第3章 集合と命題

集合の演算とド・モルガンの法則
─ 「かつ」「または」「でない」を数学で扱う

集合の演算は、日常の「かつ」「または」を正確に扱うための数学的道具です。
ベン図で直感をつかみ、ド・モルガンの法則の「なぜ」を理解すれば、命題の証明にも自在に使えるようになります。

1共通部分と和集合 ─ $\cap$ と $\cup$

3-1で「集合とは何か」「部分集合とは何か」を学びました。 ここからは、2つ以上の集合を組み合わせて新しい集合を作る操作、つまり集合の演算を学びます。

日常会話で「AかつB」「AまたはB」という言い方をしますが、これを数学的に正確に定義するのが、 共通部分和集合です。

共通部分 $A \cap B$

2つの集合 $A$ と $B$ の共通部分(交わり)とは、 $A$ にも $B$ にも属する要素を全部集めた集合です。記号 $\cap$(キャップ)を使って書きます。

$$A \cap B = \{x \mid x \in A \text{ かつ } x \in B\}$$

たとえば $A = \{1, 2, 3, 4, 6\}$、$B = \{1, 2, 4, 8\}$ のとき、 両方に属する要素は $1, 2, 4$ なので $A \cap B = \{1, 2, 4\}$ です。

和集合 $A \cup B$

2つの集合 $A$ と $B$ の和集合(結び)とは、 $A$ または $B$ の少なくとも一方に属する要素を全部集めた集合です。 記号 $\cup$(カップ)を使って書きます。

$$A \cup B = \{x \mid x \in A \text{ または } x \in B\}$$

同じ例で、$A \cup B = \{1, 2, 3, 4, 6, 8\}$ です。 注意すべきは、$1, 2, 4$ は $A$ にも $B$ にも属しますが、和集合では重複して数えないということです。

💡 ここが本質:$\cap$ は「かつ」、$\cup$ は「または」

集合の演算は、論理の「かつ(AND)」「または(OR)」を集合の言葉に翻訳したものです。

$A \cap B$:「$A$ に属する かつ $B$ に属する」要素の集合

$A \cup B$:「$A$ に属する または $B$ に属する」要素の集合

記号の覚え方:$\cap$ は上が閉じていて「狭い」イメージ(両方を満たすから条件が厳しい)。 $\cup$ は上が開いていて「広い」イメージ(どちらか一方でよいから条件がゆるい)。

⚠️ 落とし穴:数学の「または」は日常の「または」と違う

✕ 誤:「$A$ または $B$」は「$A$ か $B$ のどちらか一方のみ」

○ 正:数学の「または」は「少なくとも一方」。両方に属していてもよい。

日常語の「コーヒーまたは紅茶」は「どちらか一方」の意味で使うことが多いですが、 数学の「$x \in A$ または $x \in B$」は「両方に属する場合も含む」のです。 $A \cap B \neq \emptyset$ のとき、共通部分の要素は $A \cup B$ にも含まれます。

📐 共通部分と和集合の定義

共通部分:$A \cap B = \{x \mid x \in A \text{ かつ } x \in B\}$

和集合:$A \cup B = \{x \mid x \in A \text{ または } x \in B\}$

※ 「かつ」は条件を厳しくする(集合は小さくなる)。「または」は条件をゆるくする(集合は大きくなる)。 つまり $A \cap B \subseteq A \subseteq A \cup B$ が常に成り立ちます。

3つ以上の集合の演算

3つの集合 $A, B, C$ に対しても、共通部分と和集合を考えることができます。

$A \cap B \cap C = \{x \mid x \in A \text{ かつ } x \in B \text{ かつ } x \in C\}$ は、 3つすべてに属する要素の集合。 $A \cup B \cup C = \{x \mid x \in A \text{ または } x \in B \text{ または } x \in C\}$ は、 少なくとも1つに属する要素の集合です。

⚠️ 落とし穴:$\cap$ と $\cup$ の記号を取り違える

✕ 誤:$A \cup B$ を「$A$ と $B$ の両方に属する要素」と読んでしまう

○ 正:$A \cup B$ は「少なくとも一方」、$A \cap B$ が「両方」

$\cap$ はアルファベットの「n」に似ていて、「intersection(交わり)」の頭文字と覚えると混乱しにくくなります。 $\cup$ は「union(和)」の「u」に似ています。

🔬 深掘り:集合演算とプログラミングの論理演算

集合の $\cap$(かつ)と $\cup$(または)は、プログラミングの論理演算子 ANDOR にそのまま対応します。 Python では set_a & set_b(共通部分)、set_a | set_b(和集合)と書きます。

