空間図形は難しそうに見えますが、解法の原理はシンプルです。
「空間 → 必要な平面を1つずつ取り出す → 平面上の三角比を適用する」── この手順を身につけましょう。
正弦定理や余弦定理は平面上の三角形に適用する道具です。 空間図形の問題では、直接これらの定理を使うことはできません。 では、どうすれば空間の問題に三角比を使えるのでしょうか。
答えはシンプルです。空間図形の中から適切な平面(三角形)を取り出し、 その平面上で正弦定理・余弦定理・面積公式を使うのです。 空間図形の問題は、言い換えれば「どの三角形を取り出すか」を見抜く問題です。
空間内のどんな図形も、複数の平面図形の組み合わせで構成されています。 四面体は4つの三角形の面、直方体は6つの長方形の面で作られています。
三角比は平面上の道具なので、空間の問題を解くとは 「空間を平面に分解して、1つずつ三角比を適用していく」ことにほかなりません。
手順: (1) 求めたい量(長さ・角度)が含まれる三角形を特定する → (2) その三角形の辺や角の情報を集める → (3) 正弦定理・余弦定理・面積公式を適用する
✕ 誤:空間全体を一度に見て、直感で長さや角度を求めようとする
○ 正:必ず具体的な三角形を1つ取り出してから計算を始める
空間図形の問題で手が止まるのは、ほとんどの場合「どの三角形に注目すべきか」が見えていないからです。 まず図を描き、求めたい辺・角を含む三角形を探すことから始めましょう。
空間図形で頻繁に使うテクニックが、垂線の足を利用して直角三角形を作ることです。 たとえば「頂点から底面に下ろした垂線の足 $\mathrm{H}$」を使えば、直角三角形 $\triangle\mathrm{OAH}$ などが得られ、 三角比の定義($\sin$, $\cos$, $\tan$)をそのまま適用できます。
✕ 誤:「正四面体の頂点から底面に垂線を下ろすと、底面の中心に落ちる」を直感で決める
○ 正:正四面体は対称性から垂線の足が底面の重心と一致することを確認する。 一般の四面体では重心に落ちるとは限らない
垂線の足の位置は「$\mathrm{OH} \perp$ 底面」の条件から論理的に導く必要があります。 対称性がある図形(正四面体、正三角柱など)では重心に落ちますが、一般の図形では計算で確認しましょう。
数学IIで学ぶ空間座標を導入すれば、空間図形の問題は座標計算に帰着できます。 頂点に座標を設定し、ベクトルの内積から角度を、距離の公式から長さを求める方法は非常に強力です。
ただし座標設定は計算量が増えがちです。空間図形の対称性を利用して「適切な三角形を取り出す」方法のほうが エレガントで計算も速いことが多いです。状況に応じて使い分けられるようになりましょう。
正四面体は、すべての辺の長さが等しい四面体です。 1辺の長さを $a$ とするとき、正四面体のさまざまな量(高さ、体積、内接球・外接球の半径)は すべて $a$ だけで決まります。
正四面体の計算では、まず頂点から底面に垂線を下ろし、その垂線の足が底面の正三角形の重心になることを利用します。
正四面体 $\mathrm{OABC}$ で頂点 $\mathrm{O}$ から底面 $\triangle\mathrm{ABC}$ に垂線を下ろすと、 足 $\mathrm{H}$ は $\triangle\mathrm{ABC}$ の重心(=外心=内心)に一致します。
なぜなら、$\mathrm{OA} = \mathrm{OB} = \mathrm{OC}$ から $\mathrm{HA} = \mathrm{HB} = \mathrm{HC}$ が導かれ、 $\mathrm{H}$ は $\triangle\mathrm{ABC}$ の外接円の中心です。 正三角形では外心 = 重心なので、$\mathrm{H}$ は重心です。
底面(正三角形)の面積:$S = \dfrac{\sqrt{3}}{4}a^2$
高さ:$h = \sqrt{\dfrac{2}{3}} \cdot a = a\sqrt{\dfrac{2}{3}}$
体積:$V = \dfrac{1}{3}Sh = \dfrac{\sqrt{2}}{12}a^3$
1辺 $a$ の正四面体 $\mathrm{OABC}$ を考えます。辺 $\mathrm{BC}$ の中点を $\mathrm{M}$ とします。
