第4章 図形と計量

内接円・外接円
─ 円と三角形を結ぶ2つの半径

三角形には、必ず外接円と内接円が1つずつ存在します。
外接円の半径 $R$ は正弦定理から、内接円の半径 $r$ は面積の公式 $S = rs$ から求まります。
この2つの公式の「なぜ」を理解すれば、円と三角形の融合問題を自在に解けるようになります。

1外接円の半径R ─ 正弦定理との関係

三角形の3つの頂点を通る円を外接円といいます。 どんな三角形にも、外接円はただ1つ存在します。 外接円の中心(外心)は、各辺の垂直二等分線の交点です。

外接円の半径 $R$ を求めるための道具は、4-2で学んだ正弦定理です。 $\triangle ABC$ において、$a = BC$、$b = CA$、$c = AB$ とすると、

$$\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R$$

この等式の右辺が $2R$(外接円の直径)であるところが、外接円と三角形をつなぐ鍵です。 つまり、辺の長さと対角の正弦の比は、すべて外接円の直径に等しいのです。

💡 ここが本質:正弦定理は「円周角の定理」の翻訳

正弦定理 $\dfrac{a}{\sin A} = 2R$ は、実は円周角の定理を三角比の言葉で書き直したものです。

外接円の直径を $BC$ に対する弦の一端 $B$ から引くと、その端点を $B'$ とすると $BB' = 2R$。 円周角の定理から $\angle B'CB = 90^\circ$(直径に対する円周角は直角)かつ $\angle B'BC = \angle A$(同じ弧に対する円周角)。

直角三角形 $B'BC$ で $\sin A = \sin(\angle B'BC) = \dfrac{BC}{BB'} = \dfrac{a}{2R}$。 移項すると $a = 2R \sin A$、すなわち $\dfrac{a}{\sin A} = 2R$。

正弦定理は暗記する公式ではなく、円周角の定理から自然に導けるのです。

📐 外接円の半径 $R$ の求め方

$\triangle ABC$ の外接円の半径を $R$ とすると

$$R = \frac{a}{2\sin A} = \frac{b}{2\sin B} = \frac{c}{2\sin C}$$
※ 「1組の辺と対角」がわかれば $R$ が求まる。向かい合う辺と角のペアを1つ選ぶだけ。

具体例で確認する

$\triangle ABC$ で $a = 3\sqrt{2}$、$A = 45^\circ$ のとき、外接円の半径 $R$ を求めてみましょう。

正弦定理より $2R = \dfrac{a}{\sin A} = \dfrac{3\sqrt{2}}{\sin 45^\circ} = \dfrac{3\sqrt{2}}{\dfrac{\sqrt{2}}{2}} = \dfrac{3\sqrt{2} \times 2}{\sqrt{2}} = 6$。 よって $R = 3$。

⚠️ 落とし穴:$\dfrac{a}{\sin A} = 2R$ の「$2R$」を忘れる

✕ 誤:$R = \dfrac{a}{\sin A}$($2R$ ではなく $R$ だと勘違い)

○ 正:$\dfrac{a}{\sin A} = 2R$ なので、$R = \dfrac{a}{2\sin A}$

正弦定理の右辺は「直径 $2R$」です。$R$ を求めるときは必ず2で割ることを忘れないでください。 逆に、辺の長さを求めるときは $a = 2R\sin A$ と「2倍」します。

🔬 深掘り:外接円と正弦定理の一般化 ── 球面三角法

平面上の三角形には外接円がありますが、球面上の三角形にも同様の関係が成り立ちます。 大学の球面三角法では、球面上の「辺」は大円(球の切り口の最大の円)の弧であり、 正弦定理は $\dfrac{\sin a}{\sin A} = \dfrac{\sin b}{\sin B} = \dfrac{\sin c}{\sin C}$ という形に一般化されます。

この球面上の正弦定理は、天文学での天体の位置計算や、航海術での最短経路(大圏航路)の計算に使われています。 平面の正弦定理は、球面の半径を無限大にした極限として得られます。

