第2章 2次関数

解の配置問題(応用・解の分離)
─ 「解がどこにあるか」を制御する

2-7では2つの解がともにある値より大きい(小さい)場合を扱いました。
本節では、2つの解がある値をはさむ場合や、特定の区間に解が存在する場合など、 より複雑な解の配置条件を学びます。逆像法(定数分離)という強力な別解法も登場します。

1解の分離とは ─ 「$k$ をはさむ」条件

2-7で学んだ「2つの解がともに $k$ より大きい」条件では、判別式・軸の位置・端点の値の 3つの条件が必要でした。では、2つの解が $k$ をはさむ (1つは $k$ より大きく、もう1つは $k$ より小さい)場合はどうでしょうか。

実は、この場合の条件は驚くほどシンプルです。 2次方程式 $ax^2 + bx + c = 0$($a > 0$)の2つの実数解が $x = k$ をはさむとき、 $f(x) = ax^2 + bx + c$ のグラフ(下に凸の放物線)は $x = k$ で $x$ 軸の下側にあります。 つまり、$f(k) < 0$ が条件のすべてです。

💡 ここが本質:$f(k) < 0$ だけで判別式と軸は不要

$a > 0$ のとき、$f(k) < 0$ ならば放物線は $x = k$ で $x$ 軸より下にあります。 下に凸の放物線が $x$ 軸より下に潜り込むということは、 必ず $x = k$ の左右で $x$ 軸を1回ずつ横切ることを意味します。

したがって、判別式 $D > 0$(2つの実数解を持つこと)も、 軸の位置の条件も、$f(k) < 0$ から自動的に満たされます

2-7の「ともに $k$ より大きい」では3条件が必要だったのに、 「$k$ をはさむ」では1条件で済む。この非対称性を理解することが、解の配置問題の核心です。

なぜ1条件で十分なのか ── グラフで考える

下に凸の放物線 $y = f(x)$ について、$f(k) < 0$ が成り立つ場合を考えましょう。 放物線は $x \to \pm\infty$ で $y \to +\infty$ に発散します。 一方、$x = k$ では $y < 0$ です。

ということは、$x = k$ から左に進むとどこかで $y = 0$($x$ 軸)を横切り、 $x = k$ から右に進んでもどこかで $y = 0$ を横切ります。 つまり、$x < k$ と $x > k$ にそれぞれ1つずつ解が存在するのです。

この議論から、$f(k) < 0$ であれば自動的に以下が保証されます。

  • $x$ 軸と2点で交わる($D > 0$ に相当)
  • 1つの解は $k$ より左、もう1つは $k$ より右(解の分離に相当)
⚠️ 落とし穴:$x^2$ の係数が負のとき不等号が逆転する

✕ 誤:$-x^2 + 3x - 1 = 0$ の解が $x = 2$ をはさむ条件は $f(2) < 0$

○ 正:$a < 0$(上に凸)のとき、解が $k$ をはさむ条件は $f(k) > 0$ です。

上に凸の放物線は $x \to \pm\infty$ で $y \to -\infty$ に発散するので、 $f(k) > 0$ ならば $x = k$ の左右でそれぞれ $x$ 軸を横切ります。

一般に、解が $k$ をはさむ条件は $a \cdot f(k) < 0$($a$ と $f(k)$ が異符号)と書けます。 $a > 0$ なら $f(k) < 0$、$a < 0$ なら $f(k) > 0$ です。

具体例で確認する

2次方程式 $x^2 - ax + a^2 - 7 = 0$ の異なる2つの実数解のうち、 1つは $2$ より大きく、もう1つは $2$ より小さくなるような定数 $a$ の値の範囲を求めましょう。

▷ 解法のステップ

Step 1:$f(x) = x^2 - ax + a^2 - 7$ とおく。$x^2$ の係数は $1 > 0$(下に凸)。

Step 2:2つの解が $x = 2$ をはさむ条件は $f(2) < 0$。

$$f(2) = 4 - 2a + a^2 - 7 = a^2 - 2a - 3 < 0$$

Step 3:$a^2 - 2a - 3 < 0$ を解く。

$(a - 3)(a + 1) < 0$ より $-1 < a < 3$。

結論:$-1 < a < 3$

⚠️ 落とし穴:解の分離なのに判別式を計算してしまう

✕ 誤:まず $D > 0$ を求めて...次に軸の条件を...そして $f(2) < 0$ を...と3条件を連立する。

○ 正:「$k$ をはさむ」型では $f(k) < 0$($a > 0$ のとき)だけで十分。 不要な条件を追加しても間違いではありませんが、計算が無駄に増え、時間を浪費します。

