第3章 集合と命題

命題と条件
─ 「正しい」を数学的に扱うための道具

日常で「正しい」「間違い」と言うとき、私たちは感覚や文脈に頼っています。
数学はこの「正しさ」を厳密に定義し、論理的に扱う方法を与えてくれます。
その出発点が「命題」と「条件」── そして $p \Rightarrow q$ という記号の意味です。

1命題とは何か ─ 真偽が定まる文

数学で命題とは、「正しいか正しくないかが明確に定まる文や式」のことです。 ここでいう「正しい」を、「正しくない」をと呼びます。

たとえば、「$\sqrt{3}$ は無理数である」は正しいと判断できるので、真の命題です。 「$1 + 2 = 5$」は正しくないと判断できるので、偽の命題です。 どちらも「真か偽か」がはっきり定まっているので、命題と言えます。

一方、「$10000$ は大きな数である」はどうでしょうか。 何と比べて大きいのかが決まっていないため、正しいとも正しくないとも言えません。 このように真偽が定まらない文は、命題ではありません。

💡 ここが本質:命題 = 真偽が一意に定まる文

命題の定義で最も重要なのは、真と偽のどちらか一方が必ず定まることです。 「どちらでもない」や「場合による」は許されません。

日常言語では曖昧さが許容されますが、数学の世界では文の真偽が確定していなければ論理の出発点にすらなれません。 命題とは、数学の論理を組み立てるための「最小の部品」なのです。

命題になるもの・ならないもの

命題か?理由
$3$ は $2$ より大きい命題(真)正しいと確定できる
$1 + 2 = 5$命題(偽)正しくないと確定できる
$5$ は素数である命題(真)$5 = 1 \times 5$ のみなので素数
$10000$ は大きな数である命題ではない「大きい」の基準が不明
今日は暑い命題ではない「暑い」の基準が主観的
$x + 3 = 7$命題ではない$x$ の値により真偽が変わる

最後の「$x + 3 = 7$」に注目してください。 $x = 4$ なら真、$x = 5$ なら偽というように、変数 $x$ の値によって真偽が変わります。 こういう文は命題ではなく、次のセクションで学ぶ「条件」と呼ばれます。

⚠️ 落とし穴:「正しそうだけど証明されていない」は命題ではない?

✕ 誤:「証明されていないから真偽が定まらない。だから命題ではない」

○ 正:「我々がまだ真偽を知らない」ことと「真偽が定まらない」ことは別です。 たとえば「双子素数は無限に存在する」は未解決問題ですが、真か偽かはどちらか一方に定まっています(我々が知らないだけ)。 これは命題です。

命題かどうかの判断基準は「原理的に真偽が確定するか」であって、「今の人類に証明できるか」ではありません。

🔬 深掘り:命題論理と述語論理 ── 数理論理学の入口

大学数学では、命題を扱う体系を命題論理(propositional logic)と呼びます。 命題を $P, Q, R, \ldots$ と記号で表し、「かつ($\land$)」「または($\lor$)」「ならば($\Rightarrow$)」「でない($\lnot$)」 という論理記号で組み合わせる体系です。

さらに、「すべての $x$ について」「ある $x$ が存在して」のように変数を含む命題を扱う体系を 述語論理(predicate logic)と言います。 高校で学ぶ「命題と条件」は、まさにこの命題論理と述語論理の基礎にあたります。

2条件と真理集合 ─ 変数を含む文の扱い

前のセクションで「$x + 3 = 7$」は命題ではないと言いました。 変数 $x$ に値を代入するまで真偽が定まらないからです。 このように、変数に値を代入すると真偽が定まる文や式条件と呼びます。

条件の例をいくつか見てみましょう。

  • $x > 3$:$x = 5$ なら真、$x = 1$ なら偽
  • $x^2 = 4$:$x = 2$ なら真、$x = 3$ なら偽
  • $x$ は偶数:$x = 6$ なら真、$x = 7$ なら偽