データベースの SQL でも、WHERE 句の ANDOR は集合の $\cap$ と $\cup$ と同じ意味です。 集合の演算は、情報科学の基礎そのものです。

2補集合 ─ 全体集合からの引き算

集合の演算をするとき、まず全体集合を決める必要があります。 全体集合とは、「いま考えている要素の全体」を表す集合で、記号 $U$ で表します。

たとえば「10以下の正の整数」を全体集合とするなら $U = \{1, 2, 3, \dots, 10\}$ です。 この中で、「3の倍数の集合」$A = \{3, 6, 9\}$ のように、$U$ の部分集合だけを考えます。

補集合 $\overline{A}$ の定義

全体集合 $U$ の部分集合 $A$ に対して、$A$ の補集合とは、 $U$ の要素のうち $A$ に属さないもの全体の集合です。$\overline{A}$ で表します。

$$\overline{A} = \{x \mid x \in U \text{ かつ } x \notin A\}$$

上の例で $A = \{3, 6, 9\}$ なら、$\overline{A} = \{1, 2, 4, 5, 7, 8, 10\}$ です。 「$A$ でないもの」を集めた集合、と考えればわかりやすいでしょう。

💡 ここが本質:補集合は「否定」の集合版

論理の世界で「$p$ でない」(否定 $\overline{p}$)があるように、 集合の世界では「$A$ に属さない」(補集合 $\overline{A}$)があります。

$\cap$ = 「かつ」、$\cup$ = 「または」、$\overline{\phantom{A}}$ = 「でない」。 集合の3つの演算は、論理の3つの結合子(AND, OR, NOT)にぴったり対応しています。

この対応を意識すると、第3章後半の「命題と条件」で集合の言葉がそのまま使えるようになります。

補集合の基本性質

補集合には、直感的に明らかな性質がいくつかあります。

📐 補集合の基本性質

(1) $A \cap \overline{A} = \emptyset$ ($A$ に属し、かつ $A$ に属さない要素は存在しない)

(2) $A \cup \overline{A} = U$ ($A$ に属するか属さないか、必ずどちらか一方)

(3) $\overline{(\overline{A})} = A$ (「$A$ でない」の「でない」は $A$ に戻る)

(4) $\overline{U} = \emptyset$, $\overline{\emptyset} = U$

※ (1)と(2)は「$A$ と $\overline{A}$ で $U$ を過不足なく分割する」ことを意味します。
▷ 性質(3)の証明:$\overline{(\overline{A})} = A$

$\overline{A} = \{x \mid x \in U \text{ かつ } x \notin A\}$ なので、

$\overline{(\overline{A})} = \{x \mid x \in U \text{ かつ } x \notin \overline{A}\}$

$x \notin \overline{A}$ とは「$x$ は $U$ に属しかつ $A$ に属さない、ということはない」こと。 $x \in U$ の前提のもとでは、$x \notin \overline{A}$ は $x \in A$ と同値です。

よって $\overline{(\overline{A})} = \{x \mid x \in U \text{ かつ } x \in A\} = A$。 ($A \subseteq U$ なので $x \in A$ ならば自動的に $x \in U$)

⚠️ 落とし穴:全体集合を忘れて補集合を考えてしまう

✕ 誤:$A = \{2, 4, 6\}$ の補集合は $\{1, 3, 5, 7, 8, \dots\}$(全体集合が不明)

○ 正:補集合は全体集合 $U$ が決まって初めて定義できる。 $U = \{1, 2, \dots, 8\}$ なら $\overline{A} = \{1, 3, 5, 7, 8\}$。$U = \{1, 2, \dots, 10\}$ なら $\overline{A} = \{1, 3, 5, 7, 8, 9, 10\}$。

全体集合が変われば補集合も変わります。問題文で全体集合が指定されているか、必ず確認しましょう。

3ベン図の活用 ─ 集合を視覚化する

集合の関係を視覚的にとらえるのに最も有効なツールが、ベン図(Venn diagram)です。 長方形で全体集合 $U$ を表し、その中に円で集合 $A$, $B$ などを描きます。

ベン図を使えば、$A \cap B$(円の重なり部分)、$A \cup B$(円全体)、$\overline{A}$(円の外側)が 一目で把握できます。

ベン図で集合演算を確認する

全体集合 $U = \{1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9\}$ とし、$A = \{1, 2, 3, 4, 6\}$、$B = \{1, 3, 5, 6, 9\}$ とします。 ベン図上に要素を書き込んで、各集合を確認してみましょう。