ただし注意点があります。もし問題文が「異なる2つの実数解」と明記していて、 $f(k) < 0$ の条件だけでは実数解の存在が自動的に保証されない場合($a < 0$ の場合など)は、 判別式の確認が必要になることがあります。$a > 0$ で $f(k) < 0$ のときだけ、1条件で完結します。

🔬 深掘り:中間値の定理 ── 解の存在を保証する原理

「$f(k) < 0$ ならば $k$ の左右に解がある」という議論の背景には、 大学数学で学ぶ中間値の定理があります。

連続関数 $f(x)$ について、$f(a)$ と $f(b)$ が異符号ならば、 $a$ と $b$ の間に $f(c) = 0$ となる $c$ が少なくとも1つ存在する、という定理です。

2次関数は連続関数であり、$a > 0$ のとき十分大きな $x$ で $f(x) > 0$ です。 $f(k) < 0$ であれば、$k$ と十分大きな値の間で符号が変わるので解が存在します。 $k$ と十分小さな値の間でも同様です。高校ではこの定理を厳密には学びませんが、 グラフの「つながり」から直感的に理解できる重要な性質です。

2「1つの解が $\alpha$ 以上、もう1つが $\beta$ 以下」型

Section 1の「$k$ をはさむ」を一般化しましょう。 1つの解が区間 $(\alpha, \beta)$ に、もう1つの解がその外にある場合や、 2つの解がそれぞれ異なる区間に属する場合を考えます。

パターンA:2つの解が $\alpha$ と $\beta$ の間にある

$f(x) = ax^2 + bx + c$($a > 0$)の2つの解がともに区間 $(\alpha, \beta)$ に含まれる条件は、 2-7で学んだように、以下の3条件が必要です。

  • $D \geq 0$(実数解の存在)
  • $\alpha < $ 軸 $ < \beta$(軸が区間内)
  • $f(\alpha) > 0$ かつ $f(\beta) > 0$(両端で正)

パターンB:2つの解が $k$ をはさむ(Section 1の復習)

必要な条件は $f(k) < 0$($a > 0$ のとき)の1つだけです。

パターンC:1つの解が $(\alpha, \beta)$ に、もう1つが別の区間に

たとえば「1つの解が $-2$ と $0$ の間にあり、もう1つの解が $0$ と $1$ の間にある」 という条件を考えます。これは端点での符号条件に帰着できます。

💡 ここが本質:「解が区間の間にある」は端点の符号で判定する

$a > 0$ のとき、$f(x) = 0$ の1つの解が $(\alpha, \beta)$ に、 もう1つの解が $(\gamma, \delta)$ にある条件は、 各区間の端点で放物線が $x$ 軸の上下を行き来することから導けます。

具体的に、1つの解が $(\alpha, \beta)$ に、もう1つが $(\gamma, \delta)$ にある ($\alpha < \beta \leq \gamma < \delta$)とき:

$f(\alpha) > 0$, $f(\beta) < 0$, $f(\gamma) < 0$, $f(\delta) > 0$

ただし、$\beta = \gamma$ の場合(2つの区間が隣接する場合)は、 $f(\beta)$ の条件が2つの不等式に共通するので、 $f(\alpha) > 0$, $f(\beta) < 0$, $f(\delta) > 0$ の3条件にまとめられます。

具体例:2つの区間に1つずつ解がある場合

$x$ についての2次方程式 $x^2 + (a-1)x - a^2 + 2 = 0$ の1つの解が $-2$ と $0$ の間にあり、 もう1つの解が $0$ と $1$ の間にあるような定数 $a$ の値の範囲を求めましょう。