2内接円の半径r ─ S=rs の公式

三角形の3辺すべてに接する円を内接円といいます。 どんな三角形にも、内接円はただ1つ存在します。 内接円の中心(内心)は、各角の二等分線の交点です。

外接円の半径 $R$ が正弦定理で求まるのに対して、内接円の半径 $r$ は三角形の面積を使って求めます。 ここに、美しいほどシンプルな公式があります。

💡 ここが本質:三角形を内心から3つに分割する

内接円の半径 $r$ の公式は、「三角形を内心と各頂点を結ぶ線分で3つの小三角形に分割する」という たった1つのアイデアから導かれます。

$\triangle ABC$ の内心を $I$ とすると、$\triangle ABC = \triangle IBC + \triangle ICA + \triangle IAB$。

各小三角形の底辺は元の三角形の辺($a$, $b$, $c$)で、高さはすべて内接円の半径 $r$ です。 なぜなら、内心から各辺への距離は内接円の半径そのものだからです。

この「分割して足す」発想を理解すれば、公式は暗記不要です。

▷ $S = rs$ の導出

$\triangle ABC$ の内心を $I$、内接円の半径を $r$ とします。

Step 1:$I$ と各頂点を結んで、$\triangle ABC$ を3つの小三角形に分割します。

$\triangle ABC = \triangle IBC + \triangle ICA + \triangle IAB$

Step 2:各小三角形の面積を求めます。内心 $I$ から各辺への距離はすべて $r$(内接円の半径)なので、

$\triangle IBC = \dfrac{1}{2} \cdot a \cdot r$、$\triangle ICA = \dfrac{1}{2} \cdot b \cdot r$、$\triangle IAB = \dfrac{1}{2} \cdot c \cdot r$

Step 3:3つを足します。

$$S = \frac{1}{2}ar + \frac{1}{2}br + \frac{1}{2}cr = \frac{1}{2}r(a + b + c)$$

ここで $s = \dfrac{a + b + c}{2}$(半周長)とおくと $a + b + c = 2s$ なので、

$$S = \frac{1}{2}r \cdot 2s = rs$$

したがって $S = rs$、すなわち $r = \dfrac{S}{s}$ が得られます。

📐 内接円の半径 $r$ の公式

$\triangle ABC$ の面積を $S$、3辺の長さを $a$, $b$, $c$、半周長を $s = \dfrac{a+b+c}{2}$ とすると

$$S = rs \quad \Longleftrightarrow \quad r = \frac{S}{s} = \frac{2S}{a+b+c}$$
※ 面積 $S$ と3辺の長さがわかれば $r$ が求まる。$S$ の求め方は次のSectionで整理。
⚠️ 落とし穴:$s$ は「半周長」であって「周長」ではない

✕ 誤:$S = r(a + b + c)$ と書いて $r = \dfrac{S}{a+b+c}$ と計算

○ 正:$S = rs$ で $s = \dfrac{a+b+c}{2}$ なので、$r = \dfrac{S}{s} = \dfrac{2S}{a+b+c}$

$s$ は周長の半分(半周長)です。$S = rs$ を $r = \dfrac{S}{a+b+c}$ と計算すると、 答えが2倍になってしまいます。$S = \dfrac{1}{2}r(a+b+c)$ と覚えるか、 $s$ の定義を確認する習慣をつけましょう。

🔬 深掘り:$S = rs$ は四面体にも拡張できる

三角形の「内心から辺への距離 = $r$」で面積を分割したのと同じ発想は、 四面体の内接球にも適用できます。

四面体の内接球の半径を $r$、4つの面の面積の和を $S_{\text{total}}$ とすると、 四面体の体積 $V$ は $V = \dfrac{1}{3} r \cdot S_{\text{total}}$ と表せます。 これは「四面体を内接球の中心から4つの三角錐に分割する」ことで導かれ、 2次元の $S = rs$ の3次元版です。

一般に $n$ 次元単体では $V_n = \dfrac{1}{n} r \cdot S_{n-1}$ という関係が成り立ちます。 次元を上げても同じ原理が貫かれているのです。

