たとえば、木の根元から水平距離 $200\,\mathrm{m}$ の地点で、木の先端の仰角が $10^\circ$ だったとします。 目の高さを $1.6\,\mathrm{m}$ とすると、木の先端と観測者の目を結ぶ直線、水平線、木の幹で 直角三角形が作れます。 $\tan 10^\circ \approx 0.176$ より、目の高さから木の先端までの高さは $200 \times \tan 10^\circ \approx 35.3\,\mathrm{m}$。 よって木の高さは約 $35.3 + 1.6 = 36.9\,\mathrm{m}$ です。
✕ 誤:仰角 $10^\circ$ とは、地面に立った位置と木の先端を結ぶ線が地面となす角
○ 正:仰角は観測者の目の高さにおける水平線から測った角度。 したがって、直角三角形の「底辺」は地面ではなく、目の高さの水平線上にあります。
目の高さを無視すると、高さが $1.6\,\mathrm{m}$ ほどずれます。 入試では目の高さが明示されている場合は必ず加算してください。
直角三角形だけでは解けない測量問題もあります。 たとえば「山の頂上 $\mathrm{A}$ を2地点 $\mathrm{B}$, $\mathrm{C}$ から観測し、 $\mathrm{B}$ での仰角が $30^\circ$、$\mathrm{C}$ での仰角が $45^\circ$、 $\mathrm{BC} = 100\,\mathrm{m}$(同じ標高)」という問題です。
この場合、$\mathrm{A}$ から地面に垂線 $\mathrm{AH}$ を下ろし、 直角三角形 $\mathrm{ABH}$ と $\mathrm{ACH}$ を組み合わせて解きます。 垂線の足 $\mathrm{H}$ が $\mathrm{B}$, $\mathrm{C}$ を結ぶ直線上にあるかどうかで場合分けが必要になることもあり、 図を丁寧に描くことが不可欠です。
$\mathrm{B}$, $\mathrm{C}$ が同一直線上にないケース(空間的な配置)では、 $\triangle\mathrm{ABC}$ に正弦定理や余弦定理を適用します。 このとき必要な情報は、 $\mathrm{BC}$ の長さに加えて $\angle\mathrm{ABC}$、$\angle\mathrm{ACB}$ などの角度です。 仰角から三角形の内角を導き出すところが、測量問題の腕の見せどころです。
歴史的に、三角比が最も活躍した場面が三角測量です。 18世紀のフランスで「メートル」の定義を決めるために行われた子午線測量では、 パリからバルセロナまでの距離を三角測量で精密に計測しました。
三角測量の原理は簡単です。1本の基線(正確に測った直線の長さ)と、 その両端から目標物への角度を測れば、三角形が確定し、 正弦定理で目標物までの距離が計算できます。 角度の測定は距離の測定より精度を上げやすいため、 この方法で広大な地域の地図が作れたのです。
現代ではGPSに置き換わりましたが、GPSが受信できない環境 (トンネル工事や地下測量)では今でも三角測量の原理が使われています。
第4章の総合問題では、正弦定理・余弦定理・面積公式・相互関係が複合的に問われます。 ここでは、入試で頻出の融合パターンを体系的に整理し、 「どの定理をどの順番で使うか」の戦略を身につけましょう。
| パターン | 既知の情報 | 使う定理・公式 |
|---|---|---|
| P1:辺と角の混在 | 2辺と1角(間の角 or 対角) | 余弦定理で残りの辺 → 正弦定理で角 |
| P2:3辺既知 | 3辺の長さ | 余弦定理で角 → 面積公式 |
| P3:1辺と2角 | 1辺と2つの角 | 3つ目の角を求め → 正弦定理で辺 |
| P4:面積と辺 | 面積と2辺(間の角が未知) | $S = \frac{1}{2}ab\sin C$ で角 → 余弦定理で辺 |
| P5:外接円・内接円 | 辺・角の一部と外接円半径 $R$ | 正弦定理 $\frac{a}{\sin A} = 2R$ |
| P6:三角形の形状決定 | 辺や角の間の等式 | 正弦定理で辺に統一 or 余弦定理で変換 |
この2つの定理は「得意分野」が違います。
正弦定理が得意なこと:角と辺を「対」で結ぶ。$\dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{b}{\sin B} = 2R$
余弦定理が得意なこと:3つの辺と1つの角を結ぶ。$a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$