▷ 解法のステップ

Step 1:$f(x) = x^2 + (a-1)x - a^2 + 2$ とおく。$x^2$ の係数は $1 > 0$(下に凸)。

Step 2:条件を端点の符号で表す。

$-2 < \alpha < 0$ かつ $0 < \beta < 1$($\alpha, \beta$ は2つの解)であるから、 グラフが $x = -2$, $x = 1$ で $x$ 軸の上に、$x = 0$ で $x$ 軸の下にあればよい。

Step 3:各条件を計算する。

$f(-2) = 4 - 2(a-1) - a^2 + 2 = -a^2 - 2a + 8 > 0$

$\Rightarrow a^2 + 2a - 8 < 0 \Rightarrow (a+4)(a-2) < 0 \Rightarrow -4 < a < 2$ ... (1)

$f(0) = -a^2 + 2 < 0$

$\Rightarrow a^2 > 2 \Rightarrow a < -\sqrt{2}$ または $a > \sqrt{2}$ ... (2)

$f(1) = 1 + (a-1) - a^2 + 2 = -a^2 + a + 2 > 0$

$\Rightarrow a^2 - a - 2 < 0 \Rightarrow (a-2)(a+1) < 0 \Rightarrow -1 < a < 2$ ... (3)

Step 4:(1), (2), (3) の共通部分を求める。

$-4 < a < 2$ かつ ($a < -\sqrt{2}$ または $a > \sqrt{2}$) かつ $-1 < a < 2$

$-1 < a < 2$ と $a > \sqrt{2}$ の共通部分:$\sqrt{2} < a < 2$

結論:$\sqrt{2} < a < 2$

⚠️ 落とし穴:端点の符号条件を逆に書く

✕ 誤:「解が $(-2, 0)$ にあるから $f(-2) < 0$ かつ $f(0) < 0$」

○ 正:下に凸の放物線が区間内で $x$ 軸を横切るには、 区間の両端で符号が異なる必要があります。 $f(-2) > 0$ かつ $f(0) < 0$、または $f(-2) < 0$ かつ $f(0) > 0$ です。

どちらが正しいかは、区間の配置を考えます。解が $(-2, 0)$ と $(0, 1)$ に1つずつあるなら、 $x = 0$ では放物線が $x$ 軸の下($f(0) < 0$)にあり、 $x = -2$ と $x = 1$ では上($f(-2) > 0, f(1) > 0$)にあるのが正しい配置です。

⚠️ 落とし穴:判別式・軸の条件を余分に課す

パターンCでは、端点の符号条件だけで解の存在が保証されます。

✕ 誤:端点の符号条件に加えて、$D > 0$ と軸の位置を調べる。

○ 正:$f(\alpha)$ と $f(\beta)$ が異符号ならば、 $(\alpha, \beta)$ の間に必ず解が存在します。 下に凸の放物線が区間の片方の端で正、もう片方で負であれば、 $D > 0$ は自動的に成り立ち、軸の位置も自然に決まります。 不要な計算を省くことが、時間内に完答するコツです。

32次方程式が特定の区間に少なくとも1つの解を持つ条件

「区間 $(\alpha, \beta)$ に少なくとも1つの解を持つ」 という条件は、これまでのパターンより複雑です。 なぜなら、「2つとも区間内」「1つだけ区間内」「重解が区間内」など、 複数のケースをカバーしなければならないからです。

💡 ここが本質:「少なくとも1つ」は余事象で考えると楽

「少なくとも1つの解が区間 $(\alpha, \beta)$ にある」を直接考えると、 場合分けが多くなります。

そこで、余事象(全体から「1つも区間内にない」場合を引く)で考えるか、 またはケースを漏れなく列挙して和集合を取る方法があります。

入試では、場合を直接列挙するアプローチが多く出題されます。 具体的には、以下のように分けます。

(i) 2つの解がともに $(\alpha, \beta)$ に含まれる場合

(ii) 1つの解だけが $(\alpha, \beta)$ に含まれる場合(もう1つは区間外)

それぞれの条件を求めて、(i) または (ii) の和集合が答えになります。

具体例で手順を確認する

$x$ についての2次方程式 $x^2 - 2ax + a + 2 = 0$ の解が $1 < x < 3$ の範囲に 少なくとも1つ存在するような定数 $a$ の値の範囲を求めましょう。