3内接円の半径の求め方 ─ 面積から逆算

$r = \dfrac{S}{s}$ を使うには、面積 $S$ と3辺の長さが必要です。 ここでは、与えられた条件から $S$ と $s$ を求めるステップを整理します。

基本パターン:3辺の長さが与えられた場合

$\triangle ABC$ で $a = 4$, $b = 5$, $c = 6$ のとき、内接円の半径 $r$ を求めてみましょう。

▷ 解法のステップ

Step 1:半周長を計算。

$s = \dfrac{a + b + c}{2} = \dfrac{4 + 5 + 6}{2} = \dfrac{15}{2}$

Step 2:面積 $S$ を求める。まず余弦定理で $\cos A$ を求めます。

$\cos A = \dfrac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc} = \dfrac{25 + 36 - 16}{2 \cdot 5 \cdot 6} = \dfrac{45}{60} = \dfrac{3}{4}$

$\sin A = \sqrt{1 - \cos^2 A} = \sqrt{1 - \dfrac{9}{16}} = \sqrt{\dfrac{7}{16}} = \dfrac{\sqrt{7}}{4}$

$S = \dfrac{1}{2}bc\sin A = \dfrac{1}{2} \cdot 5 \cdot 6 \cdot \dfrac{\sqrt{7}}{4} = \dfrac{15\sqrt{7}}{4}$

Step 3:$r = \dfrac{S}{s}$ に代入。

$$r = \frac{S}{s} = \frac{\dfrac{15\sqrt{7}}{4}}{\dfrac{15}{2}} = \frac{15\sqrt{7}}{4} \times \frac{2}{15} = \frac{\sqrt{7}}{2}$$
💡 ここが本質:内接円の半径を求める手順は「面積を2通りで表す」こと

$r$ を求める手順の核心は、三角形の面積を2通りの方法で表すことです。

方法1:辺と角から直接計算 → $S = \dfrac{1}{2}bc\sin A$

方法2:内接円の半径を使って表す → $S = rs$

この2つを等号で結ぶと $rs = \dfrac{1}{2}bc\sin A$ となり、$r$ が求まります。

「面積を2通りで表して等式をつくる」は、数学の至るところで使われる基本テクニックです。

ヘロンの公式を使う方法

3辺の長さだけが与えられているとき、余弦定理を経由せずに面積を求める方法もあります。 それがヘロンの公式です。

$$S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$$

先ほどの例で確認しましょう。$s = \dfrac{15}{2}$ なので、

$s - a = \dfrac{15}{2} - 4 = \dfrac{7}{2}$、$s - b = \dfrac{15}{2} - 5 = \dfrac{5}{2}$、$s - c = \dfrac{15}{2} - 6 = \dfrac{3}{2}$

$$S = \sqrt{\frac{15}{2} \cdot \frac{7}{2} \cdot \frac{5}{2} \cdot \frac{3}{2}} = \sqrt{\frac{15 \cdot 7 \cdot 5 \cdot 3}{16}} = \sqrt{\frac{1575}{16}} = \frac{15\sqrt{7}}{4}$$

先ほどと同じ結果になりました。ヘロンの公式を使えば $\cos A$ や $\sin A$ を経由する必要がなく、 3辺の長さから直接面積が求まります。

⚠️ 落とし穴:面積の求め方を1つしか知らないと行き詰まる

内接円の半径を求める問題で、面積 $S$ の求め方を知らないと手が止まります。 条件に応じて使い分けるべき面積の公式を整理しておきましょう。

○ 公式の使い分け:

・2辺とその間の角が既知 → $S = \dfrac{1}{2}bc\sin A$

・3辺が既知 → ヘロンの公式、または余弦定理で角を求めてから面積

・底辺と高さが既知 → $S = \dfrac{1}{2} \times \text{底辺} \times \text{高さ}$

どの条件が与えられているかを確認してから、面積の公式を選ぶことが大切です。

外接円の半径 $R$ と内接円の半径 $r$ の比較

項目外接円の半径 $R$内接円の半径 $r$
定義3頂点を通る円の半径3辺に接する円の半径
中心外心(垂直二等分線の交点)内心(角の二等分線の交点)
求め方正弦定理 $R = \dfrac{a}{2\sin A}$面積公式 $r = \dfrac{S}{s}$
必要な情報1辺とその対角面積と3辺の長さ
⚠️ 落とし穴:$R$ と $r$ の求め方を混同する