判断基準は明快です:
・角とその対辺のペアが関わるなら → 正弦定理
・辺だけ(3辺)、または2辺とその間の角が関わるなら → 余弦定理
「$a\cos B = b\cos A$ が成り立つとき、$\triangle\mathrm{ABC}$ はどのような三角形か」のように、 辺と角の関係式から三角形の形状を決定する問題は入試の定番です。
解法は大きく2つのアプローチがあります。
どちらのアプローチを選ぶかは、与式の形で決まります。 $\sin$ が含まれていれば正弦定理、$\cos$ が含まれていれば余弦定理が自然な選択です。
形状決定問題で $a^2 - b^2 = 0$ つまり $(a-b)(a+b) = 0$ が得られたとします。
✕ 誤:$a + b > 0$ だから $a = b$。答えは「$A = B$ の二等辺三角形」
○ 正:$a = b$ つまり $A = B$ は正しい。しかし元の等式が $a\cos A = a\cos B$ だった場合、 $a \neq 0$ で割れるので $\cos A = \cos B$。 $0^\circ < A, B < 180^\circ$ のとき $\cos$ が等しければ $A = B$ です。 追加条件(正三角形や直角三角形の可能性)がないかも確認しましょう。
因数分解したとき $a - b = 0$ 以外の因子も $0$ になり得ないか、丁寧に検討してください。
三角形の面積 $S = \dfrac{1}{2}ab\sin C$ で、$a + b$ が一定のとき $S$ の最大値を求める問題や、 $\cos\theta$ の2次式の最大・最小を求める問題は、 第2章の2次関数の知識と三角比を組み合わせた典型的な融合問題です。
たとえば、$\triangle\mathrm{ABC}$ で $b + c = 4$、$A = 60^\circ$ のとき面積の最大値を求めるには、 $S = \dfrac{1}{2}bc\sin 60^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{4}bc$ で、 相加平均・相乗平均の関係($bc \leq \left(\dfrac{b+c}{2}\right)^2 = 4$)を使います。 等号は $b = c = 2$ のとき成立し、$S$ の最大値は $\sqrt{3}$ です。
面積の最大・最小問題で、数学的に求めた解が三角形として成立するかの確認が必要です。
✕ 誤:$b + c = 4$ で $bc$ の最大値は $b = c = 2$ のとき。以上。
○ 正:$b = c = 2$、$A = 60^\circ$ のとき余弦定理で $a^2 = 4 + 4 - 2 \cdot 2 \cdot 2 \cdot \cos 60^\circ = 4$ より $a = 2$。 $b = c = a = 2$ で正三角形。三角形は確かに成立するので、この答えは正しい。
特に辺の長さに制約がある問題では、三角不等式 $|b - c| < a < b + c$ の確認を忘れないでください。
第4章「図形と計量」で学んだ内容を、鳥の目で俯瞰しましょう。 三角比の定義から始まり、正弦定理・余弦定理を経て、面積・体積の計算、 そして空間図形への応用まで、すべては「角度と長さを結ぶ」という一本の軸でつながっています。
| 記事 | 学んだこと | 核となるアイデア |
|---|---|---|
| 4-1 三角比の定義 | $\sin$, $\cos$, $\tan$ の定義 | 直角三角形の辺の比が角度だけで決まる |
| 4-2 相互関係 | $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ 等 | 3つの三角比は独立ではなく、1つから他が決まる |
| 4-3 鈍角への拡張 | 座標を使った三角比の定義 | $0^\circ$ から $180^\circ$ まで三角比を拡張 |
| 4-5 方程式・不等式 | 三角比を含む方程式・不等式 | 単位半円を使った視覚的解法 |
| 4-6 正弦定理 | $\dfrac{a}{\sin A} = 2R$ | 辺と角の「対」の関係 |
| 4-7 余弦定理 | $a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$ | 三平方の定理の一般化 |
| 4-9 面積公式 | $S = \frac{1}{2}ab\sin C$ | 三角比を使った面積の計算 |