  • $A$ だけに属する要素:$2, 4$
  • $B$ だけに属する要素:$5, 9$
  • $A \cap B$(共通部分):$\{1, 3, 6\}$
  • $A \cup B$(和集合):$\{1, 2, 3, 4, 5, 6, 9\}$
  • $\overline{A}$($A$ の補集合):$\{5, 7, 8, 9\}$
  • $\overline{B}$($B$ の補集合):$\{2, 4, 7, 8\}$
  • $U$ のうち $A$ にも $B$ にも属さない要素:$7, 8$
💡 ここが本質:ベン図は「4つの領域」に分かれる

2つの集合 $A$, $B$ のベン図を描くと、$U$ の要素は必ず次の4つの領域のどれか1つに属します。

(i) $A$ にも $B$ にも属する($A \cap B$)

(ii) $A$ のみに属する($A \cap \overline{B}$)

(iii) $B$ のみに属する($\overline{A} \cap B$)

(iv) どちらにも属さない($\overline{A} \cap \overline{B}$)

この4領域は互いに重なりがなく、合わせると $U$ 全体になります。 集合の問題を解くとき、この「4領域」を意識すると整理しやすくなります。

要素の個数とベン図

有限集合 $A$ の要素の個数を $n(A)$ で表します。ベン図の4領域を使うと、 和集合の要素の個数について次の重要な公式が導けます。

📐 和集合の要素の個数

$$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B)$$

※ $n(A) + n(B)$ では共通部分 $A \cap B$ の要素を2回数えてしまうので、1回分を引く。 ベン図を描けば、この公式が「足しすぎた分を引いている」だけだと一目でわかります。

また、補集合の個数は $n(\overline{A}) = n(U) - n(A)$ です。 「全体から引く」という考え方は、場合の数(数学A)でも非常によく使います。

⚠️ 落とし穴:$n(A \cup B) = n(A) + n(B)$ と思い込む

✕ 誤:$n(A) = 5$, $n(B) = 4$ だから $n(A \cup B) = 9$

○ 正:$A \cap B \neq \emptyset$ のとき、$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B)$。 共通部分があれば和集合の個数は $n(A) + n(B)$ より小さくなる。

$n(A \cup B) = n(A) + n(B)$ が成り立つのは、$A \cap B = \emptyset$(共通部分がない)の場合だけです。 問題で $A \cap B = \emptyset$ が明示されていないかぎり、$n(A \cap B)$ を引くのを忘れないようにしましょう。

🔬 深掘り:包除原理 ── 3つ以上の集合への一般化

3つの集合の場合、和集合の個数は次の包除原理(inclusion-exclusion principle)で求められます。

$$n(A \cup B \cup C) = n(A) + n(B) + n(C) - n(A \cap B) - n(B \cap C) - n(A \cap C) + n(A \cap B \cap C)$$

「全部足して、2つの共通部分を引いて、3つの共通部分を足し戻す」。 $n$ 個の集合に対しても同様のパターンが続きます。包除原理は組合せ論や確率論の基本ツールとして、 大学数学やコンピュータサイエンスで広く使われています。

4ド・モルガンの法則 ─ 補集合と演算の関係

補集合と共通部分・和集合の間には、非常に美しい関係があります。 それがド・モルガンの法則です。

📐 ド・モルガンの法則

全体集合 $U$ の部分集合 $A$, $B$ に対して、

(1) $\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}$

(2) $\overline{A \cap B} = \overline{A} \cup \overline{B}$

※ 補集合をとると、$\cup$ と $\cap$ が入れ替わる。「でない」をかぶせると「または」と「かつ」が逆転する。

この法則は一見すると覚えにくいですが、日本語に翻訳すると自然に理解できます。

💡 ここが本質:ド・モルガンの法則を日本語で読む

(1) $\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}$

「$A$ または $B$ に属する」の否定は、「$A$ に属さない かつ $B$ に属さない」

(2) $\overline{A \cap B} = \overline{A} \cup \overline{B}$

「$A$ かつ $B$ に属する」の否定は、「$A$ に属さない または $B$ に属さない」

日本語で読めば当たり前のことです。「りんごもみかんも好き」の否定は 「りんごが嫌い、または、みかんが嫌い(少なくとも一方が嫌い)」。 「でない」をつけると「かつ」と「または」が入れ替わる。これがド・モルガンの法則の本質です。