$f(x) = x^2 - 2ax + a + 2$ とおきます(下に凸)。以下の2つの場合に分けて考えます。

場合 (i):すべての解が $(1, 3)$ に含まれるとき

2-7の方法(3条件)を使います。

  • $D \geq 0$:$4a^2 - 4(a+2) \geq 0 \Rightarrow (a-2)(a+1) \geq 0 \Rightarrow a \leq -1$ または $a \geq 2$
  • 軸 $x = a$ が $(1, 3)$ に:$1 < a < 3$
  • $f(1) > 0$:$3 - a > 0 \Rightarrow a < 3$
  • $f(3) > 0$:$11 - 5a > 0 \Rightarrow a < \dfrac{11}{5}$

共通部分:$2 \leq a < \dfrac{11}{5}$

場合 (ii):1つの解だけが $(1, 3)$ にあるとき

もう1つの解は $x \leq 1$ または $x \geq 3$ の範囲にあります。 このとき、区間の端点のどちらかで $f$ の符号が変わります。 具体的には $f(1) < 0$ または $f(3) < 0$ です。

$f(1) < 0$ のとき:$a > 3$。このとき $f(3) = 11 - 5a < 11 - 15 < 0$。 両端とも負なので、区間 $(1, 3)$ の中に頂点があるかどうかが問題です。 軸 $x = a > 3$ は区間の右外なので、区間 $(1, 3)$ 内で $f$ は単調減少。 $f(1) < 0$ ならば区間内で $f$ はずっと負で、$x$ 軸と交わりません。 ただし、$f(1) < 0$ は左端で負、かつ下に凸なので $x < 1$ のどこかで $x$ 軸を横切ります。 つまり、1つの解が $x < 1$、もう1つの解も軸の位置から $x > 3$ にあり、 区間 $(1, 3)$ には解がありません。よってこの場合は不適。

$f(3) < 0$ のとき:$a > \dfrac{11}{5}$。$f(1) = 3 - a$ の符号を場合分けします。

  • $\dfrac{11}{5} < a < 3$ のとき:$f(1) = 3 - a > 0$ かつ $f(3) < 0$ なので、 $(1, 3)$ に解が1つあります。✓
  • $a = 3$ のとき:$f(1) = 0$ なので $x = 1$ が解(境界上は区間に含まれないため不適)
  • $a > 3$ のとき:上で見たように区間内に解なし。不適。

場合 (ii) の条件:$\dfrac{11}{5} < a < 3$

(i) と (ii) を合わせて:

$2 \leq a < \dfrac{11}{5}$ または $\dfrac{11}{5} < a < 3$、 すなわち $\boxed{2 \leq a < 3}$($a = \dfrac{11}{5}$ も含まれる)。

※ $a = \dfrac{11}{5}$ のとき $f(3) = 0$ なので $x = 3$ が解。 問題が開区間 $(1, 3)$ なら $x = 3$ は含まれないため、 もう1つの解が $(1, 3)$ にあるかを確認する必要があります。

⚠️ 落とし穴:「少なくとも1つ」で場合分けを忘れる

✕ 誤:「少なくとも1つ」を「ちょうど1つ」と同じだと思い、$f(\alpha) \cdot f(\beta) < 0$ だけで答える。

○ 正:「少なくとも1つ」には「2つとも区間内」の場合も含まれます。 $f(\alpha) \cdot f(\beta) < 0$ は「1つだけ区間内」の条件であり、 「2つとも区間内」($f(\alpha) > 0$ かつ $f(\beta) > 0$ で軸が区間内、$D \geq 0$)の場合が漏れてしまいます。

「少なくとも1つ」= 「ちょうど1つ」+「2つとも」です。必ず両方のケースを考えてください。

🔬 深掘り:グラフの交点個数と方程式の解 ── 関数方程式の視点

「$f(x) = 0$ の解が区間 $(\alpha, \beta)$ にある」ことは、 「$y = f(x)$ のグラフと $x$ 軸が、$\alpha < x < \beta$ の範囲で交点を持つ」 ことと同値です。

大学数学では、このような問題を不動点問題($g(x) = x$ の解を探す問題)として扱うことがあります。 また、数値解析では二分法(bisection method)という手法があり、 $f(\alpha)$ と $f(\beta)$ の符号が異なることを利用して解を近似的に求めます。 高校の解の配置問題は、こうした数値計算の理論的基盤でもあるのです。