条件とは「変数の値ごとに真偽が切り替わるフィルター」のようなものです。 このフィルターを通過するもの(真にするもの)の集まりが、これから学ぶ真理集合です。

全体集合と真理集合

条件を考えるときは、まず「変数がどの範囲を動くか」を決めなければなりません。 たとえば条件「$x$ は偶数」を考えるとき、$x$ が自然数全体を動くのか、整数全体を動くのか、 実数全体を動くのか(実数に「偶数」は通常定義しません)によって話が変わります。

この「変数が動く範囲の集合」を全体集合($U$ で表す)と呼びます。 そして、全体集合 $U$ の中で条件 $p$ を真にする要素全体の集合を、 条件 $p$ の真理集合と呼び、$P$ で表します。

💡 ここが本質:条件と集合は表裏一体

条件 $p$ が与えられれば、それを満たす要素を集めて真理集合 $P$ が得られます。 逆に集合 $P$ が与えられれば、「$x \in P$」という条件が定まります。

条件を考えること = 集合を考えること。 この対応が、命題の真偽を集合の包含関係で判定できる理由です。 3-1で学んだ集合の知識が、ここで威力を発揮します。

具体例で真理集合を求める

全体集合を $U = \{$ 実数全体 $\}$ とします。

条件 $p$:$0 \leq x \leq 1$ の真理集合は $P = \{x \mid 0 \leq x \leq 1\}$ です。 条件 $q$:$x^2 < 4$ の真理集合は $Q = \{x \mid -2 < x < 2\}$ です。

このとき、$P \subset Q$ が成り立ちます($0 \leq x \leq 1$ を満たす $x$ は必ず $-2 < x < 2$ を満たす)。 この包含関係は、命題「$0 \leq x \leq 1$ ならば $x^2 < 4$」が真であることを意味します。 これが次のセクションで学ぶ「$p \Rightarrow q$」の集合的な解釈です。

⚠️ 落とし穴:全体集合を意識しない

✕ 誤:条件「$x^2 = 4$」の真理集合は $\{2\}$

○ 正:全体集合が自然数なら真理集合は $\{2\}$ ですが、 整数や実数なら $\{2, -2\}$ です。全体集合によって真理集合は変わります。

問題文に「$x$ は実数とする」「$n$ は自然数とする」と書いてあるのは、全体集合を指定しているのです。 この指定を見落とすと、真理集合を間違えます。

📐 条件の演算と集合の対応

条件 $p$, $q$ の真理集合をそれぞれ $P$, $Q$ とするとき:

・「$p$ かつ $q$」の真理集合 = $P \cap Q$(共通部分)

・「$p$ または $q$」の真理集合 = $P \cup Q$(和集合)

・「$p$ でない」($\bar{p}$)の真理集合 = $\bar{P}$(補集合)

※ 条件の「かつ」「または」「否定」が、集合の「$\cap$」「$\cup$」「補集合」に対応しています。

3「ならば」の意味 ─ $p \Rightarrow q$ と集合の包含

2つの条件 $p$, $q$ に対して、「$p$ ならば $q$」という形の命題を $p \Rightarrow q$ と書きます。 このとき、$p$ を仮定、$q$ を結論と呼びます。

たとえば、「$x$ が $6$ の倍数ならば $x$ は偶数である」を考えましょう。 $6$ の倍数は $6, 12, 18, \ldots$ で、これらはすべて偶数です。 つまり「$p$ を満たすものは、すべて $q$ を満たす」ので、この命題は真です。

では「$x$ が偶数ならば $x$ は $6$ の倍数である」はどうでしょうか。 $x = 4$ は偶数ですが $6$ の倍数ではありません。 つまり「$p$ を満たすが $q$ を満たさないもの」が存在するので、この命題は偽です。

💡 ここが本質:$p \Rightarrow q$ が真 $\Leftrightarrow$ $P \subset Q$

命題 $p \Rightarrow q$ の真偽は、真理集合の包含関係で完全に判定できます。

条件 $p$, $q$ の真理集合をそれぞれ $P$, $Q$ とすると:

$p \Rightarrow q$ が真 $\Leftrightarrow$ $P \subset Q$($P$ のすべての要素が $Q$ に含まれる)

$p \Rightarrow q$ が偽 $\Leftrightarrow$ $P \not\subset Q$($P$ の中に $Q$ に含まれない要素がある)

「ならば」という論理の問題が、集合の包含という図形的な問題に変わるのです。 この変換が、命題の真偽を判定する最も強力な道具です。

集合で考える具体例

$x$ を実数とします。命題「$x^2 = 16$ ならば $x = 4$」の真偽を集合で考えましょう。

▷ 集合を用いた真偽判定

Step 1:真理集合を求める。

$p$:$x^2 = 16$ の真理集合 $P = \{4, -4\}$

$q$:$x = 4$ の真理集合 $Q = \{4\}$

Step 2:包含関係を調べる。

$P = \{4, -4\}$ と $Q = \{4\}$ を比べると、$-4 \in P$ だが $-4 \notin Q$。

よって $P \not\subset Q$。

結論:命題「$x^2 = 16 \Rightarrow x = 4$」は。 反例は $x = -4$。

仮定を満たすものが存在しないとき

少し不思議な例を見てみましょう。$x$ を実数として、命題「$x^2 < 0$ ならば $x > 1$」を考えます。

$p$:$x^2 < 0$ の真理集合は $P = \emptyset$(実数の2乗は必ず $0$ 以上なので、該当なし)。 空集合 $\emptyset$ はどんな集合の部分集合でもあるので、$P \subset Q$ が成り立ちます。 よって、この命題はです。

⚠️ 落とし穴:「仮定が成り立たないから偽」と考えてしまう

✕ 誤:「$x^2 < 0$ を満たす $x$ はないのだから、この命題は意味がない。偽だ」

○ 正:仮定の真理集合が空集合のとき、命題 $p \Rightarrow q$ は自動的に真です。

なぜなら、$\emptyset \subset Q$ は任意の集合 $Q$ に対して成り立つからです。 「$p$ を満たすのに $q$ を満たさないもの」が1つも存在しないので、反例がなく、真になります。 結論に何を持ってきても真になるので、結論の内容は関係ありません。

$p \Leftrightarrow q$(同値)の意味

命題 $p \Rightarrow q$ と $q \Rightarrow p$ が両方とも真であるとき、 $p$ と $q$ は同値であると言い、$p \Leftrightarrow q$ と書きます。

集合の言葉で言えば、$P \subset Q$ かつ $Q \subset P$、すなわち $P = Q$ です。 $p$ を満たすものと $q$ を満たすものがぴったり一致するということです。

⚠️ 落とし穴:$p \Rightarrow q$ が真なら $q \Rightarrow p$ も真だと思い込む

✕ 誤:「$x = 3$ ならば $x^2 = 9$」が真だから、「$x^2 = 9$ ならば $x = 3$」も真

○ 正:$x^2 = 9$ を満たすのは $x = 3$ と $x = -3$ の2つ。$x = -3$ は $x = 3$ を満たさないので、逆は偽。

$p \Rightarrow q$ が真であっても、その逆 $q \Rightarrow p$ は真とは限りません。 $P \subset Q$ から $Q \subset P$ は導けないのです。 逆が真かどうかは、別途確認する必要があります。

🔬 深掘り:「ならば」の数学的定義 ── 日常語との違い

数学における「$p$ ならば $q$」は、日常の「ならば」とはニュアンスが異なります。 数学的には「$p$ でない場合には、$q$ が真でも偽でも命題全体は真」と定義されます。

つまり、$p \Rightarrow q$ とは「$p$ でない、または $q$ である」($\lnot p \lor q$)と同値です。 仮定が偽のときは結論が何であっても命題は真 ── これを空真(vacuous truth)と呼びます。

日常会話では「雨が降ったら傘を持っていく」と言ったとき、 「雨が降らなかったら?」には何も言及していません。 数学でも同じで、仮定が成り立たない場合は「何でもいい」のです。