Step 1:$\triangle\mathrm{OBC}$ は正三角形なので $\mathrm{OM} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}a$。 同様に $\mathrm{AM} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}a$。
Step 2:$\triangle\mathrm{OMA}$ で余弦定理を使い $\cos\angle\mathrm{OMA}$ を求めます。
$$\cos\angle\mathrm{OMA} = \frac{\mathrm{OM}^2 + \mathrm{AM}^2 - \mathrm{OA}^2}{2 \cdot \mathrm{OM} \cdot \mathrm{AM}} = \frac{\frac{3}{4}a^2 + \frac{3}{4}a^2 - a^2}{2 \cdot \frac{3}{4}a^2} = \frac{\frac{1}{2}a^2}{\frac{3}{2}a^2} = \frac{1}{3}$$Step 3:垂線の足 $\mathrm{H}$ は $\triangle\mathrm{ABC}$ の重心で、$\mathrm{AH} = \dfrac{2}{3}\mathrm{AM} = \dfrac{a}{\sqrt{3}}$。
Step 4:$\mathrm{OH} = \sqrt{\mathrm{OA}^2 - \mathrm{AH}^2} = \sqrt{a^2 - \dfrac{a^2}{3}} = a\sqrt{\dfrac{2}{3}}$
Step 5:$V = \dfrac{1}{3} \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{4}a^2 \cdot a\sqrt{\dfrac{2}{3}} = \dfrac{\sqrt{3}}{4} \cdot \dfrac{\sqrt{2}}{3\sqrt{3}} \cdot a^3 = \dfrac{\sqrt{2}}{12}a^3$
✕ 誤:重心は中線の中点だから $\mathrm{AH} = \dfrac{1}{2}\mathrm{AM}$
○ 正:重心は中線を頂点側から $2 : 1$ に内分するので $\mathrm{AH} = \dfrac{2}{3}\mathrm{AM}$
重心の内分比は $2 : 1$ であって $1 : 1$ ではありません。 「頂点から $\dfrac{2}{3}$」とセットで覚えましょう。
1辺 $1$ の立方体の8個の頂点のうち、交互に4個を選ぶと正四面体が得られます。 このとき正四面体の1辺は立方体の面の対角線 $\sqrt{2}$ です。
この関係を利用すると、正四面体の体積は立方体の体積から4つの角の三角錐を引くことで求められます。 $1 - 4 \times \dfrac{1}{6} = \dfrac{1}{3}$ なので、1辺 $\sqrt{2}$ の正四面体の体積は $\dfrac{1}{3}$。 これは $\dfrac{\sqrt{2}}{12}(\sqrt{2})^3 = \dfrac{\sqrt{2} \cdot 2\sqrt{2}}{12} = \dfrac{4}{12} = \dfrac{1}{3}$ と一致します。
直方体(3辺の長さが $a, b, c$ の箱型)は、空間図形の中でも最も身近な形です。 直方体の問題では、対角線の長さや対角線同士のなす角がよく問われます。
3辺が $a, b, c$ の直方体の空間対角線の長さ $d$ は
$$d = \sqrt{a^2 + b^2 + c^2}$$2つの直線のなす角、直線と平面のなす角、2平面のなす角 ── これらはすべて 適切な三角形を見つけて余弦定理を適用することで求められます。
たとえば、対角線 $\mathrm{AG}$ と辺 $\mathrm{AB}$ のなす角 $\theta$ は、$\triangle\mathrm{ABG}$ の中で $\cos\theta = \dfrac{\mathrm{AB}}{\mathrm{AG}} = \dfrac{a}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}$ と求められます。