ベン図で確認する

法則(1) $\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}$ をベン図で確認しましょう。

左辺 $\overline{A \cup B}$:まず $A \cup B$($A$ と $B$ のどちらかに属する部分)を考え、その補集合をとる。 つまり「$A$ にも $B$ にも属さない部分」。

右辺 $\overline{A} \cap \overline{B}$:$\overline{A}$($A$ の外)と $\overline{B}$($B$ の外)の共通部分。 つまり「$A$ の外であり、かつ $B$ の外でもある部分」。

ベン図上で両方とも同じ領域(Section 3で述べた4領域のうち (iv) の部分)を指していることが確認できます。

ド・モルガンの法則の証明

ベン図での「確認」だけでなく、要素の帰属関係を追う「証明」も重要です。 2つの集合が等しいことを示すには、「左辺の要素は右辺に属する」「右辺の要素は左辺に属する」の両方向を示します。

▷ ド・モルガンの法則(1)の証明:$\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}$

[$\overline{A \cup B} \subseteq \overline{A} \cap \overline{B}$ の証明]

$x \in \overline{A \cup B}$ とする。このとき $x \notin A \cup B$。

$A \cup B$ の定義より、「$x \in A$ または $x \in B$」が成り立たない。

よって「$x \notin A$ かつ $x \notin B$」。

すなわち $x \in \overline{A}$ かつ $x \in \overline{B}$。したがって $x \in \overline{A} \cap \overline{B}$。

[$\overline{A} \cap \overline{B} \subseteq \overline{A \cup B}$ の証明]

$x \in \overline{A} \cap \overline{B}$ とする。このとき $x \in \overline{A}$ かつ $x \in \overline{B}$。

すなわち $x \notin A$ かつ $x \notin B$。

よって「$x \in A$ または $x \in B$」は成り立たない。すなわち $x \notin A \cup B$。

したがって $x \in \overline{A \cup B}$。

以上より $\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}$。 $\square$

法則(2)も同様に証明できます。あるいは、法則(1)で $A$ を $\overline{A}$、$B$ を $\overline{B}$ に置き換え、 $\overline{(\overline{A})} = A$ を使うことでも導けます。

ド・モルガンの法則の活用例

$U = \{1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9\}$、$A = \{1, 2, 3, 4, 6\}$、$B = \{1, 3, 5, 6, 9\}$ のとき、 $\overline{A \cup B}$ を求めてみましょう。

方法1(直接):$A \cup B = \{1, 2, 3, 4, 5, 6, 9\}$ なので $\overline{A \cup B} = \{7, 8\}$。

方法2(ド・モルガン):$\overline{A} = \{5, 7, 8, 9\}$、$\overline{B} = \{2, 4, 7, 8\}$ なので $\overline{A} \cap \overline{B} = \{7, 8\}$。

どちらの方法でも同じ結果になります。 要素が多い場合や $A \cup B$ を直接求めるのが大変な場合は、ド・モルガンの法則を使うほうが効率的です。

⚠️ 落とし穴:$\overline{A \cup B} = \overline{A} \cup \overline{B}$ と書いてしまう

✕ 誤:$\overline{A \cup B} = \overline{A} \cup \overline{B}$(補集合をとっても $\cup$ のまま)

○ 正:$\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}$($\cup$ が $\cap$ に変わる

ド・モルガンの法則の核心は「$\cup$ と $\cap$ が入れ替わる」ことです。 補集合をとるときに演算記号をそのまま残してしまうのは、最も多い間違いです。 迷ったら日本語に戻しましょう。「$A$ または $B$」の否定は「$A$ でない かつ $B$ でない」です。

5この章を俯瞰する

ここまで、集合の3つの演算($\cap$, $\cup$, 補集合)と、それらの間の関係(ド・モルガンの法則)を学びました。 最後に、集合の演算が数学全体でどのように使われるかを整理しましょう。

演算の対応表

日本語集合の記号論理の記号意味
かつ$A \cap B$$p \land q$両方を満たす
または$A \cup B$$p \lor q$少なくとも一方を満たす
でない$\overline{A}$$\overline{p}$否定
ド・モルガン$\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}$$\overline{p \lor q} = \overline{p} \land \overline{q}$否定で演算が逆転

集合と論理は「同じ構造を持つ2つの言語」です。 集合で成り立つ法則は、そのまま論理でも成り立ちます。 この対応を理解しておくと、命題の証明(3-3)で大いに役立ちます。