| 4-12 空間図形 | 空間図形への三角比の応用 | 立体を切って三角形を取り出す |
| 4-13 総合問題 | すべての知識の統合 | 「どの道具を」「なぜ使うか」の判断力 |
三角比は「角度と長さを結ぶ」道具ですが、大学数学では回転という 幾何学的操作を記述する道具としても活躍します。
座標平面上の点 $(x, y)$ を原点中心に角 $\theta$ だけ回転させた点は $(x\cos\theta - y\sin\theta, \, x\sin\theta + y\cos\theta)$ です。 これは行列の形で
$$\begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta \\ \sin\theta & \cos\theta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$$
と書けます。この $2 \times 2$ の行列を回転行列と呼びます。 三角比の相互関係 $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ は、 回転行列が「長さを保つ変換(直交変換)」であることの表現です。
高校で学ぶ三角比は、大学の線形代数学で学ぶ直交変換の入口にあたります。
Q1. $0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、$t = \cos\theta$ のとりうる値の範囲を答えてください。
Q2. $\sin\theta + \cos\theta = \dfrac{1}{2}$ のとき、$\sin\theta\cos\theta$ の値を求めてください。
Q3. 空間図形の問題で三角比を使うとき、最初にすべきことは何ですか?
Q4. 「2辺とその間の角」がわかっているとき、残りの辺を求めるにはどの定理を使いますか?
Q5. 1辺の長さが $a$ の正四面体の高さを答えてください。
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき、$y = \cos^2\theta - 2\cos\theta + 2$ の最大値と最小値を求めよ。
最小値 $1$($\theta = 0^\circ$)、最大値 $5$($\theta = 180^\circ$)
方針:$t = \cos\theta$ とおき換えて、$t$ の2次関数の最大・最小に帰着する。
Step 1:$t = \cos\theta$ とおくと $y = t^2 - 2t + 2$。
Step 2:$t$ の定義域を求める。$0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ$ のとき $-1 \leq t \leq 1$。
Step 3:$y = (t-1)^2 + 1$。頂点は $(1, 1)$。$a = 1 > 0$ で下に凸。
頂点 $t = 1$ は区間 $[-1, 1]$ の右端にある。
・$t = 1$($\theta = 0^\circ$):$y = 0 + 1 = 1$
・$t = -1$($\theta = 180^\circ$):$y = (-1-1)^2 + 1 = 4 + 1 = 5$
よって最小値 $1$($\theta = 0^\circ$)、最大値 $5$($\theta = 180^\circ$)。
地上の点 $\mathrm{A}$ から塔の先端 $\mathrm{P}$ の仰角が $60^\circ$ であり、 $\mathrm{A}$ から塔の根元 $\mathrm{B}$ までの水平距離が $20\,\mathrm{m}$ である。 塔の高さ $\mathrm{BP}$ を求めよ。ただし目の高さは無視してよい。
$\mathrm{BP} = 20\sqrt{3}\,\mathrm{m}$
方針:直角三角形を特定し、$\tan$ を使う。
$\triangle\mathrm{ABP}$ で $\angle\mathrm{B} = 90^\circ$(塔は地面に垂直)、$\angle\mathrm{A} = 60^\circ$。
$\tan 60^\circ = \dfrac{\mathrm{BP}}{\mathrm{AB}}$ より $\mathrm{BP} = \mathrm{AB} \times \tan 60^\circ = 20 \times \sqrt{3} = 20\sqrt{3}\,\mathrm{m}$。
