これまでの章では、2次関数の式が与えられた状態で、グラフや最大・最小を調べてきました。
この章では逆に、「条件」から2次関数の式そのものを求めます。鍵は「3つの表現形式の使い分け」です。
2-1では「式 → グラフ」の方向を学びました。式が与えられれば、平方完成してグラフを描けます。 しかし、現実の問題では逆のことがよく起こります。 「頂点が $(1, 3)$ で、点 $(2, 5)$ を通る放物線の式は?」── つまり条件 → 式の方向です。
この「逆算」の力が重要な理由は2つあります。 1つ目は、入試で頻出であること。2次関数の決定は単独の問題としてだけでなく、 最大・最小問題や2次不等式の中で「まず関数を求めてから解く」ステップとして登場します。
2つ目は、式を立てる力が鍛えられること。 文章題で数量関係を式にする力、物理で運動方程式を立てる力── これらはすべて「条件から式を組み立てる」という同じ能力です。
2次関数 $y = ax^2 + bx + c$ には、$a$, $b$, $c$ の3つの未知数があります。 未知数が3つなので、それらを決定するには独立な条件が3つ必要です。
「2次関数の決定」とは、与えられた条件を方程式に翻訳し、$a$, $b$, $c$(あるいはそれに相当する3つの値)を求める作業です。
条件の種類に応じて、3つの未知数のうちいくつかが最初からわかることがあります。 たとえば頂点 $(p, q)$ がわかれば、$y = a(x - p)^2 + q$ と書けるので未知数は $a$ の1つだけ。 だから残り1つの条件(通る点など)で $a$ が決まるのです。
✕ 誤:「2点 $(1, 3)$, $(2, 5)$ を通る2次関数は $y = 2x^2 - 4x + 5$ だ」
○ 正:2点を通るだけでは、方程式が2本しか立たない。未知数3つに対して条件2つでは不足。 2点を通る2次関数は無数に存在する。
「条件の数 = 未知数の数」が成り立っているかを常に確認しましょう。 条件が余ったら式が矛盾しないか確認。足りなかったら答えが一意に定まりません。
「条件から関数を求める」という発想は、統計学の回帰分析に直結します。 たとえば、身長と体重の関係をデータから推定するとき、 「$y = ax + b$ の $a$, $b$ を決める」という1次関数の決定問題を解いています。
高校で学ぶ「3点を通る2次関数を求める」は、ちょうど3点で完全に一致する関数を求めること。 一方、データ点が多数ある場合は「最小二乗法」で最もフィットする関数を求めます。 いずれも本質は「条件 → 式」という同じ構造です。
2次関数の決定で最も大切なのは、どの形でおくかを正しく選ぶことです。 選び方を間違えると計算が複雑になるだけでなく、解けなくなることもあります。
2次関数には3つの表現形式があり、それぞれ「見えている情報」が異なります。
一般形:$y = ax^2 + bx + c$
未知数:$a$, $b$, $c$ の3つ。グラフが通る3点がわかるときに使う。
標準形:$y = a(x - p)^2 + q$
未知数:$a$, $p$, $q$ の3つ。頂点 $(p, q)$ や軸 $x = p$ がわかるときに使う。
分解形(因数分解形):$y = a(x - \alpha)(x - \beta)$
未知数:$a$, $\alpha$, $\beta$ の3つ。$x$ 切片($x$ 軸との共有点)が $\alpha$, $\beta$ のときに使う。
たとえば「頂点が $(1, 3)$」とわかっているとき、一般形 $y = ax^2 + bx + c$ でおくと 未知数が $a$, $b$, $c$ の3つ残ります。ところが標準形 $y = a(x - 1)^2 + 3$ でおけば、 $p = 1$, $q = 3$ が確定するので未知数は $a$ の1つだけ。
「形を選ぶ」とは、与えられた条件を最初から式に組み込むことで、 残りの未知数を最小限に減らす作業です。未知数が少ないほど、必要な追加条件も少なくて済みます。
| 与えられた条件 | 使う形式 | 未知数の数 | 追加で必要な条件 |
|---|---|---|---|
| 頂点 $(p, q)$ | 標準形 | 1個($a$) | 通る1点 |
| 軸 $x = p$ | 標準形 | 2個($a$, $q$) | 通る2点 |
| 通る3点 | 一般形 | 3個($a$, $b$, $c$) | なし |
| $x$ 切片 $\alpha$, $\beta$ | 分解形 | 1個($a$) | 通る1点 |
「$x$ 軸と点 $(1, 0)$, $(3, 0)$ で交わり、点 $(0, -6)$ を通る放物線」を考えましょう。
✕ 非効率:$y = ax^2 + bx + c$ でおいて3点を代入 → 連立3元1次方程式を解く