✕ 誤:「内接円の半径を正弦定理で求めよう」

○ 正:正弦定理で求まるのは外接円の半径 $R$です。内接円の半径 $r$ は $r = \dfrac{S}{s}$ で求めます。

覚え方:外接円 → 正弦定理($\sin$)、内接円 → 面積($S$)。使う道具がまったく異なります。

4円と三角形の融合問題

ここまでに学んだ外接円・内接円の公式を組み合わせて解く問題を見ていきましょう。 入試では「正弦定理・余弦定理・面積公式・$S = rs$」を融合した問題がよく出題されます。

💡 ここが本質:円と三角形の問題は「何が既知で何が未知か」の整理が9割

融合問題では、複数の公式をどの順番で使うかが問われます。解法を選ぶポイントは1つ。

「今わかっていること」と「求めたいもの」を整理し、それらを結ぶ公式を選ぶ。

具体的な判断フロー:

1. 辺と対角のペアがある → 正弦定理($R$ も求まる)

2. 3辺、または2辺と間の角がある → 余弦定理

3. 面積を求めたい、または面積が絡む → $S = \dfrac{1}{2}bc\sin A$ や $S = rs$

4. 内接円の半径 $r$ が絡む → $S = rs$ を利用

典型例:3辺から $R$ と $r$ を両方求める

$\triangle ABC$ で $a = 4$, $b = 5$, $c = 6$ のとき、外接円の半径 $R$ と内接円の半径 $r$ を求めます。

Section 3で $\cos A = \dfrac{3}{4}$、$\sin A = \dfrac{\sqrt{7}}{4}$、$S = \dfrac{15\sqrt{7}}{4}$ を求めました。

外接円の半径 $R$:正弦定理より

$$R = \frac{a}{2\sin A} = \frac{4}{2 \cdot \dfrac{\sqrt{7}}{4}} = \frac{4}{\dfrac{\sqrt{7}}{2}} = \frac{8}{\sqrt{7}} = \frac{8\sqrt{7}}{7}$$

内接円の半径 $r$:$s = \dfrac{15}{2}$ より

$$r = \frac{S}{s} = \frac{\dfrac{15\sqrt{7}}{4}}{\dfrac{15}{2}} = \frac{\sqrt{7}}{2}$$

このように、3辺が与えられれば、余弦定理 → $\sin A$ → 面積 $S$ → $R$ と $r$ という流れで、 外接円・内接円の半径がどちらも求まります。

典型例:$R$ と $r$ の関係式を導く

$\triangle ABC$ の面積 $S$ は、外接円の半径 $R$ を使って次のようにも表せます。

$$S = \frac{1}{2}bc\sin A = \frac{1}{2}bc \cdot \frac{a}{2R} = \frac{abc}{4R}$$

これと $S = rs$ を組み合わせると、

$$rs = \frac{abc}{4R} \quad \Longleftrightarrow \quad r = \frac{abc}{4Rs}$$

この関係式は、$R$ と $r$ を直接結びつけるものです。入試では直接使うことは少ないですが、 「面積を2つの公式で表して等式をつくる」テクニックの好例です。

⚠️ 落とし穴:$S = \dfrac{abc}{4R}$ を直接暗記しようとする

$S = \dfrac{abc}{4R}$ は便利な公式ですが、これを単独で暗記するのは危険です。

○ 正しい理解:$S = \dfrac{1}{2}bc\sin A$ に $\sin A = \dfrac{a}{2R}$(正弦定理)を代入しただけ。

「$S = \dfrac{1}{2}bc\sin A$」と「正弦定理」を理解していれば、いつでも導けます。 公式の数を増やすのではなく、少数の基本公式から導く力を身につけましょう。