4反例の見つけ方 ─ 偽を示す技術

命題 $p \Rightarrow q$ が偽であることを示すには、「$p$ を満たすが $q$ を満たさない例」を 1つでも見つければ十分です。この例を反例と呼びます。

集合の言葉で言えば、真理集合 $P$ の中にあるが $Q$ には含まれない要素を見つけることです。 反例は1つでよく、それだけで命題全体が偽であることが確定します。

💡 ここが本質:真を示すには全数確認、偽を示すには1つの反例

命題の真偽の示し方には決定的な非対称性があります。

真を示すとき:$p$ を満たすすべてのものが $q$ を満たすことを証明する必要がある。 1つ1つ確認するのは不可能なことが多いので、論理的な証明が必要。

偽を示すとき:反例を1つ見つけるだけでよい。 たった1つの例外で、命題全体が崩れる。

この非対称性は、科学の方法論にも通じます。 「すべての白鳥は白い」という仮説は、黒い白鳥を1羽見つけるだけで否定できるのです。

反例を見つけるコツ

反例を見つけるにはいくつかの定石があります。 闇雲に探すのではなく、以下のポイントを意識しましょう。

ポイント着眼点具体例
特殊な数を試す$0$、負の数、$1$、$-1$等式・不等式を扱う命題で有効
絶対値が等しい正負の組$x = a$, $x = -a$$x^2 = a^2$ 型の条件で有効
境界値を試す不等式の等号成立点$x \leq 1$ と $|x| \leq 1$ の違い
図形では変形を試す仮定を保ったまま辺や角を動かす二等辺三角形の頂角を変える

具体例:反例探しの実践

命題「$x \leq 1$ ならば $|x| \leq 1$」の真偽を考えましょう。$x$ は実数とします。

$p$:$x \leq 1$ を満たすが、$q$:$|x| \leq 1$ を満たさない $x$ を探します。 $|x| \leq 1$ を満たさないとは、$|x| > 1$、すなわち $x > 1$ または $x < -1$ です。

$x \leq 1$ かつ $x < -1$ を同時に満たす $x$ は存在するでしょうか。 たとえば $x = -2$ とすると、$x = -2 \leq 1$($p$ を満たす)で、$|{-2}| = 2 > 1$($q$ を満たさない)。 よってこの命題はであり、$x = -2$ が反例です。

ここで「負の数を試す」というコツが効いています。 $x \leq 1$ は負の方向には無限に広がっている一方、$|x| \leq 1$ は $-1 \leq x \leq 1$ に閉じているので、 負の大きな値が反例の候補になるのです。

⚠️ 落とし穴:反例の条件を取り違える

命題 $p \Rightarrow q$ の反例とは、$p$ を満たし、かつ $q$ を満たさないものです。

✕ 誤:「$x = 3$ は $x \leq 1$ を満たさないから反例」── これは $p$ すら満たしていません。

○ 正:反例は「仮定を満たす範囲の中で」結論を破る例です。 仮定を満たさないものはそもそも議論の対象外であり、反例にはなりません。

集合の図で考えると、反例とは「$P$ に属するが $Q$ に属さない要素」です。 $P$ の外にいる要素は、いくら $Q$ に属していなくても反例とは言えません。

5この章を俯瞰する

ここまで、命題・条件・真理集合・$p \Rightarrow q$・反例という概念を学んできました。 これらは独立した知識ではなく、互いに深く結びついています。 また、この先の学習内容との関係も確認しておきましょう。

概念の関係図

概念集合との対応キーポイント
命題真偽が一意に定まる文
条件真理集合 $P$変数に値を入れると命題になる
$p \Rightarrow q$ が真$P \subset Q$$p$ を満たすものはすべて $q$ を満たす
$p \Rightarrow q$ が偽$P \not\subset Q$$p$ を満たすが $q$ を満たさないものがある
反例$P$ の中で $Q$ に属さない要素1つ見つければ偽が確定
$p \Leftrightarrow q$$P = Q$両方向の $\Rightarrow$ が真