○ 効率的:$y = a(x - 1)(x - 3)$ でおいて $(0, -6)$ を代入 → $-6 = a(0 - 1)(0 - 3) = 3a$ → $a = -2$
分解形なら1ステップで完了。一般形だと連立方程式を解く手間がかかります。 形の選択ミスは「解けない」のではなく「遠回りになる」のが厄介なところです。
頂点や軸の情報が与えられているとき、標準形 $y = a(x - p)^2 + q$ を使います。 頂点 $(p, q)$ の値をそのまま式に入れられるので、未知数が大幅に減ります。
「頂点が $(2, -3)$ で、点 $(4, -7)$ を通る放物線」を求めてみましょう。
頂点 $(2, -3)$ より、$y = a(x - 2)^2 - 3$ とおきます(未知数は $a$ の1つ)。 点 $(4, -7)$ を通るから、$x = 4$, $y = -7$ を代入すると
$$-7 = a(4 - 2)^2 - 3 = 4a - 3$$$4a = -4$ より $a = -1$。 よって $y = -(x - 2)^2 - 3$(一般形に直すと $y = -x^2 + 4x - 7$)。
「軸が直線 $x = 2$ で、2点 $(-1, -7)$, $(1, 9)$ を通る放物線」を求めます。 軸がわかっているので $p = 2$ を代入できますが、$q$ は不明です。未知数は $a$ と $q$ の2つ。
軸 $x = 2$ より、$y = a(x - 2)^2 + q$ とおき、2点を代入して連立方程式を作ります。
点 $(-1, -7)$ :$-7 = 9a + q$ ... (1)
点 $(1, 9)$ :$9 = a + q$ ... (2)
(1) $-$ (2) より $-16 = 8a$、すなわち $a = -2$。 (2) に代入して $q = 11$。 よって $y = -2(x - 2)^2 + 11$(一般形:$y = -2x^2 + 8x + 3$)。
放物線は軸に関して左右対称です。もし2点が軸に関して対称な位置にあれば、 その2点の $y$ 座標は等しくなります。
逆に、$y$ 座標が等しい2点 $(s, k)$, $(t, k)$ が与えられたら、軸は $x = \dfrac{s + t}{2}$ とすぐにわかります。
対称性を先に使って $p$ を確定させてから残りを求める── これが計算を楽にするコツです。
「$y = 2x^2$ を平行移動した放物線で、頂点が $(1, 3)$」という条件を考えます。
✕ 誤:$y = a(x - 1)^2 + 3$ とおいて $a$ を別途求める
○ 正:平行移動では $x^2$ の係数は変わらないので $a = 2$。 答えは直ちに $y = 2(x - 1)^2 + 3$。
「$y = ax^2$ を平行移動した」という条件は、$a$ の値が最初から決まっていることを意味します。 見落とすと $a$ が定まらず、もう1点の条件が追加で必要になってしまいます。
頂点や軸の情報がなく、単にグラフが通る3点の座標だけが与えられている場合は、 一般形 $y = ax^2 + bx + c$ を使います。 3つの座標を代入すると $a$, $b$, $c$ に関する連立3元1次方程式ができます。
「3点 $(1, 6)$, $(3, 6)$, $(-2, -9)$ を通る放物線」を求めてみましょう。
Step 1:$y = ax^2 + bx + c$ とおき、3点を代入する。
$(1, 6)$ :$a + b + c = 6$ ... (1)
$(3, 6)$ :$9a + 3b + c = 6$ ... (2)
$(-2, -9)$ :$4a - 2b + c = -9$ ... (3)
Step 2:$c$ を消去する。
(2) $-$ (1) :$8a + 2b = 0$ すなわち $4a + b = 0$ ... (4)
(3) $-$ (1) :$3a - 3b = -15$ すなわち $a - b = -5$ ... (5)
Step 3:(4), (5) を解く。
(4) $+$ (5) :$5a = -5$ より $a = -1$。(5) に代入して $b = 4$。(1) に代入して $c = 3$。
結論:$y = -x^2 + 4x + 3$
ここで気づいてほしいのは、$(1, 6)$ と $(3, 6)$ の $y$ 座標が等しいことです。 これは軸が $x = \dfrac{1 + 3}{2} = 2$ であることを意味します。 標準形 $y = a(x - 2)^2 + q$ でおいて3点のうち2点を代入しても解けます。 このように、条件を観察して「より良い形」に気づくのが上達のコツです。
基本手順:
(1) 3つの式のうち2組を選んで引き算し、1つの文字(たとえば $c$)を消去 → 2つの式
(2) 得られた2つの式からもう1つの文字を消去 → 1つの式
(3) 求まった値を順に代入して残りの文字を求める
「$n + 1$ 個の点を通る $n$ 次多項式は一意に存在する」── これは大学数学で学ぶラグランジュの補間定理です。
2次関数($n = 2$)の場合、3点を通る2次式がただ1つ存在するのはこの定理の帰結です。 大学では、連立方程式を解かなくても直接公式で多項式を書き下す 「ラグランジュ補間多項式」の方法を学びます。 数値計算やコンピュータグラフィクスで広く使われている技法です。
放物線が $x$ 軸と2点で交わる($x$ 切片がわかる)場合は、 分解形(因数分解形) $y = a(x - \alpha)(x - \beta)$ を使います。 $\alpha$, $\beta$ は $x$ 切片の値です。
なぜこの形が使えるのでしょうか? $x = \alpha$ を代入すると $y = a(\alpha - \alpha)(\alpha - \beta) = 0$。 同様に $x = \beta$ でも $y = 0$。つまり、$y = a(x - \alpha)(x - \beta)$ のグラフは 確実に $(\alpha, 0)$ と $(\beta, 0)$ を通るのです。
$x$ 切片とは「$y = 0$ となる $x$ の値」です。分解形 $y = a(x - \alpha)(x - \beta)$ は、 まさにこの「$y = 0$ の解が $x = \alpha$ と $x = \beta$ である」という情報をそのまま式にした形です。
一般形 $y = ax^2 + bx + c$ で $y = 0$ とおいて因数分解したものが分解形ですから、 $x$ 切片がわかっているなら因数分解済みの形から始めるのが合理的です。
未知数は $a$ の1つだけ。$x$ 切片以外にもう1点わかれば、$a$ が決まります。
「$x$ 軸と2点 $(1, 0)$, $(-3, 0)$ で交わり、点 $(0, -6)$ を通る放物線」を求めます。
$x$ 切片が $1$ と $-3$ なので、$y = a(x - 1)(x + 3)$ とおきます。 点 $(0, -6)$ を代入すると
$$-6 = a(0 - 1)(0 + 3) = -3a$$$a = 2$ より、$y = 2(x - 1)(x + 3)$(展開すると $y = 2x^2 + 4x - 6$)。 分解形なら代入1回で完了です。
放物線が $x$ 軸と1点 $(\alpha, 0)$ で接する(重解をもつ)場合、 $\beta = \alpha$ となるので $y = a(x - \alpha)^2$ です。 これは実質的に「頂点が $(\alpha, 0)$」であることと同じなので、標準形の特殊ケースとも見なせます。
$x$ 切片が $2$ と $5$ のとき:
✕ 誤:$y = (x - 2)(x - 5)$ と即答する
○ 正:$y = a(x - 2)(x - 5)$ とおく。$a$ は $x^2$ の係数で、放物線の「開き具合」を決める。 $a = 1$ とは限らない。
$x$ 切片だけでは $a$ は決まりません。もう1つの条件(通る点、$y$ 切片など)が必要です。 $a$ を書き忘れるのは、分解形を使うときの最も多いミスです。
2次関数の決定は、第2章全体の知識を総動員する問題です。 ここで学んだ内容が、他の章の内容とどうつながるかを整理しましょう。
| 条件 | 使う形式 | 立てる式 |
|---|---|---|
| 頂点 $(p, q)$ が与えられた | 標準形 | $y = a(x - p)^2 + q$ → 通る点で $a$ を決定 |
| 軸 $x = p$ が与えられた | 標準形 | $y = a(x - p)^2 + q$ → 通る2点で $a$, $q$ を決定 |
| 最大値・最小値が与えられた | 標準形 | 頂点の $y$ 座標が最大値・最小値に対応 |
| 通る3点が与えられた | 一般形 | $y = ax^2 + bx + c$ → 連立3元1次方程式 |
| $x$ 切片 $\alpha$, $\beta$ が与えられた | 分解形 | $y = a(x - \alpha)(x - \beta)$ → 通る点で $a$ を決定 |
Q1. 2次関数の式を決定するために、一般に何個の独立な条件が必要ですか? その理由も答えてください。
Q2. 頂点が $(-1, 4)$ で、点 $(1, 0)$ を通る2次関数を求めてください。
Q3. 「$x$ 軸と点 $(2, 0)$, $(5, 0)$ で交わる放物線」を式でおくとき、正しいおき方はどれですか?