4パラメータの存在範囲 ─ 逆像法の活用

ここまでの解の配置問題では、「判別式・軸・端点の値」という3つの道具を使ってきました。 しかし、もう1つ強力な方法があります。それが逆像法(定数分離)です。

逆像法のアイデアは、方程式に含まれるパラメータ $a$ を一方の辺に分離して、 「$y = (\text{$x$ だけの式})$ と $y = (\text{$a$ を含む式})$ のグラフの交点問題」に帰着することです。

💡 ここが本質:「$x$ の方程式」を「$a$ と $x$ のグラフの交点」に読み替える

$f(x) = 0$ にパラメータ $a$ が含まれるとき、$a$ について解いて $a = g(x)$ の形にします。すると、元の方程式が解を持つ条件は、 $y = g(x)$ のグラフと $y = a$(水平線)が交点を持つ条件に変わります。

解が特定の区間にある条件は、「$x$ がその区間にあるときの $g(x)$ の値域に $a$ が含まれる」 ことに帰着します。つまり、$g(x)$ の最大・最小問題に変換できるのです。

この方法の利点は、判別式・軸・端点の3条件を個別に調べる代わりに、 グラフの形状から一度に条件を読み取れることです。

逆像法の手順

2次方程式 $x^2 - 2ax - a + 2 = 0$ が異なる2つの正の解を持つような 定数 $a$ の値の範囲を、逆像法で求めてみましょう。

▷ 逆像法による解法

Step 1:$a$ について整理する。

$$x^2 - 2ax - a + 2 = 0$$

$$x^2 + 2 = 2ax + a = a(2x + 1)$$

$2x + 1 \neq 0$(すなわち $x \neq -\dfrac{1}{2}$)のとき:

$$a = \frac{x^2 + 2}{2x + 1}$$

Step 2:$g(x) = \dfrac{x^2 + 2}{2x + 1}$ とおき、$x > 0$ における $g(x)$ の振る舞いを調べる。

$x > 0$ のとき $2x + 1 > 0$ なので分母は正。

Step 3:$g(x)$ の最小値を求める。微分相当の議論(2次方程式への帰着)を行う。

$a = g(x)$ とおくと $x^2 + 2 = a(2x + 1)$、すなわち $x^2 - 2ax - a + 2 = 0$。

これが $x > 0$ に異なる2つの解を持つ $a$ の範囲が答え。

$y = g(x)$ と $y = a$ のグラフの交点が $x > 0$ に2つあるような $a$ の範囲を、 $g(x)$ のグラフの概形から読み取ります。

$g'(x) = \dfrac{2x(2x+1) - 2(x^2+2)}{(2x+1)^2} = \dfrac{2x^2 + 2x - 4}{(2x+1)^2} = \dfrac{2(x+2)(x-1)}{(2x+1)^2}$

$x > 0$ では $x + 2 > 0$ なので、$g'(x) = 0$ のとき $x = 1$。

$0 < x < 1$ で $g'(x) < 0$(減少)、$x > 1$ で $g'(x) > 0$(増加)。

$g(1) = \dfrac{3}{3} = 1$(極小値)。$g(x) \to +\infty$($x \to +\infty$)。$g(0) = 2$。

水平線 $y = a$ が $x > 0$ で $y = g(x)$ と異なる2点で交わるのは、$1 < a < 2$ のとき。

結論:$1 < a < 2$

📐 逆像法(定数分離)の手順

Step 1:方程式をパラメータ $a$ について解き、$a = g(x)$ の形にする

Step 2:解が属すべき区間で $g(x)$ のグラフの概形を調べる(増減・極値・端点の値)

Step 3:$y = a$(水平線)と $y = g(x)$ が指定された区間で交点を持つ $a$ の範囲を読み取る

※ $a$ が1次式で含まれるとき($a$ について解ける場合)に使える。$a$ が2次以上で含まれる場合は、直接分離できないこともある。

逆像法が使えない場合

逆像法は $a$ について解ける場合に有効ですが、$a$ が $a^2$ の形で現れるなど、 $a$ について1次式に整理できない場合には使えません。 その場合は、従来の「判別式・軸・端点」の方法に戻る必要があります。