つながりマップ

  • ← 3-1 集合:集合の定義・部分集合・空集合がこの記事の前提。集合の「言葉」を演算に発展させたのがこの記事。
  • → 3-3 命題と条件:集合の $\cap$, $\cup$, 補集合は、命題の「かつ」「または」「否定」に直結。ド・モルガンの法則は命題の否定で必須。
  • → 3-4 命題の証明:対偶を用いた証明は、「$A \subseteq B \Leftrightarrow \overline{B} \subseteq \overline{A}$」という集合の性質に基づく。
  • → 第6章 場合の数:$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B)$ は場合の数の「和の法則」と包除原理の基礎。
  • → 第7章 確率:事象は集合として扱われる。$P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)$(加法定理)は和集合の公式そのもの。

📋まとめ

  • 共通部分 $A \cap B$:$A$ にも $B$ にも属する要素の集合(「かつ」に対応)
  • 和集合 $A \cup B$:$A$ または $B$ の少なくとも一方に属する要素の集合(「または」に対応)
  • 補集合 $\overline{A}$:全体集合 $U$ のうち $A$ に属さない要素の集合(「でない」に対応)
  • ド・モルガンの法則:$\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}$、$\overline{A \cap B} = \overline{A} \cup \overline{B}$。否定をとると $\cap$ と $\cup$ が入れ替わる
  • 和集合の個数:$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B)$。共通部分を引くのを忘れない
  • 集合の演算と論理の演算は同じ構造をもつ。集合で学んだ法則は命題・条件にそのまま使える

確認テスト

Q1. $A = \{1, 3, 5, 7\}$, $B = \{2, 3, 5, 8\}$ のとき、$A \cap B$ と $A \cup B$ を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$A \cap B = \{3, 5\}$(両方に属する要素)。$A \cup B = \{1, 2, 3, 5, 7, 8\}$(少なくとも一方に属する要素)。

Q2. $U = \{1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8\}$, $A = \{2, 4, 6, 8\}$ のとき、$\overline{A}$ を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$\overline{A} = \{1, 3, 5, 7\}$。$U$ の要素のうち $A$ に属さないもの全体。

Q3. ド・モルガンの法則 $\overline{A \cap B} = \overline{A} \cup \overline{B}$ を日本語で言い換えてください。

▶ クリックして解答を表示「$A$ かつ $B$ に属する」の否定は「$A$ に属さない、または $B$ に属さない(少なくとも一方に属さない)」。

Q4. $n(A) = 10$, $n(B) = 8$, $n(A \cap B) = 3$ のとき、$n(A \cup B)$ はいくつですか?

▶ クリックして解答を表示$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B) = 10 + 8 - 3 = 15$

Q5. 2つの集合 $A$, $B$ のベン図を描くと、$U$ の要素は何個の領域に分かれますか? それぞれを記号で表してください。

▶ クリックして解答を表示4つの領域。$A \cap B$(両方に属する)、$A \cap \overline{B}$($A$ のみ)、$\overline{A} \cap B$($B$ のみ)、$\overline{A} \cap \overline{B}$(どちらにも属さない)。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

3-2-1 A 基礎 集合の演算 補集合

$U = \{x \mid x \text{ は10以下の正の整数}\}$ を全体集合とする。 $A = \{1, 2, 4, 5, 10\}$, $B = \{2, 5, 6, 8, 10\}$ のとき、 次の集合を求めよ。

(1) $A \cap B$  (2) $A \cup B$  (3) $\overline{A}$  (4) $\overline{A} \cap \overline{B}$

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $A \cap B = \{2, 5, 10\}$

(2) $A \cup B = \{1, 2, 4, 5, 6, 8, 10\}$

(3) $\overline{A} = \{3, 6, 7, 8, 9\}$

(4) $\overline{A} \cap \overline{B} = \{3, 7, 9\}$

解説

方針:$U$ の要素を書き出し、ベン図に整理して各領域の要素を確認する。

(1) $A$ にも $B$ にも属する要素は $2, 5, 10$。

(2) $A$ または $B$ の少なくとも一方に属する要素をすべて集める。

(3) $U$ の要素のうち $A$ に属さないもの:$3, 6, 7, 8, 9$。

(4) $\overline{B} = \{1, 3, 4, 7, 9\}$ なので、$\overline{A} \cap \overline{B} = \{3, 7, 9\}$。

※ (4) はド・モルガンの法則より $\overline{A \cup B}$ に等しい。実際、$U \setminus (A \cup B) = \{3, 7, 9\}$ と一致。