つながりマップ

  • ← 3-1 集合:部分集合・共通部分・和集合・補集合の知識がすべての土台。命題の真偽は集合の包含関係に帰着する。
  • → 3-5 必要条件と十分条件:$p \Rightarrow q$ が真のとき $p$ は十分条件、$q$ は必要条件。この記事の「包含関係で判定する」考え方がそのまま活きる。
  • → 3-6 命題の証明:対偶法や背理法は、命題の否定と「ならば」の性質を組み合わせた証明技法。この記事が論理の基盤。
  • → 第6章 場合の数:「すべての場合を数え上げる」「条件を満たす場合を数え上げる」際に、集合と条件の考え方が不可欠。
  • → 数学II 整数の性質:整数に関する命題の証明(倍数・約数の関係、素数の性質など)では、$p \Rightarrow q$ の真偽判定と反例探しが頻出。

📋まとめ

  • 命題とは、正しいか正しくないかが明確に定まる文や式。真偽のどちらか一方が必ず定まる
  • 条件とは、変数に値を代入すると真偽が定まる文や式。真理集合を通じて集合の問題に変換できる
  • 条件 $p$ の真理集合 $P$ は、全体集合 $U$ の中で $p$ を真にする要素全体の集合
  • $p \Rightarrow q$ が真 $\Leftrightarrow$ $P \subset Q$。命題の真偽は集合の包含関係に帰着する
  • 反例とは $p$ を満たすが $q$ を満たさない例。偽を示すには1つで十分、真を示すにはすべてを確認する必要がある
  • 仮定の真理集合が空集合のとき、$p \Rightarrow q$ は自動的に真(空真)

確認テスト

Q1. 次のうち命題であるものをすべて選びなさい。(a) $7$ は素数 (b) $x > 5$ (c) 富士山は高い (d) $0$ は偶数

▶ クリックして解答を表示(a) と (d) が命題。(a) は真の命題($7 = 1 \times 7$ のみ)。(d) は真の命題(偶数の定義「$2$ の倍数」を満たす)。(b) は $x$ の値により真偽が変わるので条件。(c) は「高い」の基準が曖昧なので命題ではない。

Q2. $x$ を実数とする。条件 $p$:$|x| \leq 3$ の真理集合を求めなさい。

▶ クリックして解答を表示$P = \{x \mid -3 \leq x \leq 3\}$。$|x| \leq 3$ は $-3 \leq x \leq 3$ と同値。

Q3. 命題 $p \Rightarrow q$ が真であることを、真理集合 $P, Q$ を用いて表しなさい。

▶ クリックして解答を表示$P \subset Q$($P$ は $Q$ の部分集合)。$p$ を満たすすべての要素が $q$ を満たす、ということを集合の包含で表している。

Q4. 命題「$x^2 = 9$ ならば $x = 3$」の真偽を述べ、偽ならば反例を挙げなさい。$x$ は実数とする。

▶ クリックして解答を表示偽。反例:$x = -3$。$(-3)^2 = 9$ なので仮定を満たすが、$x = 3$ ではないので結論を満たさない。

Q5. 命題「$x^2 < 0$ ならば $x > 100$」は真ですか偽ですか。理由とともに答えなさい。$x$ は実数とする。

▶ クリックして解答を表示真。仮定 $x^2 < 0$ を満たす実数 $x$ は存在しない(真理集合 $P = \emptyset$)。$\emptyset \subset Q$ はどんな $Q$ に対しても成り立つので、命題は真。反例が1つも存在しないからである。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

3-4-1 A 基礎 命題の真偽 反例

$x$ は実数とする。次の命題の真偽を調べよ。偽のときは反例を挙げよ。

(1) $x = 3$ ならば $x^2 = 9$

(2) $x^2 = 16$ ならば $x = 4$

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) 真  (2) 偽(反例:$x = -4$)

解説

方針:真理集合の包含関係を調べる。偽なら仮定を満たすが結論を満たさない例を探す。

(1) $x = 3$ のとき、$x^2 = 9$ が成り立つ。$P = \{3\}$, $Q = \{3, -3\}$ で $P \subset Q$。よって真。