🔬 深掘り:オイラーの距離公式 ── $R$ と $r$ と重心間距離の関係

外心と内心の距離 $d$ について、オイラーの公式と呼ばれる美しい関係式が成り立ちます。

$$d^2 = R^2 - 2Rr = R(R - 2r)$$

$d^2 \geq 0$ より $R \geq 2r$ が導かれます。これはオイラーの不等式と呼ばれ、 等号 $R = 2r$ は正三角形のときにのみ成り立ちます。

つまり、すべての三角形で外接円の半径は内接円の半径の2倍以上であり、 正三角形がこの意味で「最もバランスの良い」三角形なのです。 この結果は大学の幾何学(初等幾何やユークリッド幾何の深い定理)で証明されます。

5この章を俯瞰する

ここまでの内容を、他の記事とのつながりを含めて整理しましょう。 内接円・外接円は「図形と計量」の総まとめ的な位置づけにあり、 正弦定理・余弦定理・面積公式のすべてを統合して使います。

公式の依存関係

求めたいもの使う公式必要な前提知識
外接円の半径 $R$正弦定理 $R = \dfrac{a}{2\sin A}$三角比の定義、円周角の定理
内接円の半径 $r$$r = \dfrac{S}{s}$面積公式($\dfrac{1}{2}bc\sin A$ など)
面積 $S$(2辺+間角)$S = \dfrac{1}{2}bc\sin A$三角比の定義
面積 $S$(3辺)ヘロンの公式余弦定理の応用
辺の長さ余弦定理・正弦定理三角比の定義

つながりマップ

  • ← 4-1 三角比の定義と性質:$\sin$, $\cos$, $\tan$ の定義がすべての出発点。内接円・外接円の公式も三角比なしには語れない。
  • ← 4-2 正弦定理と余弦定理:外接円の半径 $R$ は正弦定理そのもの。余弦定理は面積計算の下準備に使う。
  • ← 4-3 図形の計量(面積・体積):$S = \dfrac{1}{2}bc\sin A$ とヘロンの公式は内接円の半径 $r$ の計算に不可欠。
  • → 数学A 8-1 三角形の性質:内心・外心・重心・垂心の性質を体系的に学ぶ。内接円・外接円はその具体的な応用。
  • → 数学A 8-2 円の性質:円周角の定理、接線の性質など、内接円・外接円の理論的背景を深く学ぶ。

📋まとめ

  • 外接円の半径 $R$ は正弦定理から求まる:$R = \dfrac{a}{2\sin A}$。1組の辺と対角があればよい
  • 内接円の半径 $r$ は面積から求まる:$r = \dfrac{S}{s} = \dfrac{2S}{a+b+c}$。面積と3辺が必要
  • $S = rs$ の導出は「三角形を内心から3つに分割する」ことで理解できる。暗記ではなく原理で覚える
  • 外接円 → 正弦定理、内接円 → 面積公式。使う道具がまったく異なることを意識する
  • 面積 $S$ の求め方を複数知っておくことが重要。$\dfrac{1}{2}bc\sin A$ヘロンの公式、底辺$\times$高さ$\div$2 を使い分ける
  • $S = \dfrac{abc}{4R}$ は「面積公式 + 正弦定理」から導ける。基本公式の組み合わせで導く力が大切

確認テスト

Q1. $\triangle ABC$ で $a = 6$、$A = 30^\circ$ のとき、外接円の半径 $R$ を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$R = \dfrac{a}{2\sin A} = \dfrac{6}{2 \cdot \sin 30^\circ} = \dfrac{6}{2 \cdot \dfrac{1}{2}} = \dfrac{6}{1} = 6$

Q2. 内接円の半径 $r$ を求める公式 $S = rs$ の $s$ は何を表しますか?