※ 仰角が与えられた測量問題では、水平距離と高さで直角三角形を作り、$\tan$ を使うのが基本。
1辺の長さが $6$ の正四面体 $\mathrm{ABCD}$ について、次の値を求めよ。
(1) $\triangle\mathrm{BCD}$ の面積 $S$
(2) 正四面体 $\mathrm{ABCD}$ の体積 $V$
(3) 正四面体 $\mathrm{ABCD}$ の内接球の半径 $r$
(1) $S = 9\sqrt{3}$ (2) $V = 18\sqrt{2}$ (3) $r = \dfrac{\sqrt{6}}{2}$
(1) $\triangle\mathrm{BCD}$ は1辺 $6$ の正三角形。 $S = \dfrac{\sqrt{3}}{4} \times 6^2 = 9\sqrt{3}$
(2) 頂点 $\mathrm{A}$ から底面 $\mathrm{BCD}$ に垂線 $\mathrm{AH}$ を下ろす。 $\mathrm{H}$ は $\triangle\mathrm{BCD}$ の重心。
辺 $\mathrm{CD}$ の中点を $\mathrm{M}$ とすると $\mathrm{BM} = \dfrac{\sqrt{3}}{2} \times 6 = 3\sqrt{3}$。 $\mathrm{BH} = \dfrac{2}{3} \times 3\sqrt{3} = 2\sqrt{3}$。
$\mathrm{AH}^2 = \mathrm{AB}^2 - \mathrm{BH}^2 = 36 - 12 = 24$ より $\mathrm{AH} = 2\sqrt{6}$。
$V = \dfrac{1}{3} \times S \times \mathrm{AH} = \dfrac{1}{3} \times 9\sqrt{3} \times 2\sqrt{6} = \dfrac{18\sqrt{18}}{3} = \dfrac{18 \times 3\sqrt{2}}{3} = 18\sqrt{2}$
(3) 内接球は正四面体の4つの面すべてに接する。内接球の中心を $\mathrm{I}$ とすると、 正四面体を $\mathrm{I}$ を頂点とする4つの三角錐に分割できる。
$V = 4 \times \dfrac{1}{3} \times S \times r$ より $18\sqrt{2} = \dfrac{4}{3} \times 9\sqrt{3} \times r = 12\sqrt{3}\,r$
$r = \dfrac{18\sqrt{2}}{12\sqrt{3}} = \dfrac{3\sqrt{2}}{2\sqrt{3}} = \dfrac{3\sqrt{6}}{6} = \dfrac{\sqrt{6}}{2}$
$\triangle\mathrm{ABC}$ において $a\cos A = b\cos B$ が成り立つとき、 $\triangle\mathrm{ABC}$ はどのような三角形か。すべての場合を答えよ。
$A = B$ の二等辺三角形、または $A + B = 90^\circ$($C = 90^\circ$)の直角三角形
方針:正弦定理で $a = 2R\sin A$, $b = 2R\sin B$ とおき、三角比の等式に変換する。
正弦定理より $a = 2R\sin A$, $b = 2R\sin B$。
$a\cos A = b\cos B$ に代入すると
$$2R\sin A\cos A = 2R\sin B\cos B$$
$2R > 0$ で割り、2倍角の公式 $2\sin\theta\cos\theta = \sin 2\theta$ を使うと
$$\sin 2A = \sin 2B$$
$0^\circ < A, B < 180^\circ$ より $0^\circ < 2A, 2B < 360^\circ$。
$\sin 2A = \sin 2B$ の解は $2A = 2B$ または $2A = 180^\circ - 2B$。
・$2A = 2B$ のとき:$A = B$(二等辺三角形)
・$2A = 180^\circ - 2B$ のとき:$A + B = 90^\circ$、つまり $C = 90^\circ$(直角三角形)
⚠️ 「$A = B$ の二等辺三角形」だけ答えて、直角三角形の場合を見落とすのが最も多い誤答。 $\sin$ の方程式では $\sin\alpha = \sin\beta$ の解が $\alpha = \beta$ だけでないことに注意。