(2) $x^2 = 16$ の解は $x = 4, -4$。$P = \{4, -4\}$, $Q = \{4\}$。$-4 \in P$ だが $-4 \notin Q$ なので $P \not\subset Q$。よって偽。反例は $x = -4$。

3-4-2 A 基礎 真理集合 集合と命題

$x$ を実数とする。集合を利用して、命題「$|x - 1| < 2$ ならば $|x| < 3$」の真偽を調べよ。

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解答

解説

方針:各条件の真理集合を求め、包含関係を調べる。

$p$:$|x - 1| < 2$ より $-2 < x - 1 < 2$、すなわち $-1 < x < 3$。$P = \{x \mid -1 < x < 3\}$

$q$:$|x| < 3$ より $-3 < x < 3$。$Q = \{x \mid -3 < x < 3\}$

数直線上に表すと、$P = (-1, 3)$ は $Q = (-3, 3)$ に完全に含まれる。

よって $P \subset Q$ が成り立ち、命題は真。

B 標準レベル

3-4-3 B 標準 命題の真偽 論述

$x, y$ は実数とする。次の命題の真偽を調べよ。真の場合は証明し、偽の場合は反例を挙げよ。

(1) $x^2 + y^2 = 2xy$ ならば $x = y$

(2) $xy$ が有理数ならば $x, y$ はともに有理数

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解答

(1) 真  (2) 偽(反例:$x = \sqrt{2},\ y = \sqrt{2}$)

解説

(1) 方針:式を変形して結論を導く。

$x^2 + y^2 = 2xy$ より $x^2 - 2xy + y^2 = 0$、すなわち $(x - y)^2 = 0$。

実数の2乗が $0$ になるのは、その実数が $0$ のときに限るから、$x - y = 0$、すなわち $x = y$。

よって命題は真。

(2) 方針:反例を探す。「積が有理数だが、それぞれは無理数」となる例を考える。

$x = \sqrt{2},\ y = \sqrt{2}$ とすると、$xy = 2$ は有理数。しかし $x, y$ はどちらも無理数。

よって命題は偽。

採点ポイント
  • (1) $(x-y)^2 = 0$ への変形(3点)
  • (1) 実数の2乗が $0 \Leftrightarrow$ その値が $0$ の説明(2点)
  • (2) 仮定を満たし結論を満たさない適切な反例(3点)
  • (2) 反例が反例であることの確認(2点)

C 発展レベル

3-4-4 C 発展 反例と定数決定 論述

$a$ を整数とする。命題「$a < x < a + 4 \Rightarrow x \leq 5 - 2a$」が偽であり、$x = 3$ がこの命題の反例であるとき、$a$ の値を求めよ。

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解答

$a = 2$

解説

方針:$x = 3$ が反例であるとは、$x = 3$ が仮定を満たし、かつ結論を満たさないこと。この2つの条件から $a$ を求める。

条件[1]:$x = 3$ は仮定 $a < x < a + 4$ を満たす。

$a < 3 < a + 4$ より $a < 3$ かつ $3 < a + 4$、すなわち $-1 < a < 3$ ...... ①

条件[2]:$x = 3$ は結論 $x \leq 5 - 2a$ を満たさない。

$3 > 5 - 2a$ より $2a > 2$、すなわち $a > 1$ ...... ②

①, ② の共通範囲は $1 < a < 3$。$a$ は整数なので $a = 2$。

検算:$a = 2$ のとき、仮定は $2 < x < 6$、結論は $x \leq 1$。$x = 3$ は $2 < 3 < 6$ を満たすが $3 \leq 1$ は満たさない。確かに反例。

採点ポイント
  • 「反例」の定義を正しく理解し、2条件に分解できている(3点)
  • 条件[1] の不等式処理が正しい(2点)
  • 条件[2] の不等式処理が正しい(2点)
  • $a$ が整数であることを用いた結論(2点)
  • 検算(1点)