▶ クリックして解答を表示$s$ は半周長(三角形の周の長さの半分)。$s = \dfrac{a+b+c}{2}$。$S = rs$ を $r$ について解くと $r = \dfrac{S}{s} = \dfrac{2S}{a+b+c}$。

Q3. $\triangle ABC$ で $a = 3$, $b = 4$, $c = 5$ のとき、内接円の半径 $r$ を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$3^2 + 4^2 = 5^2$ より直角三角形。$S = \dfrac{1}{2} \cdot 3 \cdot 4 = 6$。$s = \dfrac{3+4+5}{2} = 6$。$r = \dfrac{S}{s} = \dfrac{6}{6} = 1$。

Q4. 外接円の半径を求めるときに使う定理と、内接円の半径を求めるときに使う公式をそれぞれ答えてください。

▶ クリックして解答を表示外接円の半径 $R$ → 正弦定理($\dfrac{a}{\sin A} = 2R$)。内接円の半径 $r$ → 面積の公式($S = rs$)。

Q5. $S = rs$ の導出で使う「アイデア」を一言で述べてください。

▶ クリックして解答を表示三角形を内心と各頂点を結ぶ線分で3つの小三角形に分割する。各小三角形の高さは内接円の半径 $r$ に等しいので、面積を足し合わせると $S = \dfrac{1}{2}r(a+b+c) = rs$ が得られる。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

4-10-1 A 基礎 外接円 正弦定理

$\triangle ABC$ において、$b = 3$、$B = 60^\circ$、$C = 45^\circ$ のとき、辺 $c$ の長さと外接円の半径 $R$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$c = \sqrt{6}$、$R = \sqrt{3}$

解説

方針:2角と1辺が与えられているので正弦定理を利用。

正弦定理より $\dfrac{b}{\sin B} = \dfrac{c}{\sin C} = 2R$

$\dfrac{3}{\sin 60^\circ} = \dfrac{3}{\dfrac{\sqrt{3}}{2}} = \dfrac{6}{\sqrt{3}} = 2\sqrt{3}$

よって $2R = 2\sqrt{3}$ から $R = \sqrt{3}$。

$c = 2R\sin C = 2\sqrt{3} \cdot \sin 45^\circ = 2\sqrt{3} \cdot \dfrac{\sqrt{2}}{2} = \sqrt{6}$

B 標準レベル

4-10-2 B 標準 内接円 面積

$\triangle ABC$ において、$a = 7$, $b = 8$, $c = 9$ とする。

(1) $\cos A$ の値を求めよ。

(2) $\triangle ABC$ の面積 $S$ を求めよ。

(3) 内接円の半径 $r$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\cos A = \dfrac{2}{3}$ (2) $S = 12\sqrt{5}$ (3) $r = \sqrt{5}$

解説

方針:3辺が与えられているので、余弦定理 → 面積 → $r = \dfrac{S}{s}$ の流れ。

(1) 余弦定理より $\cos A = \dfrac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc} = \dfrac{64 + 81 - 49}{2 \cdot 8 \cdot 9} = \dfrac{96}{144} = \dfrac{2}{3}$

(2) $\sin A = \sqrt{1 - \dfrac{4}{9}} = \sqrt{\dfrac{5}{9}} = \dfrac{\sqrt{5}}{3}$

$S = \dfrac{1}{2}bc\sin A = \dfrac{1}{2} \cdot 8 \cdot 9 \cdot \dfrac{\sqrt{5}}{3} = \dfrac{72\sqrt{5}}{6} = 12\sqrt{5}$

(3) $s = \dfrac{7 + 8 + 9}{2} = 12$

$r = \dfrac{S}{s} = \dfrac{12\sqrt{5}}{12} = \sqrt{5}$

採点ポイント
  • 余弦定理の適用と $\cos A$ の正確な計算(2点)
  • $\sin A$ の導出(2点)
  • 面積 $S$ の正確な計算(3点)
  • $r = \dfrac{S}{s}$ の適用と半周長 $s$ の計算(3点)
4-10-3 B 標準 外接円 内接円 論述

$\triangle ABC$ において、$a = 7$, $A = 60^\circ$, $b = 3$ とする。

(1) 外接円の半径 $R$ を求めよ。

(2) 辺 $c$ の長さを求めよ。

(3) $\triangle ABC$ の面積 $S$ と内接円の半径 $r$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $R = \dfrac{7\sqrt{3}}{3}$ (2) $c = 5$ (3) $S = \dfrac{15\sqrt{3}}{4}$、$r = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$