また、$a$ について解く過程で「$x \neq (\text{ある値})$」の条件が出てくることがあります。 その点が求める区間に含まれる場合、そこでの解の存在を別途確認する必要があります。

🔬 深掘り:逆関数と逆像 ── 「逆像法」の名前の由来

「逆像法」の「逆像」とは、大学数学の逆像(preimage)に由来します。 関数 $g: X \to Y$ に対して、値 $a \in Y$ の逆像は $g^{-1}(\{a\}) = \{x \in X \mid g(x) = a\}$、 すなわち「$g(x) = a$ を満たす $x$ の集合」です。

逆像法で行っていることは、まさにこの逆像を求めることです。 $a = g(x)$ と変形した時点で、「方程式 $f(x) = 0$ の解の集合」は 「関数 $g$ による $a$ の逆像」と一致します。

逆像の概念は、位相空間論(トポロジー)における連続性の定義や、 確率論における確率変数の定義など、 現代数学の多くの分野で基本的な役割を果たしています。

5この章を俯瞰する

2-7と2-8で学んだ解の配置問題を、パターンごとに整理しましょう。 すべてのパターンに共通するのは、「$y = f(x)$ のグラフと $x$ 軸の位置関係」で考えるという視点です。

解の配置問題 ── パターン分類表

パターン条件の内容必要な条件
ともに $k$ より大きい 2解とも $x > k$ $D \geq 0$, 軸 $> k$, $f(k) > 0$
ともに $k$ より小さい 2解とも $x < k$ $D \geq 0$, 軸 $< k$, $f(k) > 0$
$k$ をはさむ(解の分離) 1解 $> k$、1解 $< k$ $f(k) < 0$($a > 0$ のとき)のみ
区間 $(\alpha, \beta)$ に2解 2解とも区間内 $D \geq 0$, $\alpha <$ 軸 $< \beta$, $f(\alpha) > 0$, $f(\beta) > 0$
異なる区間に1つずつ 各区間に1解ずつ 各区間の端点での符号条件
少なくとも1つが区間内 1つ以上が区間内 場合分け(2解とも区間内 or 1解だけ区間内)
逆像法(定数分離) $a = g(x)$ と変形 $g(x)$ の値域に $a$ が含まれるかで判定

つながりマップ

  • ← 2-7 解の配置問題(基本):「ともに $k$ より大きい」型の3条件(判別式・軸・端点)がすべての出発点。本節はその発展。
  • ← 2-2 2次関数の最大・最小:逆像法では $g(x)$ の値域を求めるために、2次関数の最大・最小の技術が必要。
  • ← 2-4 2次不等式:端点の符号条件は、2次不等式の解法そのもの。グラフの正負の判定が基本。
  • → 数学II 高次方程式:3次以上の方程式でも、グラフと $x$ 軸の交点の位置関係で解の配置を考える。定数分離はさらに強力になる。
  • → 数学II 微分・積分:逆像法で $g(x)$ の増減を調べるには微分が必要。数学Iの範囲では平方完成で代用するが、微分を学べば一般化できる。

📋まとめ

  • 2つの解が $k$ をはさむ(解の分離)条件は、$a > 0$ のとき $f(k) < 0$ だけ。判別式・軸の条件は不要
  • $f(k) < 0$ で十分な理由は、下に凸の放物線が $x$ 軸の下に潜り込めば、左右で必ず1回ずつ $x$ 軸を横切るから
  • 2つの区間に1つずつ解がある条件は、各区間の端点での符号条件で判定する。判別式・軸は自動的に満たされる
  • 「少なくとも1つが区間内」は、「2つとも区間内」と「1つだけ区間内」の和集合として場合分けする
  • 逆像法(定数分離):$a = g(x)$ と変形し、$y = g(x)$ と $y = a$ の交点問題に帰着する強力な別解法
  • 解の配置問題のすべてのパターンは、「$y = f(x)$ のグラフと $x$ 軸の位置関係」という1つの視点から統一的に理解できる

確認テスト

Q1. $f(x) = x^2 - 5x + 3$($a > 0$)の2つの解が $x = 2$ をはさむかどうか判定してください。

▶ クリックして解答を表示$f(2) = 4 - 10 + 3 = -3 < 0$。$x^2$ の係数は $1 > 0$ なので、$f(2) < 0$ より2つの解は $x = 2$ をはさむ。