(A) $y = (x - 2)(x - 5)$ (B) $y = a(x - 2)(x - 5)$
Q4. 軸が直線 $x = 3$ で、2点 $(1, 1)$, $(5, 1)$ を通る2次関数を求めるとき、通る2点の情報だけで何がわかりますか?
Q5. 3点 $(0, 3)$, $(1, 0)$, $(3, 0)$ を通る2次関数を、最も効率的な方法で求めてください。
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
2次関数のグラフの頂点が点 $(1, 3)$ で、点 $(2, 5)$ を通る。この2次関数を求めよ。
$y = 2(x - 1)^2 + 3$($y = 2x^2 - 4x + 5$)
方針:頂点が与えられているので標準形を使う。
頂点 $(1, 3)$ より $y = a(x - 1)^2 + 3$ とおく。
点 $(2, 5)$ を代入:$5 = a(2 - 1)^2 + 3 = a + 3$
$a = 2$
よって $y = 2(x - 1)^2 + 3$
2次関数のグラフが $x$ 軸と2点 $(-1, 0)$, $(5, 0)$ で交わり、$y$ 軸と点 $(0, 5)$ で交わる。この2次関数を求めよ。
$y = -(x + 1)(x - 5)$($y = -x^2 + 4x + 5$)
方針:$x$ 切片がわかっているので分解形を使う。
$x$ 切片が $-1$, $5$ より $y = a(x + 1)(x - 5)$ とおく。
$y$ 軸との交点 $(0, 5)$ を代入:$5 = a(0 + 1)(0 - 5) = -5a$
$a = -1$
よって $y = -(x + 1)(x - 5) = -x^2 + 4x + 5$
2次関数 $y = ax^2 + bx + c$ のグラフが3点 $(-1, -2)$, $(1, 10)$, $(-2, -5)$ を通る。$a$, $b$, $c$ の値を求めよ。
$a = 1$, $b = 6$, $c = 3$($y = x^2 + 6x + 3$)
方針:3点の座標が与えられ、頂点や軸の情報がないので一般形で連立方程式を立てる。
$(-1, -2)$ :$a - b + c = -2$ ... (1)
$(1, 10)$ :$a + b + c = 10$ ... (2)
$(-2, -5)$ :$4a - 2b + c = -5$ ... (3)
(2) $-$ (1) :$2b = 12$ より $b = 6$
(3) $-$ (1) :$(4a - 2b + c) - (a - b + c) = -5 - (-2)$ より $3a - b = -3$
$b = 6$ を代入:$3a - 6 = -3$, $3a = 3$ より $a = 1$
(1) に代入:$1 - 6 + c = -2$ より $c = 3$
よって $a = 1$, $b = 6$, $c = 3$、$y = x^2 + 6x + 3$
検算:$(1, 10)$ → $1 + 6 + 3 = 10$ ✓、$(-2, -5)$ → $4 - 12 + 3 = -5$ ✓
放物線 $y = 2x^2$ を平行移動したもので、頂点が直線 $y = 2x - 1$ 上にあり、点 $(2, 3)$ を通る。この2次関数を求めよ。
$y = 2(x - 1)^2 + 1$ または $y = 2(x - 2)^2 + 3$
方針:「$y = 2x^2$ を平行移動」→ $x^2$ の係数 $a = 2$ は不変。「頂点が直線上」→ 頂点の座標を文字でおく。
$y = 2x^2$ を平行移動したものなので $a = 2$。頂点を $(t, 2t - 1)$ とおくと(直線 $y = 2x - 1$ 上):
$$y = 2(x - t)^2 + (2t - 1)$$
点 $(2, 3)$ を代入:
$$3 = 2(2 - t)^2 + 2t - 1$$
$$3 = 2(4 - 4t + t^2) + 2t - 1 = 2t^2 - 8t + 8 + 2t - 1 = 2t^2 - 6t + 7$$
$$2t^2 - 6t + 4 = 0 \quad \Rightarrow \quad t^2 - 3t + 2 = 0 \quad \Rightarrow \quad (t-1)(t-2) = 0$$
$t = 1$ のとき:頂点 $(1, 1)$、$y = 2(x-1)^2 + 1$
$t = 2$ のとき:頂点 $(2, 3)$、$y = 2(x-2)^2 + 3$