直方体 $\mathrm{ABCD}$-$\mathrm{EFGH}$ で、底面の対角線 $\mathrm{AC}$ と空間対角線 $\mathrm{AG}$ のなす角を考えます。 ここで $\mathrm{A}$ を共有する $\triangle\mathrm{ACG}$ に着目します。
$\mathrm{AC} = \sqrt{a^2 + b^2}$、$\mathrm{AG} = \sqrt{a^2 + b^2 + c^2}$、$\mathrm{CG} = c$(垂直な辺)。 $\mathrm{CG} \perp$ 底面なので $\triangle\mathrm{ACG}$ は $\angle\mathrm{ACG} = 90^\circ$ の直角三角形です。
したがって $\cos\angle\mathrm{CAG} = \dfrac{\mathrm{AC}}{\mathrm{AG}} = \dfrac{\sqrt{a^2+b^2}}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}$
直方体では辺同士が直交するため、多くの三角形に直角が含まれています。
✕ 誤:直角三角形に気づかず余弦定理で計算する(計算量が増えるだけで間違いではないが非効率)
○ 正:垂直関係を見つけて三角比の定義($\sin$, $\cos$, $\tan$)を直接使う
直方体の問題では、辺と面が直交する関係を常に意識しましょう。直角が見つかれば計算が大幅に簡単になります。
直線 $\ell$ と平面 $\alpha$ のなす角は、直線上の点から平面に垂線を下ろし、 垂線の足と直線の交点を結ぶ角で定義されます。
つまり「直線 $\mathrm{AG}$ と底面のなす角」は、$\mathrm{G}$ から底面への垂線の足($= \mathrm{C}$ ではなく底面上の $\mathrm{G}$ の投影点) を使って求めます。直方体では $\mathrm{G}$ の底面への投影が $\mathrm{C}$ なので、$\angle\mathrm{GAC}$ が求める角です。
空間図形を平面で切ったとき、切り口に現れる図形の面積を求める問題も入試の定番です。 たとえば正四面体を辺の中点を通る平面で切ると、切り口は正方形になります。
このような問題でも、基本戦略は同じです。 切り口の図形の辺の長さを余弦定理や三平方の定理で求め、面積公式を適用します。
1辺 $a$ の正四面体 $\mathrm{OABC}$ で、辺 $\mathrm{OA}$, $\mathrm{OB}$, $\mathrm{AB}$, $\mathrm{BC}$ の中点をそれぞれ $\mathrm{P}$, $\mathrm{Q}$, $\mathrm{R}$, $\mathrm{S}$ とします。 中点連結定理より、$\mathrm{PQ} \parallel \mathrm{AB}$、$\mathrm{PQ} = \dfrac{a}{2}$ などが成り立ちます。
対辺の中点同士を結ぶ場合(たとえば辺 $\mathrm{OA}$ と辺 $\mathrm{BC}$ の中点を結ぶ)、 その長さは余弦定理を使って求められます。
✕ 誤:正四面体のすべての中点同士の線分が辺と平行
○ 正:中点連結定理が使えるのは同一面上の三角形の中点の場合のみ。 異なる面にまたがる中点の距離は余弦定理で計算が必要
中点連結定理は三角形の中点に関する定理です。四面体の「対辺の中点」は同一三角形上にないため、 中点連結定理は直接適用できません。
Q1. 空間図形の問題で三角比を使うための基本手順を3ステップで述べてください。
Q2. 1辺 $a$ の正四面体の高さが $a\sqrt{\dfrac{2}{3}}$ となることを、三平方の定理を使って説明してください。
Q3. 3辺 $2, 3, 4$ の直方体の空間対角線の長さを求めてください。
Q4. 正四面体の頂点から底面に下ろした垂線の足が重心になるのはなぜですか?
Q5. 「直線と平面のなす角」はどのように定義されますか?