Q2. 「2つの解が $k$ をはさむ」条件で判別式の確認が不要な理由を説明してください。

▶ クリックして解答を表示$a > 0$(下に凸)のとき、$f(k) < 0$ ならば放物線が $x$ 軸の下に潜り込んでいるので、$k$ の左右で必ず $x$ 軸と交わる。つまり異なる2つの実数解の存在($D > 0$)が自動的に保証される。

Q3. $x^2$ の係数が負($a < 0$)のとき、2つの解が $k$ をはさむ条件はどうなりますか?

▶ クリックして解答を表示$a < 0$(上に凸)のとき、条件は $f(k) > 0$。一般に $a \cdot f(k) < 0$($a$ と $f(k)$ が異符号)。

Q4. 逆像法(定数分離)で $a$ を分離する際、どのような場合に注意が必要ですか?

▶ クリックして解答を表示$a$ について解く際に分母が0になる $x$ の値が求める区間に含まれる場合、その点での解の存在を別途確認する必要がある。また、$a$ が2次以上で含まれる場合は、$a$ について1次式に整理できないため逆像法が使えない。

Q5. 「少なくとも1つの解が区間 $(\alpha, \beta)$ にある」を求めるとき、$f(\alpha) \cdot f(\beta) < 0$ だけでは不十分な理由を述べてください。

▶ クリックして解答を表示$f(\alpha) \cdot f(\beta) < 0$ は「区間に1つだけ解がある」場合をカバーするが、「2つとも区間内にある」場合($f(\alpha) > 0$ かつ $f(\beta) > 0$ で軸が区間内、$D \geq 0$)が漏れる。「少なくとも1つ」は両方のケースの和集合なので、場合分けが必要。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

2-8-1 A 基礎 解の分離 $f(k)$ の符号

2次方程式 $x^2 - 2ax + 3a - 2 = 0$ の異なる2つの実数解のうち、1つは $1$ より大きく、もう1つは $1$ より小さいような定数 $a$ の値の範囲を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$a < 1$

解説

方針:「$k$ をはさむ」型なので $f(k) < 0$ だけで解ける。

$f(x) = x^2 - 2ax + 3a - 2$ とおく。$x^2$ の係数は $1 > 0$(下に凸)。

2つの解が $x = 1$ をはさむ条件は $f(1) < 0$。

$f(1) = 1 - 2a + 3a - 2 = a - 1$

$f(1) < 0$ より $a - 1 < 0$、すなわち $a < 1$。

検算:$a = 0$ のとき $x^2 - 2 = 0$、$x = \pm\sqrt{2}$。$-\sqrt{2} < 1 < \sqrt{2}$ で確かに $1$ をはさんでいる。✓

2-8-2 A 基礎 解の分離 符号の異なる2解

2次方程式 $x^2 - 2ax - a + 2 = 0$ が符号の異なる2つの解を持つような定数 $a$ の値の範囲を求めよ。

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解答

$a > 2$

解説

方針:「符号の異なる2つの解」= 「$x = 0$ をはさむ」。$f(0) < 0$ が条件。

$f(x) = x^2 - 2ax - a + 2$ とおく。$x^2$ の係数は $1 > 0$(下に凸)。

$f(0) = 0 - 0 - a + 2 = -a + 2$

$f(0) < 0$ より $-a + 2 < 0$、すなわち $a > 2$。

検算:$a = 3$ のとき $x^2 - 6x - 1 = 0$、$x = 3 \pm \sqrt{10}$。$3 - \sqrt{10} < 0 < 3 + \sqrt{10}$ で確かに符号が異なります。

B 発展レベル

2-8-3 B 発展 区間に1つずつ 論述

$x$ についての2次方程式 $x^2 - 6x + a = 0$ の1つの解が $1$ と $2$ の間にあり、もう1つの解が $4$ と $5$ の間にあるような定数 $a$ の値の範囲を求めよ。