3-2-2 A 基礎 要素の個数 和集合

100人の生徒に、英語と数学の好きな教科を調査したところ、英語が好きな生徒は65人、 数学が好きな生徒は48人、両方好きな生徒は30人であった。 英語も数学も好きでない生徒は何人か。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$17$ 人

解説

方針:英語が好きな生徒の集合を $A$、数学が好きな生徒の集合を $B$ とし、和集合の個数公式を使う。

$n(A) = 65$, $n(B) = 48$, $n(A \cap B) = 30$

$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B) = 65 + 48 - 30 = 83$

英語も数学も好きでない生徒は $\overline{A} \cap \overline{B} = \overline{A \cup B}$(ド・モルガンの法則)。

$n(\overline{A \cup B}) = n(U) - n(A \cup B) = 100 - 83 = 17$(人)

B 標準レベル

3-2-3 B 標準 ド・モルガン 不等式

全体集合を実数全体の集合とする。 $A = \{x \mid -1 \leq x \leq 5\}$, $B = \{x \mid 2 < x < 8\}$ のとき、 $\overline{A} \cup \overline{B}$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$\overline{A} \cup \overline{B} = \{x \mid x < -1 \text{ または } x > 5 \text{ または } x \leq 2\}$

整理すると:$\overline{A} \cup \overline{B} = \{x \mid x \leq 2 \text{ または } x > 5\}$

解説

方針:ド・モルガンの法則 $\overline{A} \cup \overline{B} = \overline{A \cap B}$ を使い、$A \cap B$ を先に求める。

$A \cap B = \{x \mid -1 \leq x \leq 5\} \cap \{x \mid 2 < x < 8\} = \{x \mid 2 < x \leq 5\}$

$\overline{A \cap B} = \{x \mid x \leq 2 \text{ または } x > 5\}$

ド・モルガンの法則より $\overline{A} \cup \overline{B} = \overline{A \cap B} = \{x \mid x \leq 2 \text{ または } x > 5\}$

⚠️ $\overline{A}$ と $\overline{B}$ を個別に求めて和集合を取る方法でも解けますが、 ド・モルガンの法則を使うと計算が簡潔になります。

採点ポイント
  • ド・モルガンの法則の適用(2点)
  • $A \cap B$ を正しく求める(3点)
  • 補集合を正しく求める(3点)
  • 不等号(等号の有無)が正確(2点)

C 発展レベル

3-2-4 C 発展 要素の個数 包含関係 論述

全体集合 $U$ の部分集合 $A$, $B$ について、$n(U) = 50$, $n(A) = 30$, $n(B) = 25$ であるとき、

(1) $n(A \cap B)$ のとりうる値の範囲を求めよ。

(2) $n(\overline{A} \cap \overline{B})$ のとりうる値の範囲を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $5 \leq n(A \cap B) \leq 25$

(2) $0 \leq n(\overline{A} \cap \overline{B}) \leq 20$

解説

方針:$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B)$ と、$A \cup B \subseteq U$ の制約を使う。

(1) $n(A \cup B) = 30 + 25 - n(A \cap B) = 55 - n(A \cap B)$

$A \cup B \subseteq U$ より $n(A \cup B) \leq 50$。よって $55 - n(A \cap B) \leq 50$。すなわち $n(A \cap B) \geq 5$。

また、$A \cap B \subseteq B$ より $n(A \cap B) \leq n(B) = 25$。 同様に $A \cap B \subseteq A$ より $n(A \cap B) \leq 30$ だが、25のほうが厳しい。

よって $5 \leq n(A \cap B) \leq 25$。

(2) ド・モルガンの法則より $\overline{A} \cap \overline{B} = \overline{A \cup B}$。

$n(\overline{A} \cap \overline{B}) = n(\overline{A \cup B}) = n(U) - n(A \cup B) = 50 - (55 - n(A \cap B)) = n(A \cap B) - 5$

$n(A \cap B)$ の範囲は (1) より $5 \leq n(A \cap B) \leq 25$ なので、 $0 \leq n(A \cap B) - 5 \leq 20$。

よって $0 \leq n(\overline{A} \cap \overline{B}) \leq 20$。

採点ポイント
  • 和集合の個数公式の適用(2点)
  • $n(A \cup B) \leq n(U)$ の制約を用いて下限を導出(3点)
  • $n(A \cap B) \leq \min(n(A), n(B))$ で上限を導出(2点)
  • (2) でド・モルガンの法則を利用して (1) に帰着(3点)