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
1辺の長さが $6$ の正四面体の体積を求めよ。
$18\sqrt{2}$
方針:正四面体の体積公式 $V = \dfrac{\sqrt{2}}{12}a^3$ を使う。
$V = \dfrac{\sqrt{2}}{12} \cdot 6^3 = \dfrac{216\sqrt{2}}{12} = 18\sqrt{2}$
別解として導出から求める場合:底面の面積 $S = \dfrac{\sqrt{3}}{4} \cdot 36 = 9\sqrt{3}$。 高さ $h = 6\sqrt{\dfrac{2}{3}} = 6 \cdot \dfrac{\sqrt{6}}{3} = 2\sqrt{6}$。 $V = \dfrac{1}{3} \cdot 9\sqrt{3} \cdot 2\sqrt{6} = 6\sqrt{18} = 18\sqrt{2}$ ✓
$\mathrm{AB} = 3$, $\mathrm{AD} = 4$, $\mathrm{AE} = 2$ の直方体 $\mathrm{ABCD}$-$\mathrm{EFGH}$ において、 対角線 $\mathrm{AG}$ と底面 $\mathrm{ABCD}$ のなす角 $\theta$ を求めよ。
$\theta = \arctan\dfrac{2}{5}$ ($\tan\theta = \dfrac{2}{5}$)
方針:$\mathrm{G}$ から底面への垂線の足は $\mathrm{C}$ である。$\angle\mathrm{GAC} = \theta$ が求める角。
底面の対角線 $\mathrm{AC} = \sqrt{3^2 + 4^2} = 5$。高さ $\mathrm{CG} = 2$。
$\triangle\mathrm{ACG}$ は $\angle\mathrm{ACG} = 90^\circ$ の直角三角形。
$\tan\theta = \dfrac{\mathrm{CG}}{\mathrm{AC}} = \dfrac{2}{5}$
1辺の長さが $a$ の正四面体 $\mathrm{OABC}$ において、辺 $\mathrm{BC}$ の中点を $\mathrm{M}$ とする。 $\cos\angle\mathrm{OMA}$ の値を求めよ。
$\cos\angle\mathrm{OMA} = \dfrac{1}{3}$
方針:$\triangle\mathrm{OMA}$ で余弦定理を適用する。
$\mathrm{OM} = \mathrm{AM} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}a$(正三角形の中線)、$\mathrm{OA} = a$
余弦定理より
$$\cos\angle\mathrm{OMA} = \frac{\mathrm{OM}^2 + \mathrm{AM}^2 - \mathrm{OA}^2}{2 \cdot \mathrm{OM} \cdot \mathrm{AM}} = \frac{\frac{3}{4}a^2 + \frac{3}{4}a^2 - a^2}{2 \cdot \frac{3}{4}a^2} = \frac{\frac{1}{2}a^2}{\frac{3}{2}a^2} = \frac{1}{3}$$1辺の長さが $a$ の正四面体 $\mathrm{OABC}$ について、次の値を求めよ。
(1) 内接球の半径 $r$
(2) 外接球の半径 $R$
(1) $r = \dfrac{a}{\sqrt{24}} = \dfrac{a}{2\sqrt{6}} = \dfrac{a\sqrt{6}}{12}$
(2) $R = \dfrac{a\sqrt{6}}{4}$
(1) の方針:内接球の中心を $\mathrm{I}$ とすると、$\mathrm{I}$ から各面に下ろした垂線の長さが内接球の半径 $r$。 体積を4つの三角錐に分割する。
$V = \dfrac{\sqrt{2}}{12}a^3$、底面の面積 $S = \dfrac{\sqrt{3}}{4}a^2$
$V = 4 \times \dfrac{1}{3} \cdot S \cdot r$ より $\dfrac{\sqrt{2}}{12}a^3 = \dfrac{4}{3} \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{4}a^2 \cdot r = \dfrac{\sqrt{3}}{3}a^2 r$
$r = \dfrac{\sqrt{2}a^3}{12} \cdot \dfrac{3}{\sqrt{3}a^2} = \dfrac{\sqrt{2}a}{4\sqrt{3}} = \dfrac{a\sqrt{6}}{12}$
(2) の方針:外接球の中心は高さの軸上にあり、各頂点からの距離が $R$。
$\mathrm{OH}$(高さ)$= a\sqrt{\dfrac{2}{3}}$、$\mathrm{AH} = \dfrac{a}{\sqrt{3}}$
外接球の中心 $\mathrm{J}$ は $\mathrm{OH}$ 上にあり、$\mathrm{JO} = R$、$\mathrm{JA} = R$。
$\mathrm{JH} = h - R = a\sqrt{\dfrac{2}{3}} - R$ とおくと $R^2 = \mathrm{JH}^2 + \mathrm{AH}^2$
$R^2 = \left(a\sqrt{\dfrac{2}{3}} - R\right)^2 + \dfrac{a^2}{3}$
展開して $R = \dfrac{a^2 \cdot \frac{2}{3} + \frac{a^2}{3}}{2a\sqrt{\frac{2}{3}}} = \dfrac{a}{2\sqrt{\frac{2}{3}}} = \dfrac{a\sqrt{3}}{2\sqrt{2}} = \dfrac{a\sqrt{6}}{4}$
⚠️ 確認:$\dfrac{R}{r} = \dfrac{a\sqrt{6}/4}{a\sqrt{6}/12} = 3$ なので $R = 3r$。これは正四面体の既知の性質と一致 ✓