解説

方針:$a$ と $A$ のペアがあるので正弦定理で $R$。$b$ も既知なので余弦定理で $c$。面積 → $r$。

(1) 正弦定理より

$R = \dfrac{a}{2\sin A} = \dfrac{7}{2\sin 60^\circ} = \dfrac{7}{2 \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2}} = \dfrac{7}{\sqrt{3}} = \dfrac{7\sqrt{3}}{3}$

(2) 余弦定理 $a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$ より

$49 = 9 + c^2 - 2 \cdot 3 \cdot c \cdot \dfrac{1}{2} = 9 + c^2 - 3c$

$c^2 - 3c - 40 = 0$、$(c - 8)(c + 5) = 0$。$c > 0$ より $c = 8$。

検算:$3^2 + 8^2 - 2 \cdot 3 \cdot 8 \cdot \dfrac{1}{2} = 9 + 64 - 24 = 49 = 7^2$ ✓

(3) $S = \dfrac{1}{2}bc\sin A = \dfrac{1}{2} \cdot 3 \cdot 8 \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2} = 6\sqrt{3}$

$s = \dfrac{a + b + c}{2} = \dfrac{7 + 3 + 8}{2} = 9$

$r = \dfrac{S}{s} = \dfrac{6\sqrt{3}}{9} = \dfrac{2\sqrt{3}}{3}$

採点ポイント
  • 正弦定理による $R$ の計算と有理化(3点)
  • 余弦定理の立式と2次方程式の解法(3点)
  • 面積 $S$ の計算と $r = S/s$ の適用(4点)

C 発展レベル

4-10-4 C 発展 融合 $R$ と $r$ 論述

$\triangle ABC$ において、$a = 13$, $b = 14$, $c = 15$ とする。次の値を求めよ。

(1) $\cos A$ の値

(2) $\triangle ABC$ の面積 $S$

(3) 外接円の半径 $R$

(4) 内接円の半径 $r$

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\cos A = \dfrac{3}{5}$ (2) $S = 84$ (3) $R = \dfrac{65}{8}$ (4) $r = 4$

解説

方針:3辺が与えられた典型問題。余弦定理 → $\sin$ → 面積 → $R$, $r$ の順。

(1) 余弦定理より

$\cos A = \dfrac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc} = \dfrac{196 + 225 - 169}{2 \cdot 14 \cdot 15} = \dfrac{252}{420} = \dfrac{3}{5}$

(2) $\sin A = \sqrt{1 - \dfrac{9}{25}} = \sqrt{\dfrac{16}{25}} = \dfrac{4}{5}$

$S = \dfrac{1}{2}bc\sin A = \dfrac{1}{2} \cdot 14 \cdot 15 \cdot \dfrac{4}{5} = \dfrac{1}{2} \cdot 14 \cdot 12 = 84$

(3) 正弦定理より

$R = \dfrac{a}{2\sin A} = \dfrac{13}{2 \cdot \dfrac{4}{5}} = \dfrac{13}{\dfrac{8}{5}} = \dfrac{13 \times 5}{8} = \dfrac{65}{8}$

(4) $s = \dfrac{13 + 14 + 15}{2} = 21$

$r = \dfrac{S}{s} = \dfrac{84}{21} = 4$

⚠️ 検算:$S = \dfrac{abc}{4R} = \dfrac{13 \cdot 14 \cdot 15}{4 \cdot \dfrac{65}{8}} = \dfrac{2730}{\dfrac{260}{8}} = \dfrac{2730 \times 8}{260} = \dfrac{21840}{260} = 84$ ✓

採点ポイント
  • 余弦定理の適用と $\cos A$ の正確な計算(2点)
  • $\sin^2 A + \cos^2 A = 1$ から $\sin A$ を求める(2点)
  • 面積 $S$ の計算(2点)
  • 正弦定理による $R$ の計算(2点)
  • $r = S/s$ の適用(2点)