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解答

$5 < a < 8$

解説

方針:端点の符号条件を利用する。2つの解を $\alpha \in (1,2)$, $\beta \in (4,5)$ とする。

$f(x) = x^2 - 6x + a$ とおく。$x^2$ の係数は $1 > 0$(下に凸)。

下に凸の放物線は、2つの解 $\alpha, \beta$ の間($\alpha < x < \beta$)で負、外側で正です。 $1 < \alpha$ かつ $\beta < 5$ なので、$x = 1$ は $\alpha$ の左側(正)、$x = 2, 4$ は2つの解の間(負)、$x = 5$ は $\beta$ の右側(正)です。

したがって条件は:$f(1) > 0$, $f(2) < 0$, $f(4) < 0$, $f(5) > 0$

各値を計算します。

$f(1) = 1 - 6 + a = a - 5 > 0 \Rightarrow a > 5$ ... (1)

$f(2) = 4 - 12 + a = a - 8 < 0 \Rightarrow a < 8$ ... (2)

$f(4) = 16 - 24 + a = a - 8 < 0 \Rightarrow a < 8$ ... (3) ((2) と同じ)

$f(5) = 25 - 30 + a = a - 5 > 0 \Rightarrow a > 5$ ... (4) ((1) と同じ)

(1)〜(4) の共通部分:$5 < a < 8$。

※ $f(2) = f(4)$ かつ $f(1) = f(5)$ となるのは、軸 $x = 3$ に関して $x = 1, 5$ および $x = 2, 4$ が対称であるためです。

採点ポイント
  • 端点の符号条件を正しく立式(3点)
  • 各不等式を正しく計算(3点)
  • 共通部分を正しく求める(2点)
  • 対称性への言及(2点)
2-8-4 B 発展 逆像法 定数分離

$x$ についての2次方程式 $x^2 - 2ax + 2a + 3 = 0$ が異なる2つの正の解を持つような定数 $a$ の値の範囲を、逆像法(定数分離)を用いて求めよ。

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解答

$3 < a$

解説

方針:$a$ について解いて定数分離する。

$x^2 - 2ax + 2a + 3 = 0$ を $a$ について整理する。

$x^2 + 3 = 2ax - 2a = 2a(x - 1)$

$x \neq 1$ のとき $a = \dfrac{x^2 + 3}{2(x - 1)}$

$g(x) = \dfrac{x^2 + 3}{2(x-1)}$ とおき、$x > 0$ かつ $x \neq 1$ での振る舞いを調べる。

$0 < x < 1$ のとき分母は負なので $g(x) < 0$。正の解2つという条件は $x > 0$ なので、$x > 1$ の部分を考える。

$x > 1$ で $g(x) > 0$。

$g'(x) = \dfrac{2x \cdot 2(x-1) - (x^2+3) \cdot 2}{4(x-1)^2} = \dfrac{2x^2 - 2x - x^2 - 3}{2(x-1)^2} = \dfrac{x^2 - 2x - 3}{2(x-1)^2} = \dfrac{(x-3)(x+1)}{2(x-1)^2}$

$x > 1$ では $x + 1 > 0$, $(x-1)^2 > 0$ なので、$g'(x) = 0$ のとき $x = 3$。

$1 < x < 3$ で $g'(x) < 0$(減少)、$x > 3$ で $g'(x) > 0$(増加)。

$g(3) = \dfrac{9 + 3}{2 \cdot 2} = \dfrac{12}{4} = 3$(極小値)。

$g(x) \to +\infty$($x \to 1^+$ および $x \to +\infty$)。

水平線 $y = a$ が $x > 1$ で $y = g(x)$ と異なる2点で交わるのは $a > 3$ のとき。

ただし、$0 < x < 1$ の範囲で $g(x) < 0$ なので、$a > 0$ のとき $0 < x < 1$ に解はない。

また $x = 1$ のとき元の方程式は $1 - 2a + 2a + 3 = 4 \neq 0$ なので $x = 1$ は解にならない。

よって「異なる2つの正の解」は $x > 1$ の範囲の2つの解であり、$a > 3$。

(従来法でも確認:$D > 0$, 軸 $> 0$, $f(0) > 0$ の3条件から同じ結果が得られる。)

採点ポイント
  • $a$ について正しく分離(2点)
  • $g(x)$ の増減を正しく調べる(3点)
  • 極小値を正しく求める(2点)
  • 交点の個数条件から $a$ の範囲を正しく求める(3点)