「面積を最大にするには?」「利益を最大にする価格は?」──現実の問題を2次関数で解く。
文章題のカギは「何を変数にし、何を最大化・最小化するか」を自分で見つけることです。
2次関数の文章題は、日本語で書かれた問題を数式に翻訳するところから始まります。 ここまで学んできた「最大・最小」の技術をそのまま使えるのですが、 問題の形が $y = ax^2 + bx + c$ と最初から与えられていない点が大きく異なります。
文章題では、自分で変数を設定し、関数を組み立てることが求められます。 つまり「何を $x$ にするか」「最大化(最小化)したい量を $x$ の式でどう表すか」を 自分で判断しなければなりません。
文章題を解く手順は、次の3ステップに集約されます。
Step 1 立式:何を変数 $x$ とおくかを決め、$x$ の変域(定義域)を確認する。
Step 2 関数化:最大化・最小化したい量(面積、利益、距離など)を $x$ の2次式で表す。
Step 3 最適化:定義域の範囲で、2次関数の最大値・最小値を求める(2-2で学んだ手法)。
文章題の難しさはStep 1とStep 2にあります。Step 3は既に学んだ計算そのものです。
1. 未知数・変数を $x$ とおく(何を $x$ にするかは問題に応じて選ぶ)
2. $x$ のとりうる値の範囲(変域)を不等式で確認する
3. 最大化・最小化したい量を $x$ の式で表す
4. 平方完成して最大値・最小値を求める
5. 得られた $x$ の値が変域を満たすことを確認する
変数の選び方にはコツがあります。 最大化したい量を直接表しやすいものを $x$ に選ぶのが基本です。
たとえば「長方形の面積を最大にしたい」なら、面積 $S = (\text{縦}) \times (\text{横})$ なので、 縦か横のどちらか一方を $x$ にすれば、もう一方が制約条件から $x$ の式で表せます。 すると面積 $S$ が $x$ の2次式になるのです。
文章題で最も多いミスは、変数の定義域(変域)を設定し忘れることです。
✕ 誤:$x$ を長さとおいたのに、変域を考えず平方完成だけで答えを出す。 頂点の $x$ 座標が負になっても気づかない。
○ 正:長さは正の値をとるので $x > 0$。さらに制約条件から上限が決まり、 たとえば $0 < x < 6$ のように変域が定まる。この範囲内で最大・最小を求める。
変数をおいたら、必ず「$x$ はどの範囲を動けるか?」を考える。 これは文章題のルーティンとして体に染み込ませてください。
「ある制約のもとで、目的の量を最大化(最小化)する」問題を、 数学では最適化問題(optimization problem)と呼びます。
高校の文章題は最適化問題の入門です。 大学では線形計画法、非線形最適化、動的計画法など、さまざまな最適化手法を学びます。 企業の利益最大化、AIの学習アルゴリズム、ロケットの軌道設計── すべて「最適化」の考え方が基盤にあります。
文章題の中で最も典型的なのが「面積の最大化」問題です。 長さに制約がある中で、面積が最大になる条件を求めます。
長さ $12$ m の金網を使って、壁に沿って長方形の囲いを作ります。 壁に接する辺には金網が不要です。囲いの面積を最大にするには、どのような長方形にすればよいでしょうか。
Step 1(立式):壁に垂直な辺の長さを $x$ m とおく。
金網の長さは $12$ m で、壁に垂直な辺が2本、壁に平行な辺が1本あるので:
$$2x + (\text{壁に平行な辺}) = 12$$よって、壁に平行な辺の長さは $(12 - 2x)$ m。
Step 2(変域):長さは正なので $x > 0$ かつ $12 - 2x > 0$。 すなわち $0 < x < 6$。
Step 3(関数化):面積を $S$ とすると、
$$S = x(12 - 2x) = -2x^2 + 12x$$Step 4(最適化):平方完成する。
$$S = -2(x^2 - 6x) = -2(x^2 - 6x + 9 - 9) = -2(x - 3)^2 + 18$$$a = -2 < 0$ なので上に凸。頂点は $(3, 18)$。
$x = 3$ は変域 $0 < x < 6$ を満たす。
結論:壁に垂直な辺が $3$ m、壁に平行な辺が $12 - 6 = 6$ m のとき、 面積は最大値 $18$ m$^2$。
面積の最大化問題では、面積 $S = (\text{縦}) \times (\text{横})$ は2つの変数の積です。 しかし、長さの制約(周の長さ、金網の長さなど)があるので、 一方を他方で表して代入すると、$S$ が1つの変数の2次関数になります。
2変数の問題を、制約条件を使って1変数の問題に帰着させる。 これが面積最大化問題の核心です。
1辺の長さが $4$ の正三角形に内接する長方形の面積の最大値を求めましょう。 ここで「内接する」とは、長方形の一辺が正三角形の底辺上にあり、 残りの2つの頂点が正三角形の2辺上にある状態です。
底辺上の長方形の幅の半分を $x$($0 < x < 2$)とおくと、 正三角形の辺の傾きから長方形の高さは $\sqrt{3}(2 - x)$ と表せます。 したがって、長方形の面積 $S$ は、
$$S = 2x \cdot \sqrt{3}(2 - x) = 2\sqrt{3}\,x(2 - x) = -2\sqrt{3}\,x^2 + 4\sqrt{3}\,x$$平方完成すると $S = -2\sqrt{3}(x - 1)^2 + 2\sqrt{3}$。 $x = 1$ は変域 $0 < x < 2$ を満たすので、面積の最大値は $2\sqrt{3}$ です。
正三角形に内接する長方形の問題では、底辺の中点を原点にとると対称性を活かせます。
✕ 誤:底辺の左端を原点にとり、左右の辺で別々に計算する。式が複雑になる。
○ 正:対称性を利用して「幅の半分」を $x$ とおけば、 左右対称な計算が1本の式で済む。
対称性のある図形では、対称の中心に原点をとるのが鉄則です。 変数の設定次第で、計算の楽さが大きく変わります。
物を真上に投げ上げたとき、その高さは時間の2次関数で表されます。 物理では「放物運動」と呼ばれるこの現象は、2次関数の文章題の代表例です。
地上から初速度 $v_0$ m/s で真上に投げ上げたとき、$t$ 秒後の高さ $h$ m は、 重力加速度を $g = 9.8$ m/s$^2$ として近似的に、
$$h = v_0 t - \frac{1}{2}g t^2$$と表されます。これは $t$ の2次関数($a = -\frac{g}{2} < 0$、上に凸)なので、 頂点で最高点に達することがわかります。
地上から初速度 $19.6$ m/s でボールを真上に投げ上げます。 $t$ 秒後の高さを $h$ m として $h = 19.6t - 4.9t^2$ とするとき、 ボールが到達する最高点の高さを求めましょう。
Step 1(変域):$t$ は時間なので $t \geq 0$。 また、$h \geq 0$(地上より下には落ちない)なので $19.6t - 4.9t^2 \geq 0$、すなわち $4.9t(4 - t) \geq 0$。 $t \geq 0$ より $0 \leq t \leq 4$。
Step 2(平方完成):
$$h = -4.9t^2 + 19.6t = -4.9(t^2 - 4t) = -4.9(t^2 - 4t + 4 - 4) = -4.9(t - 2)^2 + 19.6$$Step 3(結論):$t = 2$ のとき最高点に到達し、最高到達点の高さは $19.6$ m。 $t = 2$ は変域 $0 \leq t \leq 4$ を満たす。
上の例では、ボールは $t = 0$ で投げ上げて $t = 4$ で地上に戻り、 最高点は $t = 2$(ちょうど真ん中)で到達します。
これは偶然ではありません。2次関数 $h = -4.9(t - 2)^2 + 19.6$ のグラフは 軸 $t = 2$ に関して左右対称です。$h = 0$ の2つの解 $t = 0, 4$ は 軸からの距離が等しいので、「投げ上げから着地までの時間の半分」で最高点に達するのです。
2次関数の対称性が、放物運動の対称性を生んでいるのです。
時間や距離を表す変数には、物理的に意味のある範囲があります。
✕ 誤:$h = 19.6t - 4.9t^2$ を $t$ が全実数として扱い、「$t < 0$ では高さが負」と答える。
○ 正:時間 $t \geq 0$、高さ $h \geq 0$ という物理的条件から、変域は $0 \leq t \leq 4$。 この範囲で考える。
文章題では、数式だけでなく問題の文脈に合った変域を設定することが重要です。
17世紀、ガリレオ・ガリレイは実験によって 「自由落下する物体の移動距離は時間の2乗に比例する」ことを発見しました。 これは重力による加速度が一定($g \approx 9.8$ m/s$^2$)だからです。
等加速度運動の公式 $h = v_0 t - \frac{1}{2}gt^2$ は、 速度 $v = v_0 - gt$ を時間で積分(数学IIIの内容)すると得られます。 2次関数が放物運動に現れるのは、重力が一定であることの数学的帰結なのです。
「商品の値段をいくらにすれば利益が最大になるか?」── これは企業が日々直面する問題であり、2次関数の文章題としても頻出です。
利益の最適化問題では、「値段を上げれば1個あたりの利益は増えるが、販売個数は減る」という トレードオフの関係が鍵になります。 利益は「(1個あたりの利益) $\times$ (販売個数)」で計算されますが、 値段を変数にすると、この式が2次関数になるのです。
ある商品の仕入れ値は1個あたり $80$ 円です。 単価 $100$ 円で売ると、1日あたり $800$ 個売れます。 単価を $1$ 円値上げするごとに、売上個数は $10$ 個減少するものとします。 1日の利益を最大にするには、単価をいくらにすればよいでしょうか。
Step 1(立式):単価を $100$ 円から $x$ 円値上げするとおく。 このとき、単価は $(100 + x)$ 円、販売個数は $(800 - 10x)$ 個。
Step 2(変域):販売個数が正であることから $800 - 10x > 0$、すなわち $x < 80$。 また $x < 0$ のときは値下げを意味するが、 仕入れ値 $80$ 円より安く売ると赤字なので $100 + x > 80$、すなわち $x > -20$。 よって $-20 < x < 80$。
Step 3(関数化):1日の利益を $P$ とすると、
$$P = (\text{1個あたりの利益}) \times (\text{販売個数})$$ $$= \{(100 + x) - 80\} \times (800 - 10x) = (20 + x)(800 - 10x)$$ $$= -10x^2 + 600x + 16000$$Step 4(平方完成):
$$P = -10(x^2 - 60x) + 16000 = -10(x^2 - 60x + 900 - 900) + 16000$$ $$= -10(x - 30)^2 + 9000 + 16000 = -10(x - 30)^2 + 25000$$$x = 30$ は変域 $-20 < x < 80$ を満たす。
結論:$100 + 30 = 130$ 円のとき、 利益は最大値 $25000$ 円。 このとき販売個数は $800 - 300 = 500$ 個。
利益の最適化問題は、基本的に次の構造を持っています。
$$\text{利益} = (\text{単価} - \text{原価}) \times \text{販売個数}$$
単価を上げると $(単価 - 原価)$ は増えるが、販売個数は減る。 逆に単価を下げると販売個数は増えるが、$(単価 - 原価)$ は減る。
このトレードオフの関係が、変数(値上げ幅 $x$)について「1次式 $\times$ 1次式」の形を生み、 展開すると2次関数になります。トレードオフがあるからこそ「最適な点」が存在するのです。
✕ 誤:利益 $= $ 単価 $\times$ 販売個数 とする。
○ 正:利益 $= $ (単価 $-$ 原価) $\times$ 販売個数。 仕入れ値(原価)を引くのを忘れない。
「売上金額」と「利益」は別物です。 売上金額 $=$ 単価 $\times$ 個数、 利益 $=$ 売上金額 $-$ 仕入れ金額。 問題文が「利益」を聞いているのか「売上」を聞いているのか、注意して読みましょう。
文章題のパターンは多様ですが、解法の骨格は共通しています。 問題の種類ごとに、何を変数にし、何が2次関数になるかを整理しましょう。
| パターン | 変数の例 | 最適化の対象 | 2次関数が現れる仕組み |
|---|---|---|---|
| 面積の最大化 | 辺の長さ | 面積 | 制約条件で一方を消去 → 縦×横 が2次式に |
| 放物運動 | 時間 | 高さ・距離 | 等加速度運動 → 距離が時間の2乗に比例 |
| 利益の最大化 | 値上げ幅・価格 | 利益 | (1次式)×(1次式)→ 2次式に |
| 数の最大・最小 | 一方の数 | 積・和など | 和の制約で一方を消去 → 積が2次式に |
どのパターンでも、根底にあるのは同じ構造です: 「1つの制約条件で変数を1つに絞り、目的の量を2次関数で表し、平方完成で最適値を求める」。
Q1. 文章題を解く3つのステップを答えてください。
Q2. 長さ $20$ m のロープで壁に沿って長方形の囲いを作ります(壁に接する辺にロープは不要)。囲いの面積の最大値を求めてください。
Q3. 地上から初速度 $29.4$ m/s でボールを真上に投げ上げます。$t$ 秒後の高さが $h = 29.4t - 4.9t^2$ のとき、最高到達点の高さを求めてください。
Q4. 利益の最大化問題で「利益」を式で表すとき、「売上金額」との違いは何ですか?
Q5. 和が $10$ である2つの正の数の積の最大値を求めてください。
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
長さ $16$ m の金網を使って、壁に沿って長方形の囲いを作る。壁に接する辺には金網を使わないものとする。囲いの面積を最大にするには、壁に垂直な辺の長さを何 m にすればよいか。また、そのときの面積を求めよ。
壁に垂直な辺の長さが $4$ m のとき、面積は最大値 $32$ m$^2$。
方針:壁に垂直な辺を $x$ m とおき、面積を $x$ の2次関数で表す。
壁に平行な辺は $(16 - 2x)$ m。変域:$x > 0$ かつ $16 - 2x > 0$ より $0 < x < 8$。
面積 $S = x(16 - 2x) = -2x^2 + 16x = -2(x - 4)^2 + 32$。
$x = 4$ は変域 $0 < x < 8$ を満たす。
よって $x = 4$ のとき面積は最大値 $32$ m$^2$。壁に平行な辺は $16 - 8 = 8$ m。
高さ $39.2$ m のビルの屋上から初速度 $19.6$ m/s でボールを真上に投げ上げた。$t$ 秒後の地上からの高さ $h$ m が $h = -4.9t^2 + 19.6t + 39.2$ で表されるとき、ボールの最高到達点の高さを求めよ。
最高到達点の高さは $58.8$ m
方針:$h$ を $t$ の2次関数として平方完成し、頂点を求める。
$h = -4.9t^2 + 19.6t + 39.2 = -4.9(t^2 - 4t) + 39.2$
$= -4.9(t^2 - 4t + 4 - 4) + 39.2 = -4.9(t - 2)^2 + 19.6 + 39.2$
$= -4.9(t - 2)^2 + 58.8$
$a = -4.9 < 0$ なので上に凸。$t = 2$ のとき最大値 $58.8$。
$t = 2 \geq 0$ なので物理的に意味がある。
よって、最高到達点の高さは $58.8$ m。
1 kg あたりの仕入れ値が $1500$ 円の食料品がある。1 kg あたり $2000$ 円で売ると、1日あたり $800$ kg 売れるが、売値を 1 kg あたり $10$ 円値下げするごとに、売上量が $20$ kg 増加する。1日あたりの利益を最大にするためには、1 kg あたりの売値をいくらにすればよいか。また、そのときの1日あたりの利益を求めよ。
1 kg あたりの売値を $1950$ 円にすればよい。そのときの1日あたりの利益は $405000$ 円。
方針:値下げ幅を変数にとり、利益を2次関数で表す。
1 kg あたり $10x$ 円値下げするとおくと、売値は $(2000 - 10x)$ 円、売上量は $(800 + 20x)$ kg。
変域:売値 $> 0$ より $2000 - 10x > 0$、$x < 200$。売上量 $> 0$ より $800 + 20x > 0$、$x > -40$。 よって $-40 < x < 200$。
1日あたりの利益 $P$ は、
$P = (売値 - 仕入れ値) \times 売上量$
$= (2000 - 10x - 1500)(800 + 20x)$
$= (500 - 10x)(800 + 20x)$
$= -200x^2 + 2000x + 400000$
$= -200(x^2 - 10x) + 400000$
$= -200(x - 5)^2 + 5000 + 400000$
$= -200(x - 5)^2 + 405000$
$x = 5$ は変域 $-40 < x < 200$ を満たす。
このとき売値は $2000 - 50 = 1950$ 円、売上量は $800 + 100 = 900$ kg。
利益は最大値 $405000$ 円。
長さ $6$ の線分 AB 上に2点 C, D を $\text{AC} = \text{BD}$ となるようにとる。ただし $0 < \text{AC} < 3$ とする。線分 AC, CD, BD をそれぞれ1辺とする正方形を線分 AB の同じ側に作る。このとき、3つの正方形の面積の和の最小値を求めよ。
面積の和の最小値は $12$
方針:AC $= x$ とおき、3つの正方形の面積の和を $x$ の関数で表す。
$\text{AC} = \text{BD} = x$ とすると、$\text{CD} = 6 - 2x$。変域:$0 < x < 3$。
3つの正方形の面積の和 $S$ は、
$S = x^2 + (6 - 2x)^2 + x^2 = 2x^2 + 36 - 24x + 4x^2 = 6x^2 - 24x + 36$
$= 6(x^2 - 4x) + 36 = 6(x^2 - 4x + 4 - 4) + 36 = 6(x - 2)^2 - 24 + 36$
$= 6(x - 2)^2 + 12$
$a = 6 > 0$ なので下に凸。$x = 2$ は変域 $0 < x < 3$ を満たす。
よって $x = 2$ のとき面積の和は最小値 $12$。 このとき $\text{AC} = \text{BD} = 2$、$\text{CD